この段階まで来れば何言っても良くて、何言ってもひっくり返らない訳ですが、高裁判決から2年確定を遅らせて、収監を延ばした訳ですから、弁護活動としては成功でした。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=80594&hanreiKbn=01
事件番号 平成19(あ)1706
事件名 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反被告事件
裁判年月日 平成21年09月25日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
判例集等巻・号・頁 集刑 第297号291頁
原審裁判所名 大阪高等裁判所
原審事件番号
原審裁判年月日 平成19年08月29日
判示事項 店舗型性風俗特殊営業の規制に係る改正規定の施行に関し,いわゆる既存業者の営んでいる営業について改正規定を適用しないことが憲法14条1項,22条1項に違反するとの主張が,原判決の結論に影響を及ぼさない違憲の主張であるとされた事例
裁判要旨
参照法条 憲法14条1項,憲法22条1項,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律2条6項2号,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律28条1項,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律28条3項,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律49条5号,大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例9条1号
上告理由も簡単なものです。
上告理由第1 憲法違反〜憲法14条・22条違反
1 はじめに
本件は、禁止区域において、実質的には「店舗型性風俗特殊営業」(法2条6項1号)を営んだという風営法違反の事案である。
第2条(用語の意義)
この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一 キヤバレーその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる営業
二 待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)
6 この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一 浴場業(公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)第一条第一項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業
「店舗型性風俗特殊営業」(法2条6項1号)は、広範な禁止区域が設定され、既設の店舗については既得権で営業できるが,合法的な新規の出店は許可されない。
そこで、実際には別の営業許可を得て、異性の客に接触する役務を提供する営業が行われているのである。
このように「店舗型性風俗特殊営業」の許可が得られないことは新規参入者に対しては極めて不合理な差別であるから、平等原則(憲法14条)及び営業の自由(憲法22条)違反である。
従って、「店舗型性風俗特殊営業」を事実上禁止する風営法49条5号、28条1項、2条6項2号、大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例9条1号の各規定は憲法14条23条に違反して無効であるから、本件にこれらを適用した原判決には憲法違反があるから原判決は破棄を免れない。
2 原判決
この点について原判決は、憲法22条1項、14条1項に違反しないと判示した。
(1)憲法違反の主張について
風営法 28条 1項が店舗型性風俗特殊営業について禁止区域を設定していることは弁護人主張のとおりであるが、同規定は、店舗型性風俗特殊営業が性的なものであることから、周辺の善良な風俗又は清浄な風俗環境、あるいは少年の健全な育成を害することのないように、学校等の特定の施設の周辺におけるその営業を禁止しているのであって、かかる規制は、公共の福祉のために合理的に営業の自由を制限するものであり、憲法22粂 1項に違反するものではない。また前記大阪府条例は、風営法 28条 1項後段に基づいて、病院、診療所等の施設を指定しているのであり、これも上記風営法による規制の趣旨に照らして合理的なものであって、同様に憲法22条 1項に違反するものではない。
さらに、風営法 28条 3項は既存の業者に対して場所的規制を適用しないとしているが、これは、店舗型性風俗特殊営業を規制する改正法施行の際許可を得て現実に同営業を営んでいたものに対し、その既得権を尊重し、特にその営業を引き続いて行うことを認めた趣旨のものであって、既存の業者に禁止区域における営業を独占させようとする趣旨のものではないから、同規定は憲法 14条 1項に違反するものではない。
したがって、上記風営法の憲法違反をいう弁護人の主張には理由がない。
しかしながら、14条1項については、「店舗型性風俗特殊営業が性的なものであることから、周辺の善良な風俗又は清浄な風俗環境、あるいは少年の健全な育成を害することのないように、学校等の特定の施設の周辺におけるその営業を禁止し」という立法趣旨の実現のためには、既存の営業についても直ちに(あるいは一定期限後に)禁止するのが合理的であって、既得権を認めて法改正後も営業させる合理性はない。
「周辺の善良な風俗又は清浄な風俗環境、あるいは少年の健全な育成を害する」といって公共の福祉のための規制を認めつつ、「周辺の善良な風俗又は清浄な風俗環境、あるいは少年の健全な育成を害する」既得権を認めるのは自己矛盾であって、差別の合理性を説明できない。
また、「周辺の善良な風俗又は清浄な風俗環境、あるいは少年の健全な育成を害する」ことは変わらないのに既存の営業を許して新規参入を認めないことは営業の自由(憲法22条1項)に対する不合理な制約である。
3 まとめ
結局、「店舗型性風俗特殊営業」の許可が得られないことは新規参入者に対しては極めて不合理な差別であるから、平等原則(憲法14条)及び営業の自由(憲法22条)違反である。
従って、「店舗型性風俗特殊営業」を事実上禁止する風営法49条5号、28条1項、2条6項2号、大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例9条1号の各規定は憲法14条23条に違反して無効であるから、本件にこれらを適用した原判決には憲法違反があるから原判決は破棄を免れない。