児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項製造罪が数回の準強制わいせつ罪をかすがいしそうな事例(大洲支部)

 余罪が起訴されればの話です。
 被害児童1名の場合は、処断刑期に直結するので、罪数処理をチェックすることは必須です。面倒くさがりの裁判官なんてその議論を回避するために軽くすることもあります。

http://www.sanspo.com/shakai/news/100601/sha1006010532005-n1.htm
「指導の一環だった」と容疑を否認している。逮捕容疑は、29日午後2時15分ごろ、体育館で練習していた中学3年の女子生徒(15)に「特訓」と言って約30分間、太ももなどを触った疑い。容疑者は「個人レッスン」などとして、女子生徒だけを体育館に残していた。事情を知った学校関係者が30日、同署に相談し発覚した

http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20100618/news20100618819.html
起訴状によると、被告は5月29日午後2時半から同50分の間、内子町内の中学校体育館で、女子中学生に個人指導の名目で透視できるレオタードなどを着させてビデオ撮影などをしたとされる。
 同地検によると、起訴内容を認めているという。

教え子わいせつ 教諭起訴=愛媛
2010.06.19 読売新聞
 生徒に指導の一環だと思いこませて、肌が透けて見えるような服を着させてビデオ撮影していたとされ、容疑者は起訴事実を認めているという。
 起訴状によると、容疑者は、5月29日午後2時30分頃から約20分間、3年の女子生徒(15)を、個別指導と称して1人で体育館に呼び出し、薄い服を着させてその姿をビデオカメラで撮影したとしている。
 大洲署が容疑者の勤務先のロッカーからビデオテープ数本を押収。撮影内容を分析した結果、昨年11月と今年3月に、同じ生徒に対して同様の行為を行っていることが確認されたという。

この辺の量刑は1罪か2罪かで分かれます。常習性も。

児童に対する準強制わいせつ罪1罪の科刑状況
地裁H19.12.13懲役2年06月執行猶予4年1罪13才
地裁H19.7.19懲役1年執行猶予4年1罪15才
地裁H19.3.14懲役3年執行猶予3年1罪12才
地裁H18.9.26懲役2年執行猶予3年1罪16才
地裁H16.1.29懲役6年実刑1罪17才
地裁H20.2.12懲役3年執行猶予5年1罪13才
地裁H20.2.6懲役1年06月執行猶予3年1罪
地裁H20.9.1懲役1年02月執行猶予3年1罪17才
地裁H19.3.27懲役3年執行猶予5年保護観察1罪11才
地裁H20.11.5懲役2年執行猶予4年保護観察1罪17才
地裁H20.7.11懲役2年執行猶予4年1罪14才

児童に対する準強制わいせつ罪2罪の科刑状況
地裁H12.2.23懲役3年執行猶予5年保護観察2罪14才
地裁H17.3.24懲役1年06月実刑2罪16才
地裁H19.7.11懲役3年06月実刑2罪13才
地裁H19.2.22懲役2年06月実刑2罪

起訴状一部通訳し忘れ、罪状認否やり直しへ

 これは日本語では朗読されたんですよね。手続きやりなおし。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100619-00000040-yom-soci
刑事訴訟法の定めでは、被告に日本語が通じない場合、起訴状の内容などを通訳した上で審理を進めなければならない。地裁によると、地裁が依頼したタガログ語の通訳人が初公判で、2通の起訴状のうち1通の翻訳文を忘れてきた。杉本正則裁判官の指示で、通訳人は日本語の起訴状を見ながら訳したが、公正証書原本不実記載・同行使事件の書面を読み忘れたという。
 杉本裁判官も気付かないまま、被告に「二つとも間違いないか」と質問し、被告は「間違いない」と認めた。裁判は即日結審し、判決期日は25日に決まった。
 公判後に報道機関からの指摘で発覚。ミスを確認した地裁は弁護人らと協議し、再び罪状認否を行ってから判決を言い渡すことにした。弁護人は「私もタガログ語は分からないので気付かなかった。反省している」と話している。 最終更新:6月19日15時8分

 京都地裁のN裁判官の事件で起訴状読み飛ばされたことがありました。後で弁護人が気づいた。
 共犯者Bの訴因が被告人の訴因を全部含む内容だった場合は、被告人について起訴状を読み飛ばしても構わないそうです。

阪高裁h17.10.28
第2 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の主張(控訴趣意書①「控訴理由第2」)について論旨は,原審の訴訟手続において,起訴状及び平成25年3月3日付け訴因変更請求書の朗読が行われておらず,同年3月23日付け訴因変更請求書のみが朗読されたが,同訴因変更請求書は原審における相被告人B(以下「B」という。)に対する訴因変更請求書であって,被告人に対するそれではなく,このような書面の朗読をもって被告人に対する起訴状及び訴因変更請求書の朗読に代えることは許されないから,原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのである。
そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも併せて検討する。被告人及びB両名は平成25年2月7日付けの1通の起訴状で起訴され,その後,被告人につき,同年3月3日付け訴因変更請求書(原判示2の事実中,別表2の番号3の事実の追加を内容とするもの)が,Bにつき,同月23日付け訴因変更請求書(原判示1の事実中,別表1の番号1の事実及び原判示2の事実中,別表2の番号3の事実の追加を内容とするもの)が提出されていたところ,第1回公判調書の記載によれば,同年3月25日に行われた第1回公判期日において,被告人及びBの各人定質問の後,検察官から両名に対する上記各訴因変更請求書に基づく訴因変更(追加)請求がなされ,これに対し両名の弁護人がそれぞれ異議がない旨述べ,上記各訴因変更が許可されたことが認められる。
その後の経過について,所論は,裁判官が「平成25年3月23日付け訴因変更請求書を朗読してください。」と述べ,検察官は同訴因変更請求書のみを朗読したもので,同訴因変更請求書はBに対する訴因変更請求書であって被告人に対するそれではないから,被告人に対しては,起訴状及び訴因変更請求書のいずれも朗読されていない,というが,仮に,所論のいうように被告人に対する起訴状及び訴因変更請求書そのものの朗読がなされなかったとしても,上記Bに対する平成25年3月23日付け訴因変更請求書の記載内容が,被告人及びB両名に対する各訴因を網羅した内容であったため,原審裁判所はそのことを検察官及び各弁護人に確認した後,公訴事実として,当該書面中の変更(追加)後の各訴因を検察官に朗読させることなどにより,被告人及びBに対する起訴状及び各訴因変更請求書の朗読をしたものと認められる。
なお,刑訴法291条によりいわゆる冒頭手続として検察官の起訴状朗読が要求されているのは,口頭主義,弁論主義の要請に基づき,公判廷において,まず審判の対象を上程させた上で,被告人の防御の目標を明らかにし,これを前提に実質的な審理を進行させようとするものであると解されるのであって,本件では,訴因変更請求書に変更後の訴因事実の全部が,しかもその明確性に何ら欠けるところがない程度に記載されているのであるから,人定質問の直後にこれが朗読されている以上,仮に,起訴状そのものの朗読が形式上なく,したがって罪名及び罰条の朗読がなかったとしても,判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反は存しない。論旨は理由がない。
大阪高等裁判所第6刑事部
裁判長裁判官陶山博生
裁判官杉森研二
裁判官杉田友宏

強姦罪・強制わいせつ罪が成立するときには青少年条例違反は成立しないはずですが。

 わいせつ行為については福岡高裁判例があります。
 青少年条例違反ではなく強制わいせつ罪後段・告訴なしだろうという主張です。

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20090929#1254120472
福岡高裁H21
法令適用の誤りの主張について
(1)弁護人は、
ア 13歳未満の者に対するわいせつな行為を刑法176条後段の強制わいせつ罪よりも軽く処罰する本件条例違反の罪は、憲法94条、地方自治法4条1項に違反し無効である、
イ 本件条例違反の罪は、刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であると解され、被告人の原判示第1の行為は同罪に当たるから、本件条例違反の罪を適用した1審判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある
と主張する。
(2)まず、アの主張については、刑法176条後段の強制わいせつ罪は、13歳未満の者の性的自由を保護するとともに、性的な情操を保護することによって、青少年の健全育成を図る趣旨であると解され、青少年の健全な育成を目的とする本件条例違反の罪とその趣旨を共通にする面を有しているが、他方で、たとえ13歳未満の者に対してわいせつな行為に及んだ場合であっても、行為者において、相手の年齢を13歳以上18歳未満であると誤信していたときは、刑法176条後段の強制わいせつ罪の故意を欠くため同罪は成立せず、本件条例違反の罪のみが成立することになる。

そして、このような場合について、13歳未満の者の保護を図っている刑法が、行為者を同法176条後段の強制わいせつ罪よりも軽い法定刑を定めた本件条例違反の罪で処罰することを禁止しているとは解されないから、本件条例違反の罪が憲法94条、地方自治法14条1項に違反し無効であるはいえない。


(3)次に、イの主張については、本件条例違反の罪が刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であるとしても、刑事訴訟法が採用する当事者主義的訴訟構造下では、審判の対象である訴因をどのように構成するかは、検察官の合理的裁量に委ねられているから、検察官は、13歳未満の者に対するわいせっな行為をした行為者について、事案の内容や立証の難易、その他諸般の事情を考慮して、刑法176条後段の強制わいせつ罪ではなく、本件条例違反の罪として訴因を構成して起訴することは当然許されると解される(なお、本件条例違反の罪は、強制わいせつ罪と異なり、親告罪ではないが、13歳未満の者に対するわいせつな行為の事案において、被害者やその法定代理人である親権者等が、被害者の名誉等への配慮から事件が公になることを望まず、告訴しなかったり、あるいは告訴を取り下げた場合に、検察官が行為者を本件条例違反の罪で起訴することは現実的には想定しがたいから、13歳未満の者に対するわいせつな行為を本件条例違反の罪として起訴することを許容しても、強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨が没却されるとはいえない)。

 補充関係なので、観念的競合にもなりません。

都職員が北海道で少女淫行
2007.09.13 共同通信
 北海道警士別署は十三日、道青少年健全育成条例違反の疑いで容疑者を逮捕した。
 調べでは、容疑者は三月二十一日午後二時ごろ、士別市内のホテルで、当時小学六年生だった少女(12)にいかがわしい行為をした疑い。
 少女とはインターネットの出会い系サイトで知り合ったといい、調べに対し「少女に会うため(北海道に)行った」と供述、容疑を認めているという。