児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

三谷真貴子 告訴当時10歳11か月の被害者の告訴能力を認め,被害者の告訴能力を否定した第一審判決を破棄し差し戻した事例(研修773号)

 金沢支部H24.7.3

これまでの裁判例では. 12 ~ 13歳の女児については告訴能力が認められてはいるものの,本件の被害者はそれより更に若年であることから,慎重な検討は必要となろうが,単に10歳11か月という年齢のみをもって,告訴能力を疑問視するのは妥当ではない。また,捜査機関が訴訟条件である告訴の有効性について,慎重を期して祖母Bの告訴を徴することとした経過それ自体が,被害者の告訴能力の存否の判断に影響を及ぼすものでないというべきである。
これに対し,本判決は,被害者の供述のみならず,小学校での成績
等の客観的証拠関係をも考慮し被害者の理解力や判断力を検討した上で. 「普通の学業成績を上げる知的能力を有した被害者が,被害状況もを具体的に申告した上で,その犯人として被告人を特定してその処罰を求める意思を申告していたのであるから,告訴能力としてはこれを備えている」と判示しており,平均的な10歳程度の知的能力をもって告訴能力を認めたともいえる。個々の被害者の生育環境,成熟度といった個別の要因によっても変化することから,事案によっては,今後更に若年の被害者の告訴能力が肯定される事案も出てくるものと思われる。いずれにせよ,被害者である児童の告訴能力が問題となり得る事案においては,本控訴審で行われたように客観的証拠関係によってその知的能力を明らかにすることが肝要であると思われる。