児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ陳列罪の上告趣意書

 児童ポルノ・児童買春の弁護人の弁護士から、控訴趣意書・上告趣意書の起案を「請負」ってくれと頼まれたことがあります。(「起案請負」というのは前代未聞です。弁護人として原判決の問題点を把握して、趣意書を書きながら、立証も考えて準備していくわけですから、弁護人として選任されるのならともかく、ゴーストライターのように「起案請負」だけ頼むというのはどういう弁護人なんでしょう?「忙しい」といって断りました)

 相変わらず、
   控訴(上告)趣意書&書き方
という検索をされる方もいます。

 奥村弁護士も習ったことがありません。法定の控訴理由・上告理由をわかりやすく列挙するだけです。
 文字と字間・行間は老眼の裁判官にも読めるようにしてあげてください。

 控訴理由・上告理由は限定されていますので、原判決の問題点を限定された控訴理由・上告理由に当てはめていく作業になります。いわば「あら探し」です。控訴理由・上告理由は10個挙げて1個でも当たれば原判決が破棄されるわけですし、趣意書差出期限内に提出しないと判断が得られないので、最初はできるだけ多く拾って期限内に提出して、不要なものを後日撤回するほうが無難です。
 いろいろまとめて記載すると、ある理由についての判断が忘れられることがあります。そこで、判断脱漏を防ぐために、理由はできるだけ細分化して番号を付けた方がいいと考えています。多少の重複も気にしません。判断する方で集約してくれます。

 上告趣意書の場合、原判決は控訴趣意書記載の各控訴理由に対する判断のはずですから、控訴理由と原判決を照らしあわせながら、控訴趣意書を下敷きにして組み立てていくことになります。そうなるわけですから、実は、控訴趣意書も上告理由を念頭において起案します。

 最新版の目次を紹介します。全体で443頁、冒頭113頁は資料編です。毎回くどい趣意書なんですが、書面審理だから、やむをえない。

事件名:児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律違反
事件番号:平成16年あ第1697号
平成16年9月 日
最高裁判所第一小法廷 御中
弁護人弁護士 奥  村   徹  
上告趣意書
 弁護人の上告の趣意は下記の通りである。
 なお、第1部〜第8部は各上告理由の前提として上告理由と一体をなすものである。
 また、弁護人には児童ポルノを肯定する思想はなく、本件についてもそのような主張はしていない。


第1部 凡例 10
第2部 原判決等 11
第1 勾留状における被疑事実 11
第2 起訴状 13
第3 求釈明に対する釈明 14
第4 冒頭陳述 15
第5 一審判決 16
第6 原判決 18
第7 時系列 28
第3部 児童ポルノに関する判決例 29
第1 大阪高裁H12.10.24所持罪*1 29
第2 京都地裁H14.4.24販売罪*2 30
第3 大阪高裁H14.9.12販売罪(前記京都地裁判決の控訴審)*3 31
第4 奈良地裁平成14年11月26日 34
第5 大阪高裁平成15年9月18日*4 35
第6 東京高裁平成15年6月4日*5(被告人上告) 36
第4部 ネット上のわいせつ物陳列罪に関する裁判例 38
1 京都地裁H9.9.24*6 38
2 大阪高裁H11.8.26*7 38
3 最高裁H13.7.16*8(上記大阪高裁H11.8.26の上告審) 39
第5部 「ホームページに画像を掲載するということ」の現象面 40
1 WEBへの掲載 40
2 WEB掲示板の構造 41
第6部 不真正不作為犯について 44
1 不真正不作為犯の成立要件 44
2 不真正不作為犯に関する裁判例 46
大阪高等裁判所判決/平成元年(う)第809号*9 46
札幌高等裁判所判決/平成11年(う)第59号 47
第7部 児童ポルノ罪の立法経緯・立法目的 48
第1 児童ポルノ罪の立法経緯・立法目的の確認 48
1 国会議事録 48
2 参議院法制局の説明*11 48
3 学説 49
(1)西田典之・鎮目征樹  49
(2)木村光江 49
(3)園田寿 50
(4)大塚仁 52
(5)加藤久雄  52
(6)伊東研祐 52
4 法務省公安課長の見解 52
5 児童ポルノと闘う国際社会 53
6 改正審議 55
(1)衆議院趣旨説明 55
(2)衆議院附帯決議 56
(3)参議院趣旨説明 56
(4)参議院法定刑引上の理由 56
第2 児童ポルノ罪の保護法益について 57
1 条文上の根拠 57
(1) 本法  57
① 立法趣旨 57
② 被害者保護規定 58
③ 年齢知情規定 59
④ 構成要件の分析 60
⑤ 児童ポルノ各罪の構造 61
⑥ 改正案 64
(2) 刑事訴訟法改正条項 67
(3) 被害者保護法による取り扱い 68
(4) 児童福祉法 70
(5) 最近の児童保護立法について 71
(6) 社会的法益説の根拠条文 72
2 社会的法益説の不当 73
3 立法段階での議論 76
(1) 趣旨説明 76
(2) 親告罪とする可能性 77
(3) 従来の刑法犯との比較 77
(4) 児童の実在性 77
(5) 被害者がいる社会的法益の罪とする余地 77
4 実務家の見解 78
(1)「警察官のための特別法犯・犯罪事実記載例」(令文社)P171 78
(2)元検事正佐野慎一・検事吉田広司「犯罪事実データベースver.2.0」 79
(3)犯罪事実記載の実務 特別法犯Ⅰ P77 80
(4)実務家のための刑法概説P500  81
(5)法務総合研究所「研修」(平13.4,634号)P3〜 81
(6)尾島明最高裁調査官の見解 81
5 児童買春罪との整合性 82
6 児童ポルノ製造罪(撮影行為)との整合性 82
7 児童福祉法との関連性 84
8 被害者救済上の問題点 86
9 参議院国民福祉委員会 87
10 参議院法務委員会 87
11 法務省刑事局長通達*35 89
12 法務省刑事局長の回答*36 89
13 判決例 90
(1)大阪高裁判決H12 90
(2)京都地裁判決(平成12年わ第61号) 92
(3)京都地裁H14.4.24 販売罪*37 92
(4)大阪高裁H14.9.12 販売罪(前記京都地裁判決の控訴審)*38 93
(5)東京高裁平成15年6月4日(被告人上告) 95
(6)アメリカの判例New York v. Ferber 97
(7)アメリカの判例Ashcroft法務長官外 対 Free Speech Coalition外 100
14 平成16年改正 101
(1)法文 101
(2)新旧対照表 103
(3)会議録 104
① 衆議院趣旨説明 104
② 衆議院附帯決議 105
③ 参議院趣旨説明 105
④ 参議院法定刑引上の理由 105
15 まとめ 107
第8部 事実認定の手法 108
第1 何を認定するのか 108
第2 年齢認定の手法 112
第9部 上告理由 114
●上告理由第1 憲法の違反・判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜公然陳列罪の処罰は「検閲」(憲法21条2項)である。 114
●上告理由第2 憲法の違反・判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜公然陳列罪の処罰は「表現行為の事前抑制」(憲法21条1項)である。 119
●上告理由第3 憲法の違反・判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜掲示板の開設管理行為に違法はない。 123
●上告理由第4 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認がある〜正犯となりえない・正犯の実行行為がない 127
●上告理由第5 判例違反〜陳列場所を提供する行為は幇助である 138
●上告理由第6 憲法の違反・判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜「陳列」には不作為を含まない・憲法21条1項・31条違反 142
●上告理由第7 判例違反〜公然陳列罪の実行の着手時期 151
●上告理由第8判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認・判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜各画像ごとの検討 158
●上告理由第9 判例違反・判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜「陳列罪は状態犯」 163
●上告理由第10 判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜訴因不特定(作為義務) 165
●上告理由第11 判決に影響を及ぼすべき法令の違反(罪数) 175
●上告理由第12 判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜プロバイダ責任制限法による免責 181
●上告理由第13 判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜訴因不特定(実行行為地) 192
●上告理由第14 判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜訴因不特定(実行行為日時) 195
●上告理由第15 憲法違反・判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜口頭の訴因変更は無効である。 200
●上告理由第16 判決に影響を及ぼすべき法令の違反・判例違反〜陳列場所を提供する行為は不作為犯である 205
●上告理由第17 判決に影響を及ぼすべき法令の違反〜法律上の削除義務がない 209
●上告理由第18 憲法判断の脱漏(憲法81条違反) 257
●上告理由第19 憲法違反 過度に広汎な規制 259
●上告理由第20 憲法14条違反 268
●上告理由第21 判例違反 272