児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

罪数が減る方の裁判例

 国選弁護人から頼まれて集計しました。
 つなぎ合わせると、何やっても一罪になりますよね。普通の弁護人がうまく組み合わせられるか知りませんが。

  1. 児童買春罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)が観念的競合としている
  2. 児童買春罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)を観念的競合とした。「被告人上告」.
  3. 合計11名の児童に対する製造罪を包括一罪としている。製造罪と提供罪は牽連犯
  4. 児童2名の販売目的製造行為を包括一罪とした
  5. 被害児童4名への販売目的製造を一罪とした
  6. 児童買春罪と5項製造罪(不特定多数)が観念的競合。製造罪と提供罪は牽連犯にするなどして、結局、児童3名の児童買春罪と製造罪と提供罪が科刑上一罪となっている
  7. 児童淫行罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)は観念的競合
  8. 児童淫行罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)は観念的競合
  9. 弁護人は原審以来併合罪だから製造罪は管轄違となると主張し、高裁が児童淫行罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)は観念的競合という判断。被告人上告。
  10. 被害児童2名・2週間にわたる販売目的製造行為を一罪
  11. わいせつかつ児童ポルノのhddについて、提供と所持は科刑上一罪となる。
  12. 被害児童3名の陳列目的製造と陳列を包括一罪とするもの
  13. 被害者複数の製造罪を一罪としたもの
  14. 複数児童の3項製造罪(姿態とらせて製造)は1罪
  15. 複数児童に対する販売目的製造罪と販売罪は一罪
  16. 被害者2名の販売目的製造を包括一罪とした
  17. 児童5名の販売目的製造罪を単純一罪とする
  18. 被害者複数の製造罪を一罪としたもの
  19. 被害者複数の3項製造罪(姿態とらせて製造)について、単純一罪としたもの
  20. 被害者複数の3項製造罪(姿態とらせて製造)・2項製造罪(特定少数)について、単純一罪としたもの
  21. 被害者複数の3項製造罪(姿態とらせて製造)・2項製造罪(特定少数)について、単純一罪としたもの
  22. 3項製造罪(姿態とらせて製造)と児童淫行罪は観念的競合
  23. 3項製造罪(姿態とらせて製造)と児童淫行罪は観念的競合
  24. 青少年条例違反(淫行)と提供目的製造罪を観念的競合
  25. 児童淫行罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)を観念的競合とした
  26. 強制わいせつ罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)を観念的競合とした
  27. 強制わいせつ罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)を観念的競合とした

 強姦と3項製造罪が観念的競合になる日も近い?
 奥村がこういう判決を書かせたのではありません。探してきただけです。
 併合罪が原則ですが、併合罪でも一罪でもいいような宣告刑なのに、無理に観念的競合とか牽連犯にする必要はないです。

教育再生会議はフィルタリング義務化の方針

 あちこちで同じ話題を検討しているようです。
 こっちは被害者側で、ispとかは参加していないのですから、規制強化を求めていくようです。
 政府の審議会なのに、接点はないんですか?

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/education/62883.php
携帯有害サイト接続に法規制も 教育再生会議が検討(11/28 08:46)
 政府の教育再生会議野依良治座長)は二十七日、東京都内で合同分科会を開き、小中学生が使用する携帯電話について、有害サイトへの接続を制限する「フィルタリング機能」を付けるよう保護者に義務づけることを検討する方針を決めた。同機能の普及が進まない実態をふまえ、法的措置も含めて協議し、年内に取りまとめる第三次報告への盛り込みを目指す。

 携帯電話の出会い系サイトなどが、少女買春など犯罪の温床となっている現状をふまえた措置。フィルタリングは無料で利用できるが、電気通信事業者協会の調べでは九月現在、利用は携帯電話を持つ小中高生の約三割にとどまっている。同会議は携帯電話の機能を通話とメール、居場所確認の三つに限定するよう、保護者に働き掛けることも検討する。

 合同分科会では「モラル頼みでは状況は変わらない」と法的措置を求める声が出たほか、「まず親に自主的な対応を促すべきだ」などの意見もあった。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/goudoubunka/dai5/siryou03.pdf
2 インターネット上の違法・有害情報対策
【論点】出会い系サイト関連犯罪の被害児童が年間1,000人を超える現状を踏まえ
ると、出会い系サイトに係る児童の被害防止のための対策を見直す必要が
あるのでないか。
(参考1)教育再生会議第1次報告(平成19年1月24日)(抄)
7.「社会総がかり」で子供の教育にあたる
(4)社会全体の対応−有害情報から子供を守る−
【家庭自身がチェック、フィルタリングの活用、企業等の自主規制の一層の強化】
テレビ、インターネット、ゲーム、出版物から送り出される不用意な有害情報が子供の心を傷つけて、犯罪を助長させる要因の一つにもなっています。その大きな悪影響を見過ごすことは断じてできません。家庭、メディア、企業、販売業者は、子供を有害情報から守る責任があります。

違法サイト、実質「野放し」

 広島県警も、「有害」はともかく、「違法」は野放しじゃないですよね。
 やってんだけど、追いつかないのよ。
 見つけたら検挙して、自信がない法令適用で適当に量刑して、とにかく有罪にしていってます。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200711280093.html
違法サイト、実質「野放し」 '07/11/28
 ホームページ(HP)にわいせつ画像を掲示していた疑いで27日に逮捕された広島県立高校の男性教諭は、ネット上では会社員を装い、小学生の女児も性の対象と見ていた。表現の自由も影響し実質「野放し」となっている有害、違法サイト。摘発も容易でなく、監視強化や法規制の課題も浮かび上がった。

 有害、違法サイトについての通報を受け付けているインターネットホットラインセンター(東京都)によると、昨年6月からの1年間で、ネット上の9439件を違法情報と判断。うち児童ポルノやわいせつ画像が55%を占めていた。警察庁は来年度から違法、有害サイトの監視業務を民間委託し拡大する方針。総務省も有害情報の法規制を検討するなど、対策が進みつつある。

第三回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議はブラジル?

 来年。
 これまた遠いですね。事情も違うんでしょうね。

http://www.momken.org/newsarticle_en.php?item=4232
Next World Congress against Commercial Sexual Exploitation of Children in Brazil
The “3rd World Congress against Commercial Sexual Exploitation of Children” will be held in November 2008 in Brazil. The Government of Brazil has officially announced they are going to host the 3rd Conference after the Yakohoma

According to ECPAT International who is lead partner in mobilizing the participation of governments, children and civil society in the processes of the World Congresses, as a mechanism to maintain world focus and commitment for the fight against these crimes

最終的に金を払わなくても約束をしていれば児童買春は成立するという。

 援助交際少女にとっては、お金が性行為の重要な要素であって、お金がもらえると思って性交等したのにもらえなかったら、強姦されたようなものなんですが、強姦罪は成立しないそうです。

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/62857.php
 調べでは、容疑者は八月二十六日、携帯電話の出会い系サイトで知り合った同市内の女子中学生(14)から、別の女子中学生二人(いずれも十三歳)を紹介され、十八歳未満と知りながら、二人に二万−六万円を渡す約束をし同市内のホテルでいかがわしい行為をした疑い。
 容疑者は金を渡さなかったため、仲介した女子中学生が学校に相談し発覚した。最終的に金を払わなくても約束をしていれば児童買春は成立するという。

 「対償供与の約束」で足りるのです。

第2条(定義)
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
一 児童
二 児童に対する性交等の周旋をした者
三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者

児童買春罪の実行行為に「対償供与の約束」を含むのか、実行の着手は「対償供与の約束」の時なのか? 疑問があります。

弁護士会のホームページを活用した業務開拓(月刊大阪弁護士会2007.11月号p9)

 p9の「弁護士情報提供制度からの事件受任状況」によれば、検索件数としては、離婚、多重債務、交通事故、不動産、遺言相続、金銭貸借、一般刑事の順で、相談・受任につながった分野は、離婚と多重債務が多いとのことです。49期~59期は受任なし。
 結局若手の業務開拓にはつながっていないということでした。
 奥村も登録してみましたが、断る方が多いですね。

医学書の児童の裸体写真は「児童ポルノ」ではない。

 被害児童が低年齢の場合、こういうことを言ってみましょう。

 医学書の児童の裸体写真は「児童ポルノ」ではない。
 「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」には違いないが「性欲を興奮させ又は刺激するもの」ではないからである。
 これを児童ポルノとすると、医学文献は発禁されるから、表現の自由や学問の自由の不当な侵害となる。

第3条(適用上の注意)
この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。

 この点、京都地裁H12.7.17は撮影目的や販売方法を考慮すると判示しているが、これは不当である。「児童ポルノ性」というのは客体の要件であって「2条3項所定の物」は全部児童ポルノでなければならない。でないと、同じ写真が、あるときは医学書に掲載されて非児童ポルノとされ、あるときはアダルト雑誌に掲載されて児童ポルノとなることになって不都合であるからである。
 そういう刑法的判断手法に従うとすれば、医学書に掲載されているような構図であれば、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」ではないから児童ポルノには該当しないと言わなければならない。

製造行為一個説

 3項製造罪(姿態とらせて製造)の「姿態をとらせ」について、実行行為説と、複製の時点では不要説(最高裁)があるのですが、撮影から最終媒体までの一連の行為を1個の製造行為とすれば、整合できます。
 それを言い出してどうするのかは内緒です。
 大阪高裁H19.12.4で採用されました!

2 製造行為の一個性
 大阪高裁H14.9.10によれば、撮影行為とダビング行為は、別個の製造罪であって、別々に製造罪の要件が検討される。ただ犯意が同一・機会同一なら包括一罪となりうるという。

阪高裁 平成14年9月10日
③については,児童ポルノとは,「写真,ビデオテープその他の物」であって「視覚により認識することができる方法により描写したもの」であることを要するが,有体物を記録媒体とする物であれば,必ずしもその物から直接児童の姿態を視覚により認識できる必要はなく,一定の操作等を経ることで視覚により認識できれば足りるから,写真の場合は現像ないし焼付け等の工程を経てこれが可能になる未現像フイルムや現像済みネガフィルム(以下,撮影済み及び現像済みネガフィルムを「ネガ」という。)は,これに当たると解するべきであるから,本件の場合,児童ポルノ製造罪は撮影により既遂になると解するのが相当である。また,上記第1記載の児童ポルノの頒布,販売目的等による製造等を処罰することにした趣旨からみて,新たに児童ポルノを作り出すものと評価できる行為はいずれも製造に当たると解するのが相当であるところ,これを写真についてみてみると,上記のとおり児童ポルノ製造罪は撮影によって既遂となるが,現像,焼付けもまたそれぞれ製造に当たるものと解され,各段階で頒布,販売等の目的でこれを行った者には児童ポルノ製造罪の適用があり,ただ,先の行為を行った者が犯意を継続して彼の行為を行った場合には包括一罪となるものと解される。従って,本件では現像行為は不可罰的事後行為とはならないから,現像行為を製造とした原判決には法令適用の誤りはない(もっとも,原判決は撮影,現像を単純一罪とするものか包括一罪とするものか定かではないが,単純一罪とするものであるとしても判決に影響しない。)。

 しかし、これは、銀塩カメラの場合であって、デジタルカメラの場合、SDカードなど、カメラ内蔵の記録媒体に大量に溜め込んでいうことは希で、適宜、パソコンのHDDなど大容量の媒体に移して保存するのが通常である。SDカードの画像というのは短命なのである。
 銀塩カメラのネガは必ず永久に残るが、デジカメのSDカードの画像は残らないのである。
 だとすると、デジカメ利用の場合は、SDカードなどの中間媒体の存否にかかわらず、犯人の意図する最終媒体の生成に至る一連の所為が一個の製造行為であり、製造罪の単純一罪となるのである。(包括一罪説には反対する)
 このように理解して初めて、3項製造罪の「姿態とらせて」を実行行為と理解する判例(東京高裁H17.12.26、札幌高裁H19.3.8、札幌高裁H19.9.4)と、複製時には「姿態をとらせて」は不要であるとする判例名古屋高裁金沢支部H17.6.9、最高裁h18.2.20)とを整合することができるのである。
 つまり、これが現在の判例である。

 また、保護法益からも説明できる。
 3項製造罪(姿態とらせて製造)の趣旨が、画像の流出による法益侵害であるとすれば、製造犯人の意図は、児童ポルノであるHDDを製造することである場合に、短時間で
   撮影→SDカード→HDD
という複製過程があったとしても、SDカードが流出する危険がないから、SDカードについて独立した製造罪として評価する必要はないのである。