児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

数回のわいせつ図画販売罪は包括一罪(大審院S10.11.11)

 児童ポルノ罪がある場合にこれが適用されないようにしたいんです。

大審院S10.11.11
1 S9.5月 わいせつ図画販売
2 S9.11月 わいせつ図画販売
1と2は包括一罪

不特定多衆に対しておこなう目的に出でた有償的譲渡にして性質上反復される多数の行為を包含するものであるから複数回の販売行為は包括的に一個の犯罪として処罰すべきである。

数回のわいせつ図画販売を包括一罪とする判例は変更されるべきである。
 数回のわいせつ図画罪を包括一罪とするのは大審院S10.11.11にさかのぼる。その理由は次の通りである。営利目的による職業犯的性格を重視して、包括評価しようとするものであった。

1 S9.5月 わいせつ図画販売
2 S9.11月 わいせつ図画販売
1と2は包括一罪
不特定多衆に対しておこなう目的に出でた有償的譲渡にして性質上反復される多数の行為を包含するものであるから複数回の販売行為は包括的に一個の犯罪として処罰すべきである。

 しかし、時代は平成となり、わいせつ図画罪の手段はインターネットが主流となり、インターネットのユーザーである個人が容易にわいせつ図画をばらまくことが可能となり*1、法益保護の観点からは、営利性、職業犯性にこだわる理由は失われた。そこで、現在国会審議中の刑法改正案では、わいせつ図画の「販売罪」は廃止され、頒布罪に統合されることとなっている。

犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm
第百六十八条の三 前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
 第百七十五条中「図画」の下に「、電磁的記録に係る記録媒体」を加え、「、販売し」を削り、「又は二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処する」を「若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する」に改め、同条後段を次のように改める。
 電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

  第百七十五条に次の一項を加える。
 2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

 刑法はもはや頒布罪(=無償譲渡)という非営利行為(職業犯罪ではない)による法益侵害を予定しているのであるから、数回の販売が行われた場合には、判例がいう包括評価の理由は失われて、併合罪と解するしかない。