児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「地方検察庁で保管中のSDカード4枚(平成23年東地領第179号符号1から4まで)は,いずれも判示第3の児童ポルノ製造の犯罪行為を組成した物で,何人の所有も許さないものであるから,同法19条1項1号,2項本文を適用して,これらを没収する。」という法令適用

 判決時点では、児童ポルノの所有は適法なので、「何人の所有も許さないものであるから」というのは誤りです。
 東京高裁は、児童ポルノ製造罪の記録媒体は、犯罪生成物として刑法19条1項3号で没収する(東京高裁H23)としています。
 児童ポルノ弁護人はこういう点もチェックしています。

強制わいせつ,強姦,強姦致傷,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
東京地方裁判所判決平成23年9月6日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
 被告人を懲役18年に処する。
 未決勾留日数中360日をその刑に算入する。
 東京地方検察庁で保管中のSDカード4枚(平成23年東地領第179号符号1から4まで)を没収する。

       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は
第1 〔所在地省略〕被告人方において開講していた英会話サークルの生徒であるA〔生年月日省略〕が13歳未満の女子であることを知りながら,平成21年9月下旬ころ,前記被告人方において,A(当時9歳)と性交し,その際,同人に全治約1週間を要する処女膜損傷の傷害を負わせ[平成22年12月15日付け追起訴状記載公訴事実]
第2 Aが13歳未満の女子であることを知りながら,別表1記載のとおり,平成22年1月28日ころから同年3月31日ころまでの間,前後5回にわたり,いずれも前記被告人方において,A(いずれも当時10歳)と性交し[訴因変更後の平成22年8月17日付け追起訴状記載公訴事実及び訴因変更後の同年11月8日付け追起訴状記載公訴事実]
第3 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,別表2記載のとおり,平成22年1月28日ころから同年3月31日ころまでの間,前後5回にわたり,前記被告人方において,A(当時10歳)に,被告人と性交する姿態,被告人がAの陰部を触る姿態及び同人の陰部等を露出させる姿態をとらせ,その場面をビデオカメラで撮影し,その動画データ合計8点を同ビデオカメラに装着したSDカード合計4枚に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態並びに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し[平成22年12月20日付け追起訴状記載公訴事実]
第4 前記英会話サークルの生徒であるB〔生年月日省略〕が13歳未満であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,平成21年11月1日ころ,前記被告人方において,B(当時11歳)に対し,服を脱いでソファーに横になるように言い,同人を全裸で同所のソファーに仰向けにさせた上,その陰部を右手指で押し,その両胸を両手でなで回し,さらに股を開かせてその陰部などをポラロイドカメラで撮影し[平成22年4月30日付け起訴状記載公訴事実]
たものである。

(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は,刑法181条2項,177条後段に,判示第2の各所為は,いずれも同法177条後段に,判示第3の所為は,包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,1項,2条3項1号,2号,3号に,判示第4の所為は,刑法176条後段に,それぞれ該当する。各所定刑中,判示第1の罪については有期懲役刑を,判示第3の罪については懲役刑を,それぞれ選択する。被告人には前記の前科があるので,判示各罪の刑について,いずれも刑法56条1項,57条により,それぞれ再犯の加重をする(ただし,判示第1及び第2の各罪については,いずれも同法14条2項の制限内で加重する。)。以上は,同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,刑の最も重い判示第1の罪の刑に同法14条2項の制限内で法定の加重をする。その刑期の範囲内で,被告人を懲役18年に処する。同法21条を適用して,未決勾留日数中360日をその刑に算入する。東京地方検察庁で保管中のSDカード4枚(平成23年東地領第179号符号1から4まで)は,いずれも判示第3の児童ポルノ製造の犯罪行為を組成した物で,何人の所有も許さないものであるから,同法19条1項1号,2項本文を適用して,これらを没収する。訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して,被告人に負担させない。

教員が夜間青少年の相談に乗ったという夜間同伴の罪で、罰金10万円(静岡簡裁H25.5.1)→ 減給6ヶ月

教諭 深夜少女連れ外出 罰金命令 静岡市教委 減給6か月=静岡
2013.05.31 読売新聞
 静岡市教委は30日、18歳未満の少女を連れて深夜に外出したとして、県青少年環境整備条例違反(深夜の連れだし)で静岡簡裁に略式起訴された同市立中学校(駿河区)の30歳代男性教諭を、減給6か月(10分の1)の懲戒処分とした。
 発表によると、教諭は昨年12月8日午前0時過ぎ〜同2時頃、同市内に住む知り合いの少女を保護者の許可なく少女宅に迎えに行き、自家用車の助手席に乗せて外出したとして、同条例違反の疑いで書類送検された。5月1日、静岡簡裁で罰金10万円の略式命令を受け、納付した。
 2人は携帯電話のメールで連絡を取り合い、昨年10月以降、計4回、深夜に会っていた。教諭が少女の悩みや相談に乗っていたといい、市教委の調査に対し、教諭は「後ろめたいので深夜に会っていた。あってはならないことをした」と反省しているという。教諭は4月から1年間、未成年の人権などに関する研修を受けている。
 高木雅宏教育長は「再発防止のため、全教職員に法令順守と綱紀粛正を強く求め、指導を徹底する」とのコメントを発表した。

懲戒処分:県条例違反で中学教諭を減給−−静岡市教委 /静岡
2013.05.31 毎日新聞 
 静岡市教委は30日、駿河区にある市立中学の30代の男性教諭を減給10分の1(6カ月)の懲戒処分にしたと発表した。
 市教委によると、教諭は昨年12月8日深夜、市内に住む18歳未満の少女を保護者の承諾なしに車に乗せて外出した。葵区の路上で停車中に警察官に職務質問され発覚した。2人は知り合いで、教諭は「悩みを聞いていた」と話している。昨年10月ごろから深夜に計4回会っていたという。
 教諭は県青少年環境整備条例違反で略式起訴され、今月1日に静岡簡裁から罰金10万円の略式命令を受けた。

児童ポルノの所持による児童の心身の成長に重大な影響とはなにか

 流動性の無い単純所持行為に、製造を超えた法益侵害があるとは思えないんですが。製造した直後に持ってるのは製造罪に包摂されるでしょ。かれこれ15年も調査研究してきたはずなのに、提供とか製造とか所持による被害調査の結果が全くないなんて。
 所持・提供等について「教育、啓発」義務があるのですが、調査研究については「所持」が明記されていません。

衆法183国会 22号
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案
第14条(教育、啓発及び調査研究)
国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの所持、提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
3 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。