http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20071106/1194318437
で速報した判決です。
判決速報と「研修」で徹底するのに3〜4ヶ月かかるようですが、その間にも観念的競合で処理された事件があります。
この事件は、どうしても一罪にまとまらない事件もあって、どうせ併合罪加重されるんですが、実際には量刑不当で破棄減軽しているにもかかわらず、東京高裁が必死に観念的競合にならないことを説いているところが注目されます。
「観念的競合ではなく、併合罪である」というところに、検察がこれまで観念的競合だと考えていた節があります。その割にはほとんど併合罪で起訴してますが。
東京高裁h17.12.26と違う判断だという評価です。大阪高裁は併合罪説、札幌高裁は観念的競合説なので、そっちも紹介してほしいところです。高裁は東京だけじゃないので。
筆者は「今後、同種事案に関する裁判例の動向を注視する必要がある」なんて無責任なこと言ってますが、最高裁は併合罪説ですよ。刑法の理屈。
大口奈良恵 「児童買春罪と、その機会に行われた児童ポルノ製造罪とが、観念的競合ではなく、併合罪であるとした事例 東京高裁H19.11.6」(研修716 p387)
【一審判決の内容及び弁護人の主張】
一審判決は,前記①,②.④ 及び⑥ につき児童買春罪が(児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条).③及び⑤ につき児童ポルノ製造罪が(同法7条2項.1項,2条3項1号.3号),それぞれ成立するとした上で,各罪を併合罪として処断した。
これに対し,弁護人は,前記①及び②の各児童買春罪と③の児童ポルノ製造罪はいずれも観念的競合の関係にあり.③の罪がいわゆるかすがいとなって①ないし③の各罪は科刑上一罪となり,また,④の児童買春罪と⑤の児童ポルノ製造罪も観念的競合の関係にあり,さらに.③ と⑤の各罪は,提供目的に支配された一連の営業的行為であって,包括的一罪であるから,結局,① ないし⑤の各罪は科刑上一罪となり,⑥の児童買春罪との2個の併合罪として処断されるべきであるから,-審判決には法令適用の誤りがあるなどと主張して控訴した。
東京高裁は開口一番「誰ですか札幌高裁の裁判官は?弁護人は裁判官名を含めて判決書を出して下さい。」と言ってましたね。「札幌の弁護人も奥村ですけど、札幌高裁刑事部は1箇部しかないから裁判体の構成もおわかりでしょう!」というやりとりがありました。
追記
なお、札幌高裁刑事部には、裁判長以下4人の裁判官がいます。
現在の顔ぶれ。
↓↓
http://www.courts.go.jp/sapporo-h/saiban/tanto/tanto.html
刑事部 矢村宏,市川太志,二宮信吾,水野将徳 毎週火曜,木曜 1号法廷
観念的競合説の札幌高裁h19.3.8(児童淫行罪-製造罪)と札幌高裁h19.9.4(児童買春罪-製造罪)は裁判長も含めて構成が違います。噂によれば、近々観念的競合説の原判決をまた追認するようです。検察官も含めて、誰もおかしいと思わないのかが不思議です。
こうなると、特にハメ撮りの児童淫行罪に伴う製造罪をどこに起訴していいのかわからないようで、「児童福祉法違反+児童ポルノ製造」として報道された事件で、製造罪が起訴されていないことが時々あります。甲府とか長野まで探しに行っても製造罪は起訴されてないのです。児童ポルノ犯人は大もうけです。
児童ポルノ法の立法者が事物管轄に無知なまま、よくかんがえずに児童福祉法違反に密接な行為を通常管轄にした結果です。少年法37条の廃止に少なからず影響しています。