児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

只木誠「住居侵入、強盗強姦の犯行において、姦淫の際の様子を記録したビデオテープは、刑法19条1項2号の犯罪行為の用に供した物に該当するが、同項3号の犯罪行為によって生じた物には該当しない〈とされた事例〉(東京高等裁判所平成22年6月3日判決)」

 保安処分的性格を強調して、供用物件。

http://www.tkclex.ne.jp/commentary/pdf/z18817009-00-070590687_tkc.pdf
 三 では、本件ビデオテープは、没収の対象とはならないのか。ところで、没収の趣旨、法的性質については、種々の理解があるが、本件ビデオテープが、被害者のプライバシー権を侵害し、社会に有害危険であることは顕然たる事実であり、これを没収することに刑事政策的利益が存することに疑いはない。判例および有力説は、「刑の変更」とは主刑の変更をいい、付加刑である没収の変更を含まないとしているところ16)、このように、「刑」の概念を制限的に解して、刑と付加刑の区別を維持する立場であれば、没収の対象である供用物件に当たるか否かの判断に際しては、没収の法的性質についての保安処分的性質を重くみて、没収の法的性質から導き出される「当該対象物から生じる社会的危険性」をも考慮に入れることも考えられよう。
もっとも、現在の多数説は、その範囲の拡大なども行為者にとって不利益であるとして、没収も付加「刑」であり、付加刑の変更も刑の変更であると解しており、したがって、没収の解釈にも罪刑法定主義の原則が及ぶと理解している。この立場からは、先のような解釈は採りえないことになる。
 とはいえ、供用物件とは、犯罪構成要件に該当する行為の遂行に現に使用した物をいい、これには、実行行為に使用した物のほか、「実行の着手前、あるいは実行の終了後に、実行行為を容易にし、あるいは逃走を容易にし、逮捕を免れ、その他犯罪の成果を確保する目的でなされた行為」に使用された物も、実行行為と密接な関係にある行為に使用された物として、これに含まれると、一定の幅をもって解されている17)。

判タの解説

【ID番号】 06520709
       住居侵入,強盗強姦,強姦致傷,強姦未遂,窃盗被告事件
【事件番号】 平成22年(う)第530号
【判決日付】 平成22年6月3日
【出  典】 判例タイムズ1340号282頁
上記の裁判例の傾向をも踏まえると,刑法19条1項3号の犯罪行為によって生じた物とは,当該犯罪生成物件の生成に向けられた犯行によって生じたものをいうものと解され,本件のビデオテープには強盗強姦の犯行の際の様子が記録されており,強盗強姦の犯行がなければ当該記録は存在するに至らなかったといい得るものの,強盗強姦行為はビデオテープに犯行の際の様子を記録することを本来の目的とするものではないから,犯罪行為によって生じた物には該当しないと思われる。
 なお,姦淫の際にその様子をビデオカメラで撮影することは被害者に対し心理的圧力を加えるものであるから,当該ビデオテープは,犯罪行為の用に供した物として,刑法19条1項2号を適用して没収することが可能であろう。この場合,強盗強姦罪が既遂になったにもかかわらず,機器の故障等の事情で犯行の様子が記録されなかったとしても,当該ビデオテープを没収することは可能と解され,この点からも文書偽造罪における偽造文書や児童ポルノ製造罪における児童ポルノ等とは事情を異にするといえる。