訴因が判決で訂正されることが多いようです。
ひとえに提供罪の構成要件についての理解が不十分で、過不足があるからだと思います。足りないと罪になりません。
逮捕拘留から起訴までの記録をみると、警察も検察官もわかっていない場合があります。
ある提供罪の訴因にメール送信までしか記載がないことがあって、弁論要旨で指摘したことがあります。警察は受信時既遂説で捜査しており、証拠上、受信されているのは明らかなので、起訴状の記載ミスでした。
第1 提供罪の既遂時期について
記録を拝見すると、提供罪の公訴事実は、送信行為までを記載して提供罪が成立するとの主張であると解される(送信時既遂説)。
他方、勾留状の被疑事実には受信者において受信した時点で既遂になると記載されている(受信時既遂説)。
ところで、一般には、児童ポルノ提供罪の提供とは「特定かつ少数の者に対する当該児童ポルノ等を相手方に利用しうべき状態に置く一切の行為をいい,有償・無償を問わず,必ずしも相手方が現に受領することまでは必要がない」と解されているので(福岡高裁那覇支部H17.3.1、島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08、島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」捜査研究04年08月号)、メール送信による場合には、受信側のメールボックス(受信者の携帯電話やpcではない。受信サーバー内にある)に入った時点で既遂となる。
これは民法における「意思表示の発信・到達」「履行の提供」の概念とも一致して、「提供」に関する常識的な見解である。とすると、勾留状の被疑事実は、(「提供」は充たすものの)受信側のメールボックスに入ってから受信者が受信したところまでの記載が余事記載・不可罰的事後行為であり、起訴状の公訴事実の記載は、送信後受信者のメールボックスに入るまでの記載がないので、提供罪を構成しない。