児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

破棄減刑(東京高裁H18.1.23)

今日もまた、

  • 児童買春罪→地裁
  • 児童福祉法違反(淫行させる行為)→家裁

というパターンで、家裁事件について破棄減刑判決。

 もとはといえば併合審理の利益を奪う少年法37条の存在(+移送を許さない刑訴法)がおかしいのですが、現行制度でそれを是正するため、、
   このパターンの場合は、
   とにかく控訴審で量刑の重複をチェックするから、
   控訴してよ。
というのが裁判所の姿勢でしょうか?

 要するに、2つの各一審裁判所は、もう一方の事件が見えないので、事件を併合した場合よりも重い量刑をしてしまうということですよね。家裁の方が地裁事件を引き取ればいいのにね。
 簡裁事件なら引き取れるようです。

鹿児島家庭裁判所判決昭和47年11月6日
(併合審判の理由) 本件児童福祉法違反被告事件と風俗営業等取締法違反被告事件は、当初当裁判所と鹿児島簡易裁判所に各別に係属していたのであるが、これを刑事訴訟法五条一項により併合審判することとしたのは、以下の理由による。
一 両事件は、刑法四五条前段の併合罪の関係に立ち、被告人としては、一括して審判される方が利益であり、現に被告人の弁護人から併合審判されたい旨の申出があつた。
二 両事件の証拠は、立証趣旨こそ異れ、大部分共通しており、併合審判により訴訟が著るしく遅延するおそれはなかつた。
三 家庭裁判所は、簡易裁判所の裁判に対する上訴事件を取り扱わず、簡易裁判所及びその職員に対する司法行政上の監督権も有しないので、簡易裁判所に対する関係で、刑事訴訟法五条にいわゆる上級の裁判所といえるかどうかについては若干疑義がないではない。しかし、家庭裁判所は、通常裁判所の系列に属する裁判所で審級上も司法行政上も最高裁判所及び高等裁判所に次いで地方裁判所と並んで第三階層に位し、しかも同列の地方裁判所が審級上も司法行政上も簡易裁判所に対し上級裁判所たる地位を有する関係にあるのであるから、通常は取扱事件にかかわりあいがないためと同列に地方裁判所があるために実際には簡易裁判所と上級下級の関係に立たないのであるけれども、その場合も抽象的論理的には簡易裁判所と上級下級の関係に立つているとみることは可能ではないかと思われ、現実に家庭裁判所の取扱事件と簡易裁判所の取扱事件とがかかわりあいを持つて来たような場合には正にその関係が現実化するとみてもよいのではないかと思われる。関連事件の管轄の併合や審判の併合は、被告人の利益のためと訴訟経済のために認められたものと考えられるが、その必要性は、家庭裁判所の事件と簡易裁判所の事件が関連する場合のうち少くとも一人が両事件を犯した場合については、地方裁判所の事件と簡易裁判所の事件が関連する場合とひとしく認められる。そして裁判所の構成のうえからみても、審級の利益の点でも、家庭裁判所簡易裁判所間で関連事件の管轄の併合や審判の併合を認めても、当事者の利益を害するおそれはないものと解せられる。
四 少年法三七条二項は、同条一項に掲げる罪とその他の罪がいわゆる科刑上の一罪の関係にある場合は少年法三七条一項に掲げる罪の刑で処断すべきときに限り全部を家庭裁判所に起訴しなければならない旨規定するが、その反対解釈として出て来るのは、右の場合にその他の罪の刑で処断すべきときには全部を通常の刑事裁判所に起訴することになるということだけであつて、少年法三七条二項は、右の両罪が併合罪の関係にある場合については全く触れていないとみるのが素直な解釈であり、右法条があるからといつて、右の両罪が併合罪の関係にある場合には常に家庭裁判所と通常の刑事裁判所に別々に起訴すべきであるとか審判の併合が許されないとか解すべきものではなかろうと思われる。
五 裁判所法上も、関連事件の併合管轄や併合審判の認められる場合は、同法三一条の三の二項により、家庭裁判所は、本来裁判権を有しない風俗営業等取締法違反被告事件についても裁判権を有することとなるものと解せられる。また、家庭裁判所は成人の刑事事件及びこれと科刑上一罪の関係ある事件につき裁判権を有し、科刑権の制限もないのであるから、この権限を成人の刑事事件と併合罪の関係にある事件にまで拡張しても、家庭裁判所の基本的性格に反する結果になるとは解せられない。