児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪の保護法益は,単純に被害者個人の「性的自由」「被害者の羞恥感情」に尽きるものではない。「風俗」「倫理」も,その犯罪性に影響するといわざるを得ない。~日本大学大学院法務研究科教授前田雅英「行為者の性的意図の満足と強制わいせつ罪の成否最大判平成29年11月29日(裁判所Web)」捜査研究804号

 前田先生、結局わいせつの定義はどうなんでしょうか?

そして,④そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難いというのである。そのような意味で,本判決も,わいせつ性判断において主観的違法(構成要件)要素を考慮すべきだとしているのである
注2)
注3)。
ただ,わいせつ性が,主観を考慮するまでもなく明白な場合には,行為者の性的意図が欠けていても強制わいせつ罪は成立し得るとしたのであり,その範囲で昭年45年判例を変更したのである。
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確かに,強制わいせつ罪の保護法益は,単純に被害者個人の「性的自由」「被害者の羞恥感情」に尽きるものではない。「風俗」「倫理」も,その犯罪性に影響するといわざるを得ない。ただ,現代の日本社会では,本件のような行為を,性的満足を得る意思なしで行っても,処罰に値する法益侵害性が認められる。わいせつ傾向が欠け,その意味で「反倫理性の低い」被告人でも,「本件のような行為を故意に行えば,強制わいせつ罪は成立する」としても異論は少なくなったのである。


注3) この点,本件原審は, 「強制わいせつ罪の保護法益を純粋に個人の性的自由とみて,同罪の成立に犯人の性的意図を要しないと解釈した場合,①わいせつ行為の範囲は,被害者の性的意思決定の自由が害される行為として被害者個人によって主観的に定められることになり,極めて不明確となる,②性的自由を観念できない乳幼児に対する強制わいせつ罪が成立しないことになり,その保護に欠ける」という弁護士の主張に対して,「強制わいせつ罪におけるわいせつな行為の該当性を検討するに当たっては,被害者の性的自由を侵害する行為であるか否かを客観的に判断すべきであるから,所論①のように処罰範囲が不明確になるとはいえない。」としている。この判断は,大法廷の判断とは微妙に異なるのである。なお原審は, 「性的な事柄についての判断能力を有しない乳幼児にも保護されるべき性的自由は当然認められるのであり,その点で既に所論②は失当である上,犯人の性的意図の要否と乳幼児に対する強制わいせつ罪の成否とは特段関連する問題とは考えられないから,保護法益を純粋に性的自由とみて性的意図を不要と解釈すると乳幼児の保護に欠ける事態になるとの批判は当たらない。」としている。