児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

2014年03月08日のツイート

小学生以下の被害者は92人で、最年少は3歳の女児だった。このうち66人(72%)は、強姦(ごうかん)や強制わいせつの被害を受けた際に、わいせつな画像や動画を撮られていた。(読売新聞)

 72%も強姦・強制わいせつ罪(176条後段)が付いてくるのであれば、ハメ撮りを社会的見解上一個の行為といっていいでしょう。
 13歳未満の裸を撮影すると強制わいせつ罪(176条後段)だと思うんですけど、28%は重い性犯罪が起訴されなかったということですね。

 警察庁が自画撮りの3項製造罪の統計も取っているようですので、数字を聞いてきます。sextingは1項提供罪(特定少数)とか2項製造罪(特定少数)なので、児童に対する禁止の趣旨もあるはずなんですが、児童を検挙しないので、野放し状態になっています。

児童ポルノ摘発1644件 昨年、被害者も最悪646人
2014.03.06 読売
 ◆加害者と「スマホで接点」急増
 全国の警察が昨年摘発した児童ポルノ事件は1644件で、前年より48件増えて過去最多だったことが6日、警察庁のまとめでわかった。被害を受けた18歳未満の子供も、前年比115人増の646人で過去最悪。元交際相手らの画像をインターネット上に流出させる「リベンジポルノ」も、確認された。

 裸の画像を収録したDVDを販売するなどの「流通」が847件、画像を撮影するなどの「製造」が797件だった。製造のうち、子供に自らのわいせつな画像を送らせる「自画撮り」と呼ばれる手口が318件で、前年より81件増加した。子供の悩み相談に応じるなどして親しくなった後、画像を送らせる加害者もいるという。

 被害者646人のうち、スマートフォンを使って加害者と知り合った子供は211人で、前年より157人も増えた。小学生以下の被害者は92人で、最年少は3歳の女児だった。このうち66人(72%)は、強姦(ごうかん)や強制わいせつの被害を受けた際に、わいせつな画像や動画を撮られていた。

 「リベンジポルノ」では、都内に住む会社員の男(37)が昨年4月、女子中学生の裸の画像を複数の男性にメール送信したとして逮捕された。男はネット上で知り合った中学生に恋愛感情を抱いたが、連絡が取れなくなったことを恨んで犯行に及んだという。

児童買春法が施行される平成11年までは青少年条例で処罰されていたケース

 産経新聞は気付くのが遅すぎです。1999年に児童ポルノ・児童買春法によって条例が骨抜きになりました。
 懲戒するにしても、年齢確認義務もないので、せいぜい、売買春と同等になるはずです。

http://sankei.jp.msn.com/region/news/140303/akt14030321000000-n1.htm
2人とも「18歳未満とは知らなかった」と供述したため、秋田地検は不起訴とした。18歳未満の男女とのみだらな行為を禁じた県青少年健全育成条例は「当該青少年の年齢を知らないことを理由として処罰を免れることができない」と規定しているが、国の法律である児童買春・ポルノ禁止法にはその規定がない。
 対償の供与やその約束があった場合は同法が適用されるため、18歳未満と知らなかった場合は処罰できない。同法が施行される平成11年までは青少年条例で処罰されていたケースだった。
 不起訴とはいえ、公務員としての信用失墜行為であることは明らかなため、陸上自衛隊は懲戒処分を行った。県立高講師は校長への報告も行っておらず、県教委が処分に向けて検討している。

 確かに、児童買春というのは、青少年に対する淫行(みだらな行為)に当たりそうです。

http://www1.g-reiki.net/pref_akita/reiki_honbun/au60002741.html
第七章 罰則
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第十四条 何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年にわいせつな行為をさせてはならない。
3 何人も、青少年に対し第一項に規定する行為を教え、又は見せてはならない。
第二十七条
1 第十四条第一項又は第二項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する
5 第十四条又は第十五条の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として第一項又は第二項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

 しかし、H11の児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律で、児童買春行為については、青少年条例は無効になっています。なので、現時点では、青少年条例違反となるのは、
   法文上の淫行(みだらな行為)
  +わいせつ行為
  −児童ポルノ・児童買春で禁止する行為
になっています。
 児童買春罪は故意犯なので、過失があっても処罰されません。
 児童買春行為は青少年条例の淫行・わいせつ行為から除外されていますので、「当該青少年の年齢を知らないことを理由として第一項又は第二項の規定による処罰を免れることができない」も適用されません。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO052.html
(条例との関係)
第二条  地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。
2  前項の規定により条例の規定がその効力を失う場合において、当該地方公共団体が条例で別段の定めをしないときは、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、なお従前の例による。

検察庁の部内誌では指摘されていた。

島戸純「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」 研修652号(H14.11)
この点については,児童買春等処罰法の解釈として,次の2とおりの考え方があり得るであろう。
第1 の考え方 本法を制定した際,対償の供与又はその約束を伴う性交等を児童買春と定義し, これを伴わない性交等を同法の枠外としたのであるから,対償の供与又ほその約束を伴うものについては,買春行為者に被害児童の年齢についての認識が認められるか否かにかかわらず,法律が制定すべき事項であって,その範囲においては条例の制定権は及ばないことになり,買春行為者に被害児童の年齢についての認識が認められない場合において,条例の淫行処罰規定,年齢の知情性推定規定を適用して処罰することはできない。
第2 の考え方 本法は,対償の供与又はその約束が認められかつ,買春行為者に被害児童の年齢についての認識が認められる場合の部分) にのみ効力が及ぶのであって,本法が処罰の対象としていない行為については,対価性の有無にかかわらず,すべて条例の効力が及ぶ。すなわち,被害児童の年齢についての認識がない場合は,本法の規制が及ばない結果,対償の供与又はその約束を伴う場合であっても,条例による処罰の対象となる。 ・・・・ (第1)の考え方に立つと、検察官が対償の供与又はその約束、及び買春行為者の被害児童の年齢に関する認識についての証拠が不十分であると思料して条例違反で起訴したところ、公判段階において対償の供与又はその約束が明らかとなった場合には、条例の効力は失われており、かつ知惰性の立証もできないことから、本法、本条例のいずれによっても処罰されず、無罪となるという結果になりかねないことになり、これを利用した被告人が対償の供与又はその約束があったとして条例が適用されるべきでないと主張する事態も考えられる。そして、対償の供与又はその約束がなかったと立証するのが極めて困難であることからすると、ひいては、買春行為者の被害児童の年齢に関する認識について証拠が不十分な場合は、本法、本条例のいずれによっても起訴することができないという結果も生じかねない。

 
判例が出ています。

東京高裁平成24年7月17日
(1)原判示第1、第5、第7及び第11の各所為に対して条例を適用した点について
所論は、18歳未満の者との性行為については、国法である児童買春・児童ポルノ等処罰法のみで全国一律に有償の場合のみを規制する趣旨であるとして、同法の施行により条例の淫行処罰規定は当然に失効しかと主張する。
そこで検討すると、児童買春・児童ポルノ等処罰法が、対償を伴う児童との性交等のみを児童買春として処罰することとし、対償を伴わない児童との性交等を規律する明文の規定を置いていないのは、後者につき、いかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であるとは解されず、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解される。
そうすると、青少年に対するみだらな性行為等を禁止し、これに違反した者を処罰することとした条例35条1項、53条のいわゆる淫行処罰規定は、児童買春・児童ポルノ等処罰法の施行によって、児童買春に該当する行為に係る部分についてのみ効力を失ったが、それ以外の部分については、なお効力を有するものと解される(平成11年法律第52号附則2条1項参照)。

提案者の1人である吉川(春)参議院議員は「はみ出す部分については当然残るのであって、それをどうするかについては各地方公共団体の御判断である」と言って、あたかも過失の児童買春行為については自治体の判断として青少年条例の淫行処罰規定と年齢知情条項が適用可能であるかのように答弁したのだが、実務ではそうは運用されていない。

第145国会衆議院法務委員会平成11年05月14日
○木島委員 
では、一点だけ聞きましょうか。この条例と本法との整合性の問題について御答弁願いたい。
○吉川(春)参議院議員 神奈川県条例の三十七条七項は、確かに本法の四条についても年齢の不知は許さない、こういう立場をとったと思います。今度この法案ができましても、確かにこの部分はまだ処罰として条例としては残るわけです。それは県の条例ですので、県の御判断によって、この法律との整合性のために条例の改正という手続をおとりになるのかあるいはそのまま残されるのかは県の判断だと思いますけれども、私は、立法政策として一つの方法であるということは認めたいと思います。
○木島委員 では、もう一点だけちょっと聞かせてください。
本法の附則二条、先ほど同僚委員も指摘しておりましたが、「地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。」と。そこで一点聞きます。この法律が成立して発効すると、せっかくのすばらしい神奈川県条例の三十七条七項、年齢の不知は許さないというこの規定の効力はどうなってしまうのでしょうか。これはつぶされてしまうのでしょうか、生き残るのでしょうか。それだけはちょっと発議者、答弁してください。

○吉川(春)参議院議員 ですから、この法律と重なる部分は効力を失うけれども、それからはみ出す部分については当然残るのであって、それをどうするかについては各地方公共団体の御判断である、この立場でございます

力士が上半身裸の乳児をだっこしている写真

 子ども相撲の写真は、立法当初から児童ポルノ該当性が話題になっていましたが、
 例えば
http://www.sumo.or.jp/ticket/event_detail?id=133
http://www.sumo.or.jp/img/honbasho/campaign/201403/baby02.jpg
http://www.sumo.or.jp/img/honbasho/campaign/201403/baby01.jpg
こんなのが、法文上は児童ポルノに該当するというのは、法律か判例がおかしいという話です。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第2条(定義)
1この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
一 児童
二 児童に対する性交等の周旋をした者
三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

という法文を前提にすると、2項が児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)というので、

二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態

に該当するよな。
 で、普通の人が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」には該当しないと思いきや

[003/010] 145 - 衆 - 法務委員会 - 11号
平成11年05月12日
○大森参議院議員 このような問題にお答えするのは非常に困難なのですが、通常の下着、通常のシチュエーションというのは、多分枝野委員と私の頭の中で描いているものが異なるかもしれません。そういったことで、こういう事案につきましては、具体的な口頭で言われたことについて、その場合はということはなかなか言いにくいものがございます。
 こういう判断につきましては、あるものが児童ポルノに当たるか否かについては、あくまで個別具体的な事例に基づきまして、この法案の要件に該当するか否か総合的に判断されるべきものでありまして、最終的には裁判所の認定によることになります。したがって、確定的にお答えすることは困難であるということをまず御理解いただきたいと思います。それから、通常のおふろのシーンといいますと、これは衣服はつけていない子供になると思いますけれども、三号ポルノにつきましては、その要件といたしまして「性欲を興奮させ又は刺激する」、こういうような要件がついております。子供がおふろに入っている姿を見て通常、一般人は性欲を興奮させ、刺激するというところまで至らないと思いますので、そういうところから当たらない場合が多いのではないかというふうにお答えできると思います。
145-衆-法務委員会-11号 平成11年05月12日
○枝野委員 それで、先ほど途中でちょっと切りかえてしまったのですけれども、先ほどおふろのコマーシャルみたいな例を申し上げましたが、一般的に言えば、これも、人によって子供も成長程度が違いますし、シチュエーション、映し方によって全部違うとは思いますが、普通には、三歳とか四歳の子供たちが例えば裸で水遊びをしている、それがニュースの映像とかで流れたりすることがありますね、いよいよ暑くなりましたなんというニュース。それから、温泉地で普通に温泉に、おふろに入っている子供、それも少なくとも二歳とか三歳の子供。
 これは、何歳からかということをここで議論しようと思うと、これはまさにケース・バイ・ケースなのでそういうことは申しませんが、そういったケースみたいなところは、これは一般人の性欲を刺激するとは普通には言えないということで大体解釈されるだろうなという理解でよろしいでしょうか。
○大森参議院議員 そのように理解していいと思います。
 ただ、低年齢、三歳とかとおっしゃったのでしょうか、その裸であれば絶対該当しないかということは必ずしも言えません。性的に未熟な女の子、女児の陰部等を描写したものと認める写真についても刑法上のわいせつ図画に当たるとした判例がございます。
 そういったことから、常に否定されるわけではないと考えますけれども、今おっしゃったような事例につきましては、それが通常一般人から見て「性欲を興奮させ又は刺激するもの」と言えるかどうかという、この基準によって判断していただければ妥当な結論が出ると思います。

という議論もあったんですが

大阪地裁H24.1.19
 被告人は,
平成25年6月1日,大阪府北区西天満所在のスーパー銭湯「天満温泉」において,入浴中の女児が18歳に満たない児童であることを知りながら,他人に提供する目的で,同児童の裸を携帯電話型のビデオレコーダーで撮影し,その電磁的記録を同レコーダー内蔵の記憶装置に記録して児童ポルノを製造しものである。
量刑理由
被告人のした各犯行は被害児童らの権利を害する許されないものではあるが,女湯や女子トイレ内での盗撮に比べると,犯行態様の悪質性は低い
阪高裁H24.7.12
1 控訴趣意中,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という児童ポルノ法2条3項3号の構成要件が記載されていない点に関する主張について
 論旨は,本件訴因には,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」としう児童ポルノ法2条3項3号の構成要件が記載されていないから,原審は,起訴状に罪となるべき事実を包含していない場合(刑事訴訟法339条1項2号)として公訴棄却の決定をすべきであったのに,審理して有罪判決を宣告している点で,原審には,不法に公訴を受理した違法(同法378条2号前段)があり,そのような訴因であるのに,原審は,検察官に対して何ら釈明を求めていない点で,原審には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反(同法379条)があり,また,原判決の罪となるべき事実には「性欲を興奮させ又は刺激するもの」との記載がなく,児童ポルノ法2条3項3号の構成要件が記載されておらず,同号の犯罪は成立しないから,原判決には理由不備の違法(刑事訴訟法378条4号)がある上,そのような事実に児童ポルノ法2条3項3号を適用しているから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤り(刑事訴訟法380条)がある,というものである。
 そこで,記録を調査して検討するに,本件訴因に「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という文言が記載されていないこと,その訴因について,原審は,検察官に対して釈明を求めていないこと,原判決の罪となるべき事実に前記文言の記載がないこと,原判決は,原判示各事実に児童ポルノ法2条3項3号をそれぞれ適用し,被告人を原判示各事実についていずれも有罪としたこと,以上の点は弁護人が指摘するとおりである。
しかし,原審のそのような措置ないし判断は,いずれも是認することができるものと解される。
 所論は,原判示各事実で3号ポルノに該当する部分は,「入浴中の児童の全裸の姿態」であると解されるが,これは,3号ポルノの要件でいえば,「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」に関するものであり,これだけではその姿態が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であるかについては何も記載されておらず,「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」と「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とは別個の要件であり,「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」であっても,医学写真や芸術写真が適法とされるのは「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえないと解されるからであって,3号ポルノを認定するには,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の記載を省略することは許されない,というのである。
 そこで検討するに,児童ポルノ法は,その2条3項において児童ポルノを定義しているが,その1号においては,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」との要件(以下「性欲興奮刺激要件」という。
)の記載はなく(その内容からしてこの要件は当然存在するものと考えられたためである。
),同項2号及び3号においてはこの要件を付加しているのは弁護人が指摘するとおりである。
そして,この性欲興奮刺激要件は,犯罪的な描写とそうでないものとを区別する重要な要件であるから,3号ポルノの罪となるべき事実においては,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」との文言を記載して性欲興奮刺激要件があることを明記するのが望ましい。
ただ,この要件が付加されたのは,弁護人も指摘するとおり,例えば医学書などの学術的な必要のために撮影されたものや家族間や親しい人間関係が介在するなかでの児童の自然な姿を撮影したものなど相応の社会的正当性のある場合を除外する趣旨のものであり,3号ポルノの「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」については,前記のように違法ではないとして除外される場合でないことがその判示事実から分かるような記載があれば,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」との文言そのものの記載がなくとも,それに該当する事実摘示があるということができ,そのような場合には性欲興奮刺激要件は満たされるものと解される。

・・・
 そこで検討するに,(1)の点は,本件各画像が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえるかどうかについては一般人を基準として判断すべきものであることはそのとおりである。
しかし,その判断の基準とすべき「一般人」という概念は幅が広いものと考えられる。
すなわち,「一般人」の中には,本件のような児童の画像で性的興奮や刺激を感じる人もいれば,感じない人もいるものと考えられる。
本件は,公衆浴場の男湯に入浴中の女児の裸の画像が対象になっており,そこには大人の男性が多数入浴しており,その多くの男性は違和感なく共に入浴している。
そのことからすると,一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる。
しかし,その一方で被告人のようにその女児の裸の画像を他の者から分からないように隠し撮りし,これを大切に保存し,これを密かに見るなどしている者もおり,その者らはこれら画像で性的興奮や刺激を感じるからこそ,これら画像を撮影し,保存するなどしているのである。
そして,これらの人も一般人の中にいて,社会生活を送っているのである。
ところで,児童ポルノ法が規制をしようとしているのはこれらの人々を対象にしているのであって,これらの人々が「一般人」の中にいることを前提に違法であるか否かを考える必要があると思われる。
他人に提供する目的で本件のような低年齢の女児を対象とする3号ポルノを製造する場合は,提供を予定されている人は一般人の中でそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人達が対象として想定されているものであり,そのような人に提供する目的での3号ポルノの製造も処罰しなければ,2項製造罪の規定の意味がそのような3号ポルノの範囲では没却されるものである。
したがって,比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。
 したがって,原判決が原判示各事実に児童ポルノ法7条2項,1項,2条3項3号を適用したのは正当である。

という判例があるので、一部にこれで興奮する人がいれば、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」だというんですよ。判例は。

 非常識な結論だとおもうんですが、これは奥村説じゃなくて、法文と国家議事録と判例を紹介しただけですから、奥村弁護士を批判しても意味ないですよ。