それはおかしい。
児童を裸にして撮影するという行為を「法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで」評価すると、撮影行為を強制わいせつ罪で評価しようと3項製造罪(姿態とらせて製造)で評価しようと、行為の個数は変わらないわけで、強制わいせつ罪・3項製造罪併合罪説に立てば、強制わいせつ罪として評価するときも2個になるし、強制わいせつ罪・3項製造罪観念的競合罪説に立てば、強制わいせつ罪として評価するときも1個になるのです。
最高裁判所大法廷判決昭和49年5月29日
刑法五四条一項前段の規定は、一個の行為が同時に数個の犯罪構成要件に該当して数個の犯罪が競合する場合において、これを処断上の一罪として刑を科する趣旨のものであるところ、右規定にいう一個の行為とは、法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価をうける場合をいうと解すべきである。
ところで、本件の事例のような、酒に酔つた状態で自動車を運転中に過つて人身事故を発生させた場合についてみるに、もともと自動車を運転する行為は、その形態が、通常、時間的継続と場所的移動とを伴うものであるのに対し、その過程において人身事故を発生させる行為は、運転継続中における一時点一場所における事象であつて、前記の自然的観察からするならば、両者は、酒に酔つた状態で運転したことが事故を惹起した過失の内容をなすものかどうかにかかわりなく、社会的見解上別個のものと評価すべきであつて、これを一個のものとみることはできない。
したがつて、本件における酒酔い運転の罪とその運転中に行なわれた業務上過失致死の罪とは併合罪の関係にあるものと解するのが相当であり、原判決のこの点に関する結論は正当というべきである