児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

青少年との性行為への処罰規定を盛った他都道府県の条例は、いずれも当事者による告訴を必要とせず、警察が捜査できる「非親告罪」を採用している。このため本人以外の申し出が端緒となり、事件化される例が少なくない。「青少年と成人が彼らなりに真剣に交際しているつもりでも、親が警察に相談して事件となる例はある」と説明するのは、性犯罪や条例違反事件を手掛ける奥村徹弁護士(大阪)だ。ただ、仮に納得がいかなくても、多くは罰金で終わるため「弁護士費用をかけてまで公判で争う方が珍しい」と言う。信濃毎日新聞

 保護者が通報して、男性が逮捕されてからも「被害青少年」が結婚したいと言い続けている例が時々あります。
 通報者としては保護者とか元カレ、後カレ、友人、知人。。。親告罪じゃないので。
 性行為以外の交際状況を要領良く立証すれば起訴猶予になることが多いんですが、逮捕されてしまうと難しくて。
 1罪だと罰金で終わるので、ソロバン勘定としては弁護士を頼まず罰金払うという選択になるので、弁護士にも経験が蓄積しません。 逮捕前に最寄り弁護士に相談しても「逮捕された例を知らない」と言われますが、その弁護士が知らないだけで、県によりますが被疑者の3〜5割が逮捕されています。

論点・淫行処罰条例案(2)=他の都道府県は 見えにくい運用実態 条例違反で「略式」起訴8割
2016.06.12 信濃毎日新聞朝刊 
 「数十年にわたって他県では青少年保護育成条例が運用されてきている。他県で冤罪(えんざい)事件が多発しているようなことは私はないと思う」

 1日の記者会見。阿部守一知事は、18歳未満の青少年との性行為への処罰規定を盛った県条例案を県会6月定例会に提出すると表明。長野県を除く46都道府県で既に淫行処罰規定を持つ条例が運用されている「実績」を挙げ、問題はないとの認識を示した。

 ただ、他の都道府県の条例が実際にどう運用され、取り締まりや摘発がどう行われているのか、その実態は見えにくい。

 2014年の検察統計によると、全国の条例違反事件(淫行処罰のほか深夜外出の制限なども含む)で起訴された人は計1023人いる。

 だが、このうち検察側が公判請求せず、原則公開の裁判に至らない「略式起訴」が857人、84%を占める。略式起訴は罰金・科料100万円以下の事件で容疑者の同意がある場合に取られる処分で、通常の起訴と違い、事件の詳細は明らかにされない。

 神戸学院大の佐々木光明教授(少年司法、刑事法)は、条例違反事件について、「痴漢事件と似た性質がある」と指摘。略式起訴になれば罰金で済むことが多いため、冤罪だと思っていても、家族や勤務先に知られることを恐れて争わないケースがあり得るとする。

 一方、同じ条例違反事件で不起訴処分となったのは計1208人。専門家によると、青少年を親の許可なく連れ出すなど「深夜外出の制限」に違反したとして取り調べを受け、その後、起訴猶予になる例が多いというが、これも詳細は不明だ。

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 青少年との性行為への処罰規定を盛った他都道府県の条例は、いずれも当事者による告訴を必要とせず、警察が捜査できる「非親告罪」を採用している。このため本人以外の申し出が端緒となり、事件化される例が少なくない。

 「青少年と成人が彼らなりに真剣に交際しているつもりでも、親が警察に相談して事件となる例はある」と説明するのは、性犯罪や条例違反事件を手掛ける奥村徹弁護士(大阪)だ。ただ、仮に納得がいかなくても、多くは罰金で終わるため「弁護士費用をかけてまで公判で争う方が珍しい」と言う。青少年の「性被害」を防ぐ目的と、「実害」の有無の判断を捜査機関に委ね、当事者の意思が十分反映されない可能性をどう捉えるか、検証するための判例などは十分とはいえない。

 長野県の条例案も、各地の条例と同様、青少年との性行為への処罰規定に非親告罪を採用した。15年9月に「条例モデル」をまとめた法律の専門家でつくる県の検討会が「子どもが告訴の意味を理解できないこともある」「社会が被害に遭ったことを教えてあげなければいけない」といった意見をまとめたことを踏まえている。

 県は「子どもの最善の利益を尊重する」との規定を条例案に設けたことで、捜査の中で子どもの感情に配慮することは可能との姿勢だ。一方、神戸学院大の佐々木教授は、処罰規定の運用実態について第三者などが監視、検証する仕組みの導入が必要だとしている。

<厳罰化へ刑法改正議論>

 [性犯罪の厳罰化]

 法務大臣の諮問機関「法制審議会」の部会は2015年10月から、性犯罪の厳罰化に向けた刑法改正の内容を議論している。他の罪と比べ「量刑が軽すぎる」といった被害者側などの声を受けたもので、強姦(ごうかん)罪の法定刑の下限を懲役3年から同5年に引き上げることを検討している。

 強姦罪などについては現行、起訴するのに被害者の告訴が必要な「親告罪」とされているが、被害者が「告訴の選択を迫られている」と負担に感じたり、泣き寝入りを許したりするとの指摘があり、非親告罪にする方向。他にも、親など子どもを監護する立場を利用した性的な行為を、暴行や脅迫がなくても罰する規定の新設も議題となっている。

 神戸学院大の佐々木光明教授は同部会の議論について、「厳罰化ありきではなく、性犯罪の対象行為や適切な量刑が、かなり精緻に検討されている」点を評価。長野県の条例制定の動きに対しては、「審議会の議論の結果を待ってからでいいのではないか」と指摘している。