児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

 プロバイダの刑事責任 諸外国の例。

 ちょっと古い資料ですが、総務省のまとめがありました。

http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/whitepaper/ja/h11/press/japanese/tsusin/0201j103.htm#0202
2 発信内容の規制等に関する諸外国の法制度

 (1) アメリカ
  ア 通信法
アメリカにおいては、通信法により、不適正利用と思われるいくつかの情報の発信行為を禁止している。
まず、1996年電気通信法は、その中の「第V編 わいせつ及び暴力」にインターネット等の電気通信を規制する規定を設けた。この第V編は、「1996年通信品位法」(Communications Decency Act of 1996:以下「CDA」という。)と称されている。このCDAにより、1934年通信法(合衆国法典第47編)第223条等が改正され、以下の通信又は行為を意図的に行うこと等が刑罰をもって禁止されている。
・・・・・・
ただ、この (a)(1)(B)と同条(d)について、この条文で用いられている「下品な」(indecent)及び「明らかに不快な」(patently offensive)という
基準の具体性については裁判で争われ、1997年6月、連邦最高裁判所は、同条項が言論の自由を保障する憲法修正第1条に違反する旨の判決を下した。ただ、違憲とされたのは、CDAのうち、「下品な」(indecent)及び「明らかに不快な」(patently offensive)情報の発信に対する規制の部分のみであり、「わいせつな」(obscene)及び「卑猥な」(lewd)情報の発信に対しては、依然として規制が残っており、また、以下のプロバイダーの責任に関する規定も残っていることに注意を要する。
通信法第230条は、不快な素材についての私的な阻止及び選択の保護について定める。その中で、インターネット等の双方向コンピュータ・サービスの提供者又は利用者は、わいせつ情報等の好ましくないと判断した情報へのアクセスを、誠意により、自主的に制限しても、その措置に関して責任を問われない旨が規定されている。


 (3) ドイツ
  ア 連邦政府「情報・通信サービスに関する基本条件の規制のための法律」(Gesetz zur Regelung der Rahmenbedingungen fur Informations
und Kommunikationsdienste、ドイツ・マルチメディア法)
1997年7月、インターネット等による電子商取引等を含むマルチメディアサービスの利用に関する環境整備を図る法律が成立している。
・・・
テレサービスの利用に関する法律第5条は、サービス提供者の責任について、1)自ら提供するコンテントについては、一般法の規定に従って責任を負うこと、2)第三者が提供する情報については、その内容を知りかつその利用を防止することが技術的に可能で相当である場合に限り責任を負うこと、3)アクセスを提供するだけの場合、第三者の情報には責任を負わないこと、等を規定している。

 (4) フランス
「通信の自由に関する法律」は、1996年に一部改正が行われ、事前の届出を要する視聴覚通信事業(インターネットプロバイダーを含むと解されている)について規定がおかれている。これは、1)当該視聴覚通信を提供する者に対し、特定のサービスに対するアクセスを制限し又はこれを選別することのできる技術的手段の提供の加入者への申出の義務づけ(第43条の1)、2)テレマティック高等評議会という独立行政委員会による倫理規定遵守勧告、苦情受付、検察官への通知などの規律(第43条の2)、3)当該視聴覚通信を提供する者について、1)の規定をコンテントに起因する犯罪についての刑事免責(第43条の3)について定める。

 日本の論文としては、こんなところです。

1. アクセスプロバイダの刑事責任(1)ドイツテレサービス法における展開 / 石井 徹哉 千葉大学法学論集. 20(4) [2006.3]

2. サイバースペース法律相談所(第20回)プロバイダの刑事責任 / 森 亮二 情報通信ジャーナル. 23(12) (通号 213) [2005.12]

3. ネットワーク利用犯罪におけるプロバイダの刑事責任 / 斎藤 あゆみ 専修法研論集. (37) [2005.9]

4. 通信ログの保全 刑事訴訟法の改正 (特集 安全と私的自治、手続的正義 第29回法とコンピュータ学会研究会報告) / 松沢 栄一 法とコンピュータ. (23) [2005.7]

5. プロバイダ等の刑事責任 (特集 サイバー犯罪の現在) / 鎮目 征樹 現代刑事法. 6(1) (通号 57) [2004.1]

6. インターネット・プロバイダーの刑事責任 / 真島 信英 法学研究論集. (26) [2002]

7. プロバイダーの刑事責任について (特集 ネットワーク犯罪) / 佐藤 雅美 刑法雑誌. 41(1) [2001.7]

8. プロバイダーの刑事責任 / 山口 厚 法曹時報. 52(4) [2000.04]

9. メディア判例研究 インターネット・プロバイダの刑事責任--コンピュサーブ事件(ミュンヘン区裁判所1998.5.28判決) / 鈴木 秀美 法律時報. 71(4) (通号 877) [1999.04]