児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童福祉法違反(淫行させる行為)・条例淫行罪・強制わいせつ罪で逮捕した被疑者を児童ポルノ製造罪でさらに逮捕することは原則禁止。

 実務を見ていると、「児童福祉法違反(淫行させる行為)・条例淫行罪・強制わいせつ罪」と「児童ポルノ製造罪」とは観念的競合で科刑上一罪。同一公訴事実。
 一罪一逮捕一勾留の原則で、児童福祉法違反(淫行させる行為)・条例淫行罪・強制わいせつ罪で逮捕した被疑者を児童ポルノ製造罪でさらに逮捕することは原則禁止となります。
 「児童福祉法違反(淫行させる行為)・条例淫行罪・強制わいせつ罪」で逮捕したら、すぐ、携帯とかPCから被害児童の写真・ビデオが出てきますよね。被害児童との同一性とか年齢とかは被害児童に見せればすぐわかる。となると、同時処理できますよね。


 なお、児童福祉法違反(淫行させる行為)と3項児童ポルノ製造罪との罪数関係については、東京高裁H17.12.26に注目(といっても、当分非公開)。
 

広島高等裁判所成元年2月16日
所論は,(1)憲法及び刑事訴訟法は再度の逮捕,勾留を許していないと考えられるし,(2)特別の事情があるときには,例外的にこれが許されると解し得るとしても,本件においてはそのような特別の事情はない旨主張するので,この点につき若干補足すると,憲法には再逮捕,再勾留を禁ずる規定はなく,令状主義の原則の範囲内でこれを法律に委ねているものと解すべきところ,刑事訴訟法199条3項,刑事訴訟規則142条1項8号は再逮捕が許されることを予想した規定と解され,したがって明文の規定はないけれどもこれに続く再勾留についても法は必ずしもこれを禁止するものではないと解すべきであるが,同一の被疑事実による再度の逮捕,勾留を何らの制約なしに認めることは,逮捕,勾留につき厳格な時間的制約を定めた法の趣旨を没却することになるから許されず,事案の軽重に応じて,先行する逮捕,勾留期間の長短,その間の捜査経過等に徴して,社会通念上捜査機関による捜査の続行がやむを得ず,これが身柄拘束の不当な蒸し返しとは認められない等特別の事情があるときに限り例外的に許されると解すべきである。

仙台地方裁判所決定昭和49年5月16日
三 右事実関係において本件逮捕勾留が適法であるかどうかを検討する。
本件常習賭博は、昭和四八年五月一九日になされたものであり、前記起訴にかかる常習賭博と一罪をなすものであり、その逮捕勾留中に同時に捜査を遂げうる可能性が存したのである。
(本件は昭和四九年一月四日に塩釜警察署に認知されており、直ちに捜査を行ええば本件被疑者を割り出すことは充分可能であつたのであり、事件自体が全く認知されていなかつた場合とは異なるのである。)従つて本件逮捕勾留は、同時処理の可能性のある常習一罪の一部についての逮捕勾留であるから、一罪一勾留の原則を適用すべきである。
検察官の主張は一理あり、同時処理の可能性がない場合には妥当するものであるが、その可能性の存する場合には人権保護の見地から右原則を採用すべきであり、当裁判所は検察官の見解を採用しない。右のごとく本件逮捕勾留は一罪一勾留の原則により適法視しえないものであるが、本件は常習賭博中の一部の事件である関係上、一個の犯罪事実につき再度の逮捕勾留がなされた場合に該当すると思料されるので、再逮捕勾留の適否が問題となる。刑訴法一九九条三項、刑訴規則一四二条一項八号は、同一犯罪事実につき前に逮捕状の請求又は発付のあつた場合にはその事実および更に逮捕状を請求する事由を逮捕状請求書に記載することを義務づけている。
右は不当な逮捕のむし返しを防ぐという司法抑制の実効性を確保するための措置であり、この記載を欠くことにより裁判官の判断を誤まらせる虞れを生じさせるものであるから、右記載を欠く逮捕状請求にもとづく逮捕状は違法無効であり、逮捕の前置を欠くことになるのでその勾留も違法とすべきである。
同一の犯罪事実とは公訴事実の単一性および同一性がある犯罪事実であり本件においてもその単一性があり同一犯罪事実であるところ、前記認定のごとく前掲起訴にかかる常習賭博につき逮捕状の発付があつた事実の記載を欠き、違法というべきである。
本件において実質的に再逮捕状の発付につきその司法審査を誤る可能性が存したかどうかであるが前記認定のごとく被疑者は保釈後、本件と一罪をなす常習賭博事件中、未取調の事件につき任意捜査に応じて取調を受けているのであり、本件につき一般的な逮捕要件としては格別、再逮捕の必要性が存するかどうかについては多大な疑問が残り、又、逮捕状発付当時以前に逮捕勾留がなされたことを窺わせる資料も存しなかつたのであつて前掲記載を欠いたことにより実質的に司法審査を誤る可能性は十分存したといわざるを得ない。
(なお警察官は、本件被疑者には昭和四八年五月中旬および同年六月中旬の賭博につき余罪の取調の必要性を掲げて勾留請求を基礎づけているが、被疑者の昭和四九年五月一一日付供述調書および検察官提出の賭博事件一覧表によれば、右賭博については、前回の逮捕勾留の際に調べを受けている旨供述しており、右賭博が存することにより再逮捕の必要性を基礎づける理由ともならないところである。)以上のごとく本件逮捕勾留は、検察官の見解を前提にすれば適法であるが、当裁判所はその見解を採用せず、本件逮捕勾留は、一罪一勾留の原則に反して違法であるとともに、再逮捕と解釈してもその手続上および実質上の要件を欠き違法無効なものであり、逮捕前置主義の原則からその勾留請求は却下されるべきであつたのであり勾留の存続を是認しえないから、本件勾留はこれを取消すべきである。

東京高等裁判所昭和48年10月16日
被告人に対する二度の逮捕が同一の被疑事実によるものであるとしても、捜査主体の変更、新たな捜査主体と被告人の居住地との地理関係、第一次逮捕後の日時の経過、捜査の進展に伴う被疑事実の部分的変更、逮捕の必要性等の諸点からして、再逮捕をするにつき相当の理由がある場合に該当すると認められ、本件再逮捕は違法ではないと解される。ただ、前記碑文谷署の司法警察員は、先に大阪において第一次逮捕がなされたことを了知していながら、裁判官に対して逮捕状を請求するにあたり、刑訴法一九九条三項、刑訴規則一四二条一項八号各所定の事項を逮捕状請求書に記載しなかったことが、記録上明らかである。右の各条項によれば、第二次逮捕の被疑事実が第一次逮捕のそれと同一であると否とに拘らず、第一次逮捕の際の逮捕状発布の事実を第二次逮捕の逮捕状請求書に記載すべきであるから、その記載を怠ったことは右の法や規則の定めに違反したものであり、第二次逮捕はその手続に違法があったといわなければならない。しかしながら、右刑訴法や規則の定めは、理由のない逮捕のくり返しを紡ぐためのものであると解されるところ、既に検討したとおり、被告人に対する再度の逮捕が理由のない不当なものであったとは認められないのであるから、右手続の違法の点のみを理由として第二次逮捕を違法とし、その逮捕中に作成された供述調書の証拠能力を否定することはできない(最高裁判所昭和四二年一二月二〇日決定、刑事裁判集一六五号四八七頁参照)。原判決に所論の違法はなく、論旨は理由がない。

 児童買春罪と製造罪とは併合罪(高裁判例)。性交等と撮影とは一個の行為じゃないから。とすると、強姦罪とは併合罪でしょうね。
 こちらは再逮捕可能。

 なんだかなぁ。わかりにくいなあ。
 ご注意ください。