児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

京都府と大阪府にまたがる痴漢(迷惑条例)

 府県境をまたぐ痴漢行為の場合、どこの条例を適用するのかという問題があります。
 時刻表マニアなら、「ひかり○○号は、○時○分に京都府に入る。『午前6時35分から40分ごろの間』なら京都府条例だ」とか調べてくれそうですね。
 「痴漢行為は認めるが、行為地は大阪府だ」というのは否認になるんでしょうか。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110609-00000270-mailo-l26
逮捕容疑は、4月16日午前6時35分から40分ごろの間、JR東海道新幹線の新大阪駅から京都駅への車内で、隣で寝ていた無職の女性(19)=東京都世田谷区=の右太ももを触ったとされる。
 同署によると、触られていることに気付いた女性が男の手をつかんで携帯電話を出させ、赤外線通信機能で自分の携帯に氏名や電話番号、生年月日などのプロフィルを送信させた。京都駅に到着後に男を下車させて駅員を呼んだところ、男は腕を振り払って逃走。しかし、女性の携帯に残ったプロフィルが決め手となり身元が判明した。容疑を認めているという

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110608-00000944-yom-soci
発表では、男は4月16日午前6時30分頃、新大阪―京都駅間を走行していた新幹線車内で、東京都内在住の女性の体を触った疑い。
 女性は被害に気付いて男の手をつかみ、同6時40分頃に京都駅に到着するまでに「連絡先を教えなさい」と赤外線通信を使った情報送信を要求。男は素直に応じたといい、逮捕後の調べにも「間違いありません」と容疑を認めている。.

「平成23年6月10日、Kに対し,児童を相手方とする性交類似行為にかかる児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為にかかる児童の姿態及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録媒体である児童ポルノの画像データ合計17個を,自己のパーソナルコンピュータから電気通信回線を通じてK使用のパーソナルコンピュータに送信し,もって,児童ポルノを提供した」という1項提供罪の訴因の問題点

 「画像データ17個」を送信したんですが、これだと、有体物としての児童ポルノが特定されてません。

 判例は媒体の特定を要求しています。

東京高裁h20.9.18
オ 原判決は,(罪となるべき事実)の項で,第2の事実として,本件公訴事実と同旨の事実を認定し,(法令の適用)の項で,罰条として,同法7条3項,1項,2条3項2号,3号を摘示し,刑種の選択以下の法令適用に及んでいる。
(2)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下,この項において,単に「法」という。)にいう「児童ポルノ」とは,「写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」と定義されている(法2条3項)。
したがって,本件のような電磁的記録に係る事案において,児童ポルノとは,画像データ等の電磁的記録自体ではなく,当該電磁的記録に係る記録媒体(フロッピーディスク,CD−ROM,MOディスク,DVD,メモリーカード,ハードディスク等)を指すものといわなければならない(この点を指摘する所論は正当である。)。
(3)本件公訴事実は,上記(1)エのとおりの記載がなされ,罪名及び罰条の記載や公訴事実の記載全体の体裁からすれば,法7条3項の児童ポルノ製造罪に該当する事実が起訴されたものであると解されるところ,公訴事実中に,「もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態等であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ20画像を製造した」と記載されており,結論として電磁的記録である画像データ自体が児童ポルノに該当するとしているものと解さざるを得ず,これが上記(2)の法の解釈を誤解したことに基づく誤った記載であることは明らかである。そして,上記(1)ア〜ウの事実関係を前提とすると,本件において,製造行為の客体である児童ポルノに該当し得るものは,デジタルカメラに内蔵されたピクチャーカード,あるいはパーソナルコンピューターに内蔵されたハードディスクが考えられるところ,本件公訴事実中にはこれらが挙げられておらず,製造行為の客体である児童ポルノが明示されているとはいえない。
他方,本件公訴事実においては,製造行為の日時・場所については特定されており,その方法についても「児童をしてその乳房及び陰部を露出させるなどの姿態をとらせた上,これをデジタルカメラで撮影し,その画像データを記憶させ,(中略)前記画像データをパーソナルコンピューターに記憶,蔵置させ」という程度には記載がなされており,訴因としておよそ釈明の余地がないほど不明確なものとはいえず,訴因の補正又は変更により十分対処できる程度のものといい得るから,このような場合,原審としては,検察官に対し,本件公訴事実について釈明を求め,電磁的記録である画像データ自体を児童ポルノであるとする誤った記載は撤回削除させ,製造行為の客体である児童ポルノが何であるかについて明らかにさせるなど,訴因の記載を明確にさせた上で,審理すべきであったといわなければならない。

この判例が公表されてないので、時々、媒体が特定されてないことがあって、この判例を出すと、訂正されるということがあります。