児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「外国の衛星によるわいせつテレビ放送が本邦のわいせつ図画陳列罪に当たるとした事例」東京地判平16.12.10 (警察実務重要裁判例 '05.08.05)

 わいせつ図画陳列罪には国外犯処罰規定が無く、不特定多数に閲覧可能状況になった時点で既遂ですが、「衛星放送受信機を頒布した上,有償受信契約を締結して受信用ICカードを交付し」まで実行行為として初めて、国内に実行行為が引っかかるわけです。

「外国の衛星によるわいせつテレビ放送が本邦のわいせつ図画陳列罪に当たるとした事例」東京地判平16.12.10 警察実務重要裁判例 '05.08.05
しかし.本件では,わいせつ映像の再生及び送信行為がフィリピン共和国内で行われていることもあり,わいせつ図画陳列罪における実行行為とは何かを考えるに当たって参考になる点があるものと思われる。
本件裁判では.被告人も事実関係を争わなかったため.判決において実行行為の内容等につき特段の判示はなされていないものの.判決中の罪となるべき事実において.「フィリピン共和国内の通信設備を使ってわいせつ映像を録画したビデオテープを再生して,その再生映像を暗号化した信号を本邦に向けて送信した」という行為のみならず.それに先立つ「本邦内の52名に対し,衛星放送受信機を頒布した上,有償受信契約を締結して受信用ICカードを交付し.上記52名をして衛星放送受信機を同人らの家に設置させ,上記ICカードを挿入させるとともに、被告人が管理する預金口座に受信料を入金させて,あらかじめ暗号解除信号を送信した」という行為をも挙げられていることからして、わいせつ映像を録画したビデオテープの再生・送信そのものだけではなく.衛星放送受信機の頒布や受信用ICカードの交付までをもわいせつ図画陳列罪の実行行為と捉えているものと思われる。