児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

刑事事件で起訴され公判中であることを秘匿して入社したことを理由とする解雇が無効とされた事例(東京地裁s60.1.30)

 前科を履歴書に書く必要があるかという相談でした。

地位保全仮処分申請事件
東京地方裁判所判決昭和60年1月30日
労働関係民事裁判例集36巻1号15頁
判例タイムズ565号137頁
判例時報1144号148頁
労働判例446号15頁

3 また、債務者会社の主張は、仮に債権者が採用面接の際に積極的に虚偽の事実を申告しなかつたとしても、債務者会社の事業内容の特殊性に照らし、成田事件に関連して逮捕、勾留、起訴された事実を秘匿したこと自体が信義則に反し解雇理由となり得るとの趣旨をも包含していると解せられるので、この点について考えてみる。
  右の主張は、債権者が雇用契約の締結に際し、右の事実を債務者会社に積極的に告知すべき義務があることを前提とするものである。たしかに、雇用契約は、使用者と労働者との相互の信頼関係を基盤とする継続的契約関係であるから、労働者は契約の締結に際し、自己の経歴等労働力の評価に関する重要な事項を使用者に告知すべき義務を信義則上負うことがあるものと解される。そして、使用者としては雇用しようとする労働者の経歴についてできる限り多くの事項を知りたいと考えるのも無理からぬところである。しかし、そうであるからといつて、雇用契約の趣旨に照らし信義則上必要かつ合理的と認められる範囲を超えてまで労働者にその経歴の告知を求めることは、労働者の個人的領域への侵害として許されないことも、いうまでもない。労働者の経歴について、右の必要かつ合理的と認められる範囲は、使用者の事業の内容、当該労働者の予定された職務の内容等を総合勘案して、使用者の事業に対する社会的信用、労働者の労働力の評価に影響を及ぼすべき事項に限定されると解すべきであろう。
 前記一の1及び2で認定したように、債務者会社の事業内容は航空機に関連する備品、器材の修理、分解整備を主たる業務とし、民間航空会社や防衛庁等の注文により業務を行つており、債権者は航空機のタイヤの修理の仕事に従事することが予定されていたものである。ところで、債権者がこれに関係して逮捕、勾留、起訴されたいわゆる成田事件は、前記のように成田空港の開港に反対する闘争に関して発生したものであるから、これにより逮捕、勾留、起訴されたことが債務者会社の事業の内容に関係がないとはいえないことは明らかである。しかし、右の闘争に参加した者が直ちに航空機産業の存在や業務自体に反対する思想を有し、そのための行動に出るものであるということにはならないし、その旨の疎明もない。更に、債権者は公共職業安定所の求人票により債務者会社に応募し、債務者会社工場の一作業員となることが予定されていたにすぎないのであるから、債権者が成田事件により逮捕、勾留、起訴されたことが債権者の労働力の評価とは直接関連を有するものでないことは明らかであり、また、債務者会社の事業の特殊性を十分考慮しても、債権者がその従業員の一員であることが直ちに会社の信用を傷つけ顧客の信頼を損うことにつながるものとはいえない。
   そうであるとすれば、債権者は雇用契約の締結に際し、成田事件に関連して逮捕、勾留、起訴されたことを債務者会社に告知すべき義務を負つていたということはできないから、これを秘匿したこと自体をもつて解雇の理由とすることはできない。
 4 また、刑事事件に関係して逮捕、勾留、起訴されたのは、債権者が債務者会社へ採用される以前の出来事であるから、就業規則四−三−(24)所定の「刑法上の処分を受け、又はこれに類する不法行為があつたとき」に該当するとはいえない。
5 よつて、本件解雇は、その余の点につき判断するまでもなく、理由の存在が認められないから、無効である。

雇傭契約の締結に際し提出した履歴書の賞罰欄に前科を秘匿して記載せず、その他経歴詐称があったことを理由とする普通解雇が権利の濫用にあたり無効とされた事例(仙台地裁S60.9.19)

仙台地方裁判所判決昭和60年9月19日
労働関係民事裁判例集36巻4〜5号573頁
判例タイムズ569号51頁
判例時報1169号34頁
労働判例459号40頁
ジュリスト901号107頁
3 被告主張の解雇事由の評価
 前記のとおり、被告主張の解雇事由については、そのうちの前科、前歴の秘匿、学歴、職歴の詐称及びeの雇用継続の判断に影響を与えたことの三点を認めることができるから、次に、これらの事由が原告を解雇するに足りるまでの合理性、相当性を有していたか否かについて検討する。
(一) 前科、前歴の秘匿
 原告の秘匿した前科は昭和三七年月日(但し、判決言渡日、判決確定日、刑の執行終了日などのうちいずれであるかは判然としない。)の恐喝罪による懲役六月を最終とし、原告本人尋問の結果(第一回)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和四一年以降は罰金以上の刑に処せられたことがないと認められるから、本件雇用契約の締結時においては原告の前科はすべて刑の消滅(刑法三四条の二)をきたしていたと推認できるところ、原告はこのように既に刑の消滅している前科を秘匿したこと自体を理由に労働者を解雇することはできない旨主張する。
 そこで、この点について検討してみると、使用者が雇用契約を締結するにあたつて相手方たる労働者の労働力を的確に把握したいと願うことは、雇用契約が労働力の提供に対する賃金の支払という有償双務関係を継続的に形成するものであることからすれば、当然の要求ともいえ、遺漏のない雇用契約の締結を期する使用者から学歴、職歴、犯罪歴等その労働力の評価に客額的に見て影響を与える事項につき告知を求められた労働者は原則としてこれに正確に応答すべき信義則上の義務を負担していると考えられ、したがつて、使用者から右のような労働力を評価する資料を獲得するための手段として履歴書の提出を求められた労働者は、当然これに真実を記載すべき信義則上の義務を負うものであつて、その履歴書中に「賞罰」に関する記載欄がある限り、同欄に自己の前科を正確に記載しなければならないものというべきである(なお、履歴書の賞罰欄にいう「罰」とは一般に確定した有罪判決(いわゆる「前科」)を意味するから、使用者から格別の言及がない限り同欄に起訴猶予事案等の犯罪歴(いわわゆる「前歴」)まで記載すべき義務はないと解される。)。そして、刑の消滅制度が、犯罪者の更生と犯罪者自身の更生意欲を助長するとの刑事政策的な見地から一定の要件のもとに刑の言渡しの効力を将来に向かつて失効させ、これにより犯罪者に前科のない者と同様の待遇を与えることを法律上保障しているとはいえ、同制度は、犯罪者の受刑という既往の事実そのものを消滅させるものではないし、またその法的保障も対国家に関するもので直接私人間を規律するものではないことからみても、同制度の存在が、当然には使用者に対し、前科の消滅した者については前科のない者と同一に扱わなければならないとの拘束を課すことになるものでないことはいうまでもない。
 しかしながら、犯罪者の更生にとつて労働の機会の確保が何をおいてもの課題であるのは今更いうまでもないところであつて、既に刑の消滅した前科について使用者があれこれ詮策し、これを理由に労働の場の提供を拒絶するような取扱いを一般に是認するとすれば、それは更生を目指す労働者にとつて過酷な桎梏となり、結果において、刑の消滅制度の実効性を著しく減殺させ同制度の指向する政策目標に沿わない事態を招来させることも明らかである。したがつて、このような刑の消滅制度の存在を前提に、同制度の趣旨を斟酌したうえで前科の秘匿に関する労使双方の利益の調節を図るとすれば、職種あるいは雇用契約の内容等から照らすと、既に刑の消滅した前科といえどもその存在が労働力の評価に重大な影響を及ぼさざるをえないといつた特段の事情のない限りは、労働者は使用者に対し既に刑の消滅をきたしている前科まで告知すべき信義則上の義務を負担するものではないと解するのが相当であり、使用者もこのような場合において、消滅した前科の不告知自体を理由に労働者を解雇することはできないというべきである。

AKB河西さんと男児写真、立件見送り 警視庁

 出版社の対応は良かったと思います。
 乳首を触るからこういうことになって、乳首さえ触なければこういうことにならないということなんですが、これが変だと思うのであれば、法律を見直すべきです。
 児童ポルノの定義が広い上に外縁が不明確だということに警戒していただきたいですね。

解説
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20130110#1357872973

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130312-00000048-asahi-soci
AKB河西さんと男児写真、立件見送り 警視庁
朝日新聞デジタル 3月12日(火)21時48分配信
 問題になったのは、上半身裸の河西さんの両胸を男児が手で覆っている写真。写真集の告知として1月に週刊漫画誌ヤングマガジン」に掲載が予定され、警視庁が講談社から撮影の経緯など事情を聴いていた。
 捜査幹部は立件見送りの理由について「写真自体は児童ポルノに該当する可能性があるが、講談社側が写真集を発売中止にするなど、速やかに対応したため」としている

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130312-00000585-san-soci
AKB不適切写真、立件見送り 警視庁、発売中止を考慮 
産経新聞 3月12日(火)21時57分配信
 アイドルグループ「AKB48」のメンバー、河西智美さん(21)の写真集の一部に不適切な表現があったとして発売が中止され、警視庁が児童買春・ポルノ禁止法違反の可能性があるとして発行元の講談社を聴取していた問題で、警視庁が同法違反容疑での立件を見送る方針を固めたことが12日、捜査関係者への取材で分かった。
 警視庁は撮影経緯などから、外国人の少年が上半身裸の河西さんの胸部を触っている写真を児童ポルノと認定した。ただ、同社が事情聴取前に写真集の発行を自主的に取りやめ、告知用写真が載る予定だった漫画誌「週刊ヤングマガジン」の発売も延期して回収を進めるなど、流通防止に努めたことを考慮したという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130312-00000138-jij-soci
AKBの不適切写真、立件せず=発売中止で「必要性なし」―警視庁
時事通信 3月12日(火)19時29分配信
 同社は2月4日の発売を予定し、1月12日発売の週刊漫画誌ヤングマガジン」に告知記事と写真を掲載したが、自主的に不適切だと判断。漫画誌を回収し、写真集も発売中止にしていた。
 少年育成課は、漫画誌の回収決定後、講談社から経緯を聴くなど調べを進めたが、同社が写真集を発売中止にし、書店に出回った漫画誌も返品させるなど、流通しないように努めており、立件の必要はないと判断したという。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130312-00000089-mai-soci
問題になったのは、上半身裸の河西さんの胸部を少年が後ろから手で隠している写真。同法は、乳首や性器を児童に触らせる写真などは児童ポルノにあたると規定している。
 同庁少年育成課は2〜3月、講談社の担当者から事情聴取し「写真は児童ポルノにあたる」と結論づけた。だが、同社が写真集の販売を中止したことなどから悪質性は低いと判断した。

電波媒体は相変わらず緩く伝えています

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20130313-00000004-jnn-soci
AKB48・河西さんの写真集、警視庁が立件見送り
TBS系(JNN) 3月13日(水)5時56分配信
 問題となったのは、上半身裸の河西さんの胸を外国人の少年が触っている写真で、警視庁は写真が児童ポルノにあたる可能性があるとして捜査していましたが、講談社が自主的に発売を中止したことなどから、立件を見送りました。(13日01:06)