児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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「わいせつ画像が画面にぽんと出てきて、見えた時点でわいせつ物の陳列というのではなくて、保管しているだけでもうわいせつ物の陳列になってしまうというような規定」高山智司君(民主党)

 そんなこと言ってないですけど。
 議員は法案をどう読んでいるのか? 

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000416320051026008.htm
第8号 平成17年10月26日(水曜日)
衆議院法務委員会


○山下参考人 私は、日本弁護士連合会国際刑事立法対策特別委員会の事務局長をさせていただいております山下と申します。
 (中略)
 次に、刑法百七十五条のわいせつ物頒布等の罪の改正案について意見を述べます。
 改正案は、現行法が使用している頒布という概念を現行法とは全く異なる意味で使用することにしており、捜査現場における混乱を招くおそれがあります。
 また、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律七条一項後段は、改正案に対応する部分について、「電気通信回線を通じて」「児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者」と規定しており、両者の規定ぶりが異なっておりまして、この点でも捜査現場における混乱を招くおそれがあります。
 この点につきましては、既に成立している児童ポルノ処罰法が使用している電気通信回線を通じて提供というような用語に統一するか、公衆送信というような新しい用語に統一するなど、構成要件の仕方を改めることが望ましいと考えられます。


○山下参考人 この点は、不正指令電磁的記録等作成の罪に関して、当委員会の議論の中でも、南野法務大臣自身が、条約よりも広い処罰範囲を定めているものであるという答弁をしているところでありまして、明らかに広いです。
 今回の法案全体についてですけれども、条約が求めるものをかなり超えたものがございます。また、わいせつ罪の改正はサイバー犯罪条約とは関係のない改正でございます。そういう意味で、条約と比べるとかなり広い規制をしようとしていると言えます。
 それで、世界的なといいますか、インターネットの規制に関しては、これは国境がないことでありまして、日本だけが悪いとか、どこが悪いということはなくて、結局インターネットは世界がつながっておりますので、日本だけ状況が悪いということは逆に言うとないわけでありまして、それは世界共通であるということでありまして、日本だけがサイバー関係で厳しい規制をしなければならないという立法理由はないと考えます。


○高山委員 私、今両参考人のお話も伺っていて、どうも今回のこの刑法の改正は、条約で確かに全世界的にサイバー犯罪を取り締まる必要がある、だけれども、それに乗じて何かどんどん捜査手法をふやして、我々の、一般市民のインターネット社会がより窮屈になるんじゃないかなという印象を受けました。けれども、きょうは参考人質疑でございますので、それはまた後日、また来年にも引き続き議論をしていかなきゃいけないことだと思っております。
 ちょっと、個別の話を伺います。
 わいせつのデータが今度処罰化されるというような話がありました。これはまた両参考人に伺いたいんですけれども、わいせつ画像が画面にぽんと出てきて、見えた時点でわいせつ物の陳列というのではなくて、保管しているだけでもうわいせつ物の陳列になってしまうというような規定がございます。
 これは、例えばわいせつな本を売っている町の本屋さんで、自動ドアがぱっとあけばそういう本が見えてしまうという本屋さん、当然あると思うんですけれども、これは、では自動ドアがあけば見えてしまうぐらい簡単な、見えないようにしているだけなのでわいせつだということになってしまうのでしょうか。それとも、私はちょっと、ただ保存しているだけでもわいせつ物の陳列に当たるというのはやや行き過ぎではないかと思いますが、長沼先生からどうでしょうか。
○長沼参考人 これまた私の意見陳述の対象である手続法の分野を超えた質問でございますけれども、私の一応学問上の見解といたしましては、刑法のわいせつ物の陳列というのは、不特定または多数の人が認識できるような状態に置くということで足りるというふうに思っております。
○山下参考人 今質問にありました、保管しているだけで今回犯罪化されているわけではないと思います。
 今回の法案は、インターネット上で要するにわいせつ画像が画面上で見える、これは従来、判例上は公然陳列であるというふうに理解されてきました。刑法は先ほど言ったように有体物を前提としておりますので、陳列というのは、画像の陳列ではなくてサーバーの陳列ということになるんですけれども、そのような概念でとらえていたのを、今回、電子メールで画像を送信してもこれは頒布になりますよということをつけ加えたのであって、保管自体が直ちに今回処罰されることになったのではないと理解しています。


○保坂(展)委員 では、最後に山下参考人に、わいせつ物に関しても、ホームページ上で陳列ですか、そして今度、メールで頒布、いろいろ概念が錯綜していたりとか、これは、かなりわいせつ物をめぐって拡大をしていくんじゃないだろうかという危惧を述べられたかと思いますが、その点を一言伺って終わりにしたいと思います。
○山下参考人 先ほども言いましたが、現在は公然陳列という概念でホームページで閲覧することをとらえていて、今回、電子メールで送信するものは頒布というふうにとらえようとしているんですが、実は、コンピューターの技術上はどちらも全く同じことが行われておりまして、それを一方で公然陳列、一方では頒布という概念というとらえ方をするのは、私は、間違っているというか理論的に正しくないと思うので、本来であれば、ここできちっと概念を整理し、現代のこういうコンピューター時代に対応した規定をつくるべきだったと思うんですが、判例の解釈を引きずり、少し継ぎはぎをした形での立法がされようとしているということもあって、法案の決め方がかなりあいまいになってしまった。
 その結果、濫用されるというとおかしいのですが、わいせつかどうかというのは別ですけれども、どういう場面で適用されるか。例えば、一対一の通信の場合にも適用されるかどうかというのは必ずしも明確ではないのですが、この法案でいくとそれも適用される可能性がある。では、それがどうして頒布なのかというような問題も含めて、今回の法案ではその辺が必ずしも明確になっていないと思いますので、処罰範囲についてもう少し明確な規定をするべきであると考えます。