児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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青少年淫行罪(青少年条例違反)の罪となるべき事実で、「青少年」ではなく「児童」と記載してしまった場合(金沢支部h27.7.23)

 児童と青少年とは定義が違うので間違えないように。

名古屋高裁金沢支部平成27年7月23日
上記の者に対する県青少年健全育成条例違反等被告事件について,平成27年月日地方裁判所支部が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官立石英生出席の上審理し,次のとおり判決する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書に,これに対する答弁は検察官立石英生作成の答弁書に各記載されたとおりであるから,これらを引用する。
第2控訴趣意中,理由不備の主張について
3論旨は,要するに,原判決は,原判示第1で摘示した行為につき,その法令の適用において,県青少年健全育成条例(以下「本件条例」という。)条1項,条1項を適用しているが,本件条例条は,「青少年」に対する,みだらな性行為又はわいせつな行為を禁止する規定であるところ,本件条例3条1号で,「青少年」とは,「6歳以上18歳未満の者(婚姻した女子を除く。)をいう」と定められているところ,原判決は,Aが,本件条例3条1号で定められた「青少年」に該当することを摘示しておらず,理由不備の違法がある,というものと解せられる。
そこで,検討すると,本件条例は,青少年の心身の健全な発達を阻害するおそれのある行為を防止することにより,青少年を保護し,もってその健全な育成を図ることを目的とするものであり(本件条例1条),本件条例3条1号で,本件条例の保護の対象となる「青少年」の定義として,その者の年齢に着目し,−歳に満たない者は,一般に社会的経験が浅く,心理的にも動揺しやすい時期にあることを考慮して,本件条例による保護の対象としたものであり,6歳に満たない者は,一般に未就学であることなど,その生活状況に鑑みて,本件条例による保護が必要となるような生活環境に置かれることが少なく,親権者等による厚い保護下に置かれることが通常であることを考慮して,本件条例は,6歳以上18歳未満であること(以下「本件年齢要件」という。)を満たす者を,その保護の対象としたものと解されるのである。
もっとも,民法753条によれば,未成年者で、あっても婚姻した者は成年に達したものとみなされ,民法731条により,16歳以上の女性であれば,18歳未満で、あっても婚姻可能とされていることから,婚姻した女子(以下「本件婚姻要件」という。)については本件条例の対象外とすることにしたが,そのような事由に該当する女性は一般に少数である。
したがって,通常の場合,本件年齢要件を満たす者は,本件条例の保護下にあると解しても,本件条例の趣旨にもとるものではなく,本件年齢要件を満たす者に対し,本件条例条に定める行為をした場合は,原則としてその違法性が推認されると解するのが相当であり,その者が,本件婚姻要件を満たせば,例外的に違法性が限却されるので、あって,本件条例条1号が,括弧書きの中で,本件婚姻要件を満たす者を除くと例外的に定めているのも,その趣旨と解されるのである。
以上からすれば,本件年齢要件を満たせば,本件条例の定める青少年であることに該当し,本件婚姻要件は構成要件阻却事由を定めたものに過ぎないと解するのが相当で、あって,判決においても,本件婚姻要件の不存在を積極的に示す必要はなく,その事由が存在する旨の主張があったときに,刑訴法335条2項にいう法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実の主張として,これに対する判断を示せば足りるというべきである。
原判決は,原判示第1の犯罪事実として,被害者につき,「A(当時16歳)」と摘示しているところ,これにより,Aが本件年齢要件を満たす者であることを具体的に摘示していることは明らかである。
また,被告人は,原審において,原判示第1につき事実を全て認め,Aが本件婚姻要件を満たしている,あるいはそのように認識していたなどと争っていなかったのであるから,原判決が,Aにつき,本件婚姻要件を満たすか否かにつき判断する必要もない。
したがって,原判示第1につき,原判決に理由不備はなく,論旨は理由がない。