弁護人、よく調べてるなと思いました。
未成年者飲酒禁止法違反被告事件
宇都宮家庭裁判所栃木支部平成16年9月30日
主 文
被告人は無罪以上を総合して考察すると,法1条2項の「親権者ニ代リテ之ヲ監督スル者」とは,親権者や親権代行者のように,未成年者に対する監督権限や義務が法定されていなくても,親権者らが欠けたり,親権者らがいても何らかの理由で未成年者を監督できないときに,親権者に準じて一般的,包括的に未成年者を監督すべき立場にある者が,これに当たると解するべきであり,その監督権限の由来は,必ずしも法律上の義務である必要はなく,親権者や親権代行者から契約等によって依頼されたり,あるいはそのような依頼がなくても,事実上親権者らに代わって未成年者を手元に引き取り,同居させるなどして,日常一般的,包括的にこれを監督する者などが,これに当たると解するのが相当である。
そこで,例えば,親に代って実弟を監督している同居の兄等は,親権者が遠隔地等にいて,当該未成年者を事実上監督できず,親権者からその監督を託されている場合と考えられるから,これに該当する典型的な場合の1つであると認められる(前掲福岡家庭裁判所久留米支部判決参照。ただし,同判決が,単なる甥をも監督すべき未成年者に含ませている(と読める)点は疑問である。)。また,寄宿舎の舎監(前掲・安西「改訂特別刑法4」155頁),住込店員の雇主(3訂版「犯罪事実記載の実務『特別法犯Ⅰ』85頁」近代警察社参照),内弟子を指導する各種の師匠,地方から出てきた親類,知人等の子を預かって都会の家に同居させ,面倒を見ている者(前掲第14回帝国議会衆議院「幼者喫煙禁止法案審査特別委員会速記録第2号」における根本正委員の答弁参照)等も,親権者らが未成年者を日常監督できない場合であるから,同様と解される。さらには,親権者が欠けて未成年後見人が選任されるまでの間,事実上未成年者を同居させて面倒を見ている親族等(弁護人も例外的な場合としてこれを認めている。),あるいは,家出中の未成年者や孤児を事実上同居させて世話をしている者等も,場合にもよるが,これに含まれ得ると解されるのである。
ただし,ここで問題とされている監督の内容は,あくまでも未成年者の飲酒を制止するという,未成年者の生活面に関する一般的,包括的なものでなければならないから,監督内容としてそれを含まないような場合は,法1条2項の「親権者ニ代リテ之ヲ監督スル者」には該当しないというべきである。