児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

弁護士への相談と違法性の意識

 裁判例をみると、わからないことは専門家に相談してから行動すると、刑事責任は軽くなる。
 情報伝達型の犯罪というのは、伝統的には、名誉毀損・信用毀損・わいせつ図画・選挙違反・児童ポルノ等、あたらしいところでは、ウイルス等があるが、P2P(winny)に限らず、情報伝達に関する技術は、これらの犯罪のツールとなる危険性がある。警戒すべきは「著作権法違反」だけではない。
 掲示板管理者が、他人が投稿した違法画像についてわいせつ図画公然陳列・児童ポルノ公然陳列の正犯となる時代である。技術屋だから、媒体提供者だから、ソフト開発者だから免責されるという理由はない。一定の要件で刑事責任を追及される危険がある。
 自分が弁護士だから言うわけだが、そんなときは弁護士を使うのである。
 安価なリスク回避である。

東京高裁平成5年6月4日
銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
また、その検討に当っては、結局、銃刀法の解釈が最も重要な問題となることが明らかであるから、この点については、関係官庁(警察)の助言、指導を求め、又は、弁護士に鑑定を依頼するなどして、自らの判断に誤りのないことを期する周到な用意が必要であったといわなければならない。
ところが、被告人は、そのような用意に欠け、前記のような事情から、本件各刃物が銃刀法の規制の対象にならないと軽信して、これを製作所持したものである。
したがって、被告人が右の所持を違法でないと考えるにつき、相当な理由があったとは認められない。

最高裁判所第1小法廷決定昭和61年6月24日
 裁判官谷口正孝の反対意見は、次のとおりである。
もちろん、可罰的違法性の概念が判断基準として明確性を欠くとの非難は免れないとしても、違法性及び責任性が極めて低いという判断は裁判所として当然可能であり、また判断すべきことである。
そして、その判断の結果被告人の行為について違法性・責任性が極めて低い場合、被告人の当該行為について処罰に値しないとして無罪の裁判をすることは、よしそれが限られた場合にせよ、刑事事件の終局的な判断者として裁判所の法政策的機能に属するものと考えてよいであろう。
このような観点から被告人の本件所為を検討してみると、被告人としては本件機器が果して石原の言うような性能のあるものかどうかを試験するため、これを電話回線に取り付け使用し、唯一回公衆電話を利用して一通話分の通信をさせただけであり、試験の結果その効果が判明した後は、顧問弁護士とも相談のうえ、その取り付けた一台を取り外し、未使用の一台と共にこれをロツカーの中に蔵置しておいたもので、これを取り外すまでの間同機器を取り付けた電話に対し交信のあつた形跡は認められないこと、被告人が本件機器を購入した経緯については先に述べたとおりであつて、積極的に通話料金の支払いを免れることを意図したものでなく(被告人が検察官に述べているように、沖縄にある取引先から被告人方会社宛の電話による通話料金を免れるため本件機器を購入したというのであれば、その取引先に対して何らかの連絡等の行動があつて然るべきであるのに、そのような行動のあつたことを窺うに足りる証拠もない。そしてまた、被告人において営業上の必要経費として納税に際し当然控除されるべき通話料金を本件機器を使用して免れることにどれ程の利益があつたのかも検察官調書上明らかにされていない。)、石原に対する恩義上の気持ちから同人の申出を受け容れ購入したに留まること、被告人としては本件機器を使用するについて違法性の意識の可能性があつたことは否定できないとしても、積極的に違法性の認識をもちながら法敵対的意識のもとに敢えて本件行為に及んだものとはとうてい認められないこと、以上の諸事情を考えれば本件被告人の行為の違法性及び責任性は極めて低いものと考えてよい

東京高等裁判所昭和59年7月18日
 また、所論は、弁護士との相談に関する原判決の説示を論難するが、仮に被告人がその主張するように斉藤一好弁護士から事前に助言を受けたとしても、関係証拠によれば、前記1の被告人の供述の記載からも明らかなとおり、被告人が同弁護士に見せた資料は、一番最初に安藤から来た手紙だけであつて、同弁護士は被告人が本件記事の真実性の根拠とした全資料を把握していたわけではなく、せいぜい、被告人から意見を求められ、示された資料の範囲内で自己の法律的見解を述べたものにすぎないと認められる。そのような助言が違法性の意識といつた別の局面で問題になることはありえても、右助言そのものが、名誉毀損罪の故意を阻却すべき、事実を真実と誤信したことについての相当性を基礎づける資料、根拠となりうるものでないことは、原判決が説示しているとおりである。