児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

京都府議会2011.10.04 : 平成23年府民生活・厚生常任委員会9月定例会2日目

2011.10.04 : 平成23年府民生活・厚生常任委員会9月定例会2日目
5 : ◯山内委員
我が党議員団は、児童ポルノが児童の性的虐待の記録であり、その製造や販売はもとより、取得・所持等についても被写体である子どもに対する人権侵害で、社会的合意で児童ポルノをなくしていくことが必要と考えます。そのためにも、必要な対策をとる必要がありますが、昨日の議案の質疑の中でも本府の条例案はさまざまな点で問題を抱えていることが明らかになりました。
 以下、第2号議案に反対の理由について述べます。
 第1に、児童ポルノの定義が、あいまいであることです。
 本府の条例案では、廃棄命令や刑事罰を伴う児童ポルノの定義について、国の法律以上に限定的にし、法第2条第3項の第3については「全裸、または性器・肛門の描写」としていますが、幼児期の成長の記録などについては、条例案の中に対象としないことを担保する文言はありません。さらに、規制を伴わない所持禁止の児童ポルノの定義には「衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって、性欲を興奮させ、または刺激するもの」という、あいまいな定義が含まれていることです。児童ポルノを規制することによって守られるべきものは、被写体となる児童の人権です。
 京都弁護士会の本条例案に対する意見書にも、「罰則を伴う規制法制については、罪刑法定主義の観点から規制対象が明確に定められる必要がある」と指摘されています。
 以上の観点から、児童ポルノの定義に主観的要件を入れることは適当ではないと考えます。
 第2に、単純所持を規制する本条例案では、人権侵害の危険や冤罪の可能性があることです。
 立入調査について、プライバシーの侵害など人権侵害のおそれがあること、実質的な令状なしの捜索が行われる危険性があります。
 条例案第9条には、「その他関係者にも質問させ、必要な資料の提出を求めさせることができる」とありますが、昨日の審議の中でも、その他関係者とは、立入調査に必要な場合、職場の上司や雇用主、家主や家族、またそれ以外の関係者も含み、だれにでも質問をしたり、資料の提出を求めることができること、さらに立ち入る場所については本人の部屋だけではなく、家族の部屋やパソコンなども調査の対象になり、どこまで調査をするのか、その歯どめもありません。持っていないことを証明することほど難しいことはありません。
 また、廃棄命令についても、送りつけられたメールに添付されていた児童ポルノ画像や、荷物の中に忍び込まされていた写真などを知らない間に所持していた場合など、誤って廃棄命令が出される可能性もあります。そうした場合、それだけで十分に社会的制裁を受けてしまいます。
 第3に、恣意的な運用がなされる危険があることです。
 条例案では、「児童ポルノを所持・保管していると認められるもの」に対しては立入調査を行うとしています。
 京都弁護士会の意見書では、「立入調査に名をかりて恣意的に事実上の捜索が行われる危険性すらあり、いたずらに市民生活の平穏を乱すおそれがある」と警鐘を鳴らしています。とりわけ、インターネットなどによる児童ポルノの流出は、画像を所持した人物を特定することは大変困難であり、恣意的な調査などが行われる危険があると考えます。
 また、手続的に見ても、条例案の骨子がホームページに掲載されたのが7月で、条例案が示されたのが9月の本会議開会の直前です。まだまだ府民的な議論も不十分です。
 本府がやるべきことは、児童ポルノによる被害児童を一人もつくらないために、情報リテラシー教育や性教育府民への広報啓発などに努力すること、さらに被害児童の支援体制を強化し、人的体制も強化することです。
 また、児童ポルノをなくすためには、児童の性犯罪被害をなくすこと、児童ポルノの製造や販売、提供を行う行為をなくすことこそ必要です。もとを断たなければ、児童ポルノはなくせません。
 以上の理由で、第2号議案について反対です。

6 : ◯田中委員
特に、今ありました児童ポルノの規制の問題であります。
 昨日の提案と、それに対する質疑の中で、今、反対をされた委員の皆さんから、いろいろな懸念といいますか、そういう意味合いをもって御質問がありました。我々もそういうことを聞きながら、確かにルールをつくっていくのに難しい問題があったり、また、法というのは、つくったときだけでなくて、あと条文がそのまま動いていくということもありますので、確かに課題は、どんな場合でもあると思っています。
 ただ、今も反対理由の最初におっしゃったように、まずはこのことを、いかに減らしていくか、なくしていくかという、我々にとって必要な大きな課題というものを追求することと。そこから起こってくるかもしれない幾らかの危惧というものについて、それをすべて打ち消していくということの比重はいかなるものかと考えたときに、私自身は、これは早くつくって執行をしていきながら、その中で考えていくべき課題であろうと思っております。
 いろいろな懸念があるから、だからこの程度にこういう条例をもって、このようにつくればいいという議論がもっと沸き起こるのなら、また、それは今後の機会としても必要でしょうけれども、でき上がったものについて懸念だけを表明するということならば、これは常にできることでもあり、しかし、それでは結論が出てこないことだと私は思っております。また、昨日の質疑の中で言えば、「なぜ京都だけが先に走らなければならないのか」というお話がありましたけれども、そういう課題ではなかろうと。行政的に必要であると思えば、先陣を切ってそういうことをしていく。別に一番だからいいという意味ではなくて、必要だと思うときにやっていくということは、大切なことだと思います。
 ただ、これだけのいろいろな議論の内容が正しかったのか、懸念の内容が正しかったのかは私自身もすべてはわかりませんけれども、そういうものがある条例ですので、これができ上がって、賛同を得て、もし執行されていくということになれば、その執行、また状況、それによっての取り締まりや、いろいろな現象が起こったことについて委員会にも御報告をいただきながら、その中で、それ自身が条例の趣旨と違っていたり、正しくというか、うまく執行されているかということがわかり得る範囲で我々議員もチェックできるし、議論がしていけるような場というものは今後、必要なのかなと。そのことを要望もいたしまして、賛成の討論にさせてもらいます。
7 : ◯酒井委員
◯酒井委員
 私もすべての議案に賛成の立場から、特に児童ポルノのことに関して、少しお話させていただきます。
 昨日もお話がありましたように、現状から悪質性、増加状況は顕著であるし、明らかであります。話の中でありました、末端である、もしくは製造元であるという話もありましたけれども、末端というのは逆に言えばコピーという意味からすると製造元にもなり得る話ですので、製造元ということに特化した考え方ではなくて、今、条例案にありますように、被害児童を一人でも多く減らす、もしくは課題を抑止するという立場から、この条例の重要性、必要性を認めるものであります。
 以上です。
(2) 採 決
   初めに、第1号、第5号及び第22号の議案3件について、挙手採決の結果、賛成全
  員により、いずれも原案のとおり可決及び承認された。
   次に、第2号議案について、挙手採決の結果、賛成多数により、原案のとおり可決
  された。
   なお、第2号議案について、少数意見が留保された。
   (留保者…山内委員、賛成者…島田委員)