児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項児童ポルノ製造罪の訴因特定について(名古屋高裁金沢支部H17.6.9)

法文3項製造罪

第7条(児童ポルノ提供等)
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。


起訴状

公訴事実
被告人は,被害児童Tが18歳に満たない児童であることを知りながら
第1同女に対し,児童買春をし
第2 上記性交の場面等をデジタルビデオカメラで撮影するとともにデジタルカメラで撮影することにより,児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるミニディスク3本及びメモリースティック3本を製造したものである。

原判決

罪となるべき事実
被告人は
第2
Tが18歳に満たない児童であることを知りながら
1 同女に対し,児童買春をし
2 上記性交の場面をデジタルビデオカメラで撮影するとともにデジタルカメラで撮影することにより,児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるミニディスク3本及びメモリースティック3本を製造したものである。

弁護人の主張

控訴理由
訴因不特定(ミニディスク及びメモリースティックにつき構成要件「姿態をとらせる」に該当する事実が全く記載されていない
 原判決の認定事実には「姿態をとらせ」が記載されていない点で犯罪を構成しない。にもかかわらず無罪判決をせず有罪をした原判決には、訴訟手続の法令違反がある。
 3項製造罪の裁判例を参照しても特定に欠ける。

大阪地裁堺支部h16.12.15
罪となるべき事実
第1 aとの買春
第2 
前記日時場所において
デジタルカメラを使用して前記性交場面、前記aにその陰部を露出させる姿態をとらせた場面及びその胸部陰部を誇示した全裸半裸の姿態をとらせた場面を撮影記録することにより児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部一部を着けない児童の姿態であっ性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるコンパクトフラッシュ1個の電磁的記録媒体を製造した

岡山地裁H16.12.14
第1 買春B子
第2 製造 
 前同日午後4時ころ、同所において、同児童B子に対し、全裸で股間を開かせるなどして同児童の性器等をデジタルカメラで撮影してメモリスティックに記録蔵置し、もって、3号児童ポルノを電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、同児童に係る児童ポルノを製造した

高岡簡裁略式命令H16.10.1
公訴事実
第1(児童買春)
第2(児童ポルノ3項製造罪)
前記日時場所において
1 前記児童Aの乳首をさわる場面及び同児童にその胸部を露出させる姿態をとらせた場面を
2 児童Bが18才に満たない児童であること知りながら同児童にその陰部臀部を露出させる姿態をとらせた場面及び同児童にその陰部を触らせる場面を
それぞれ撮影記録することにより、他人が児童の性器等をさわる行為または児童が他人の性器等をさわる行為に係る児童の姿態であって、性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を付けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識できる方法により描写したデジタルビデオカセット1本の電磁的記録媒体を製造し、もって、児童ポルノを製造したものである。

名古屋簡裁h16.12.10
被告人は(人名)が18才に満たない児童であることを知りながら、
何月日(場所)において
同児童に全裸又は半裸でその陰部を露出させる姿態をとらせ
これをデジタルカメラで撮影してコンパクトフラッシュに記録し、
もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法による電磁的記録にかかる媒体に描写し、当該児童にかかる児童ポルノを製造したものである。
7条3項、1項 2条3項3号

熊本地裁H16.12.21
3項製造罪
デジタルカメラ並びに携帯電話機のカメラ機能を使用し
同児童に・・・などさせた
衣服の一部または全部をつけない児童の姿態であって性欲を興奮させまたは刺激するもの(3号児童ポルノ)を撮影しその姿態を視覚により認識することができる電磁的記録であるxDピクチャーカード1個および携帯電話の内蔵記憶装置に描写し、もって同児童に係る児童ポルノを製造した

和歌山地裁H17.1.25
第5 3項製造罪 被害児童ABC
児童ABCに、
対償として現金供与の約束をして(金額不特定)
被告人が児童らの性器を触れる行為及び衣服の全部を着けない姿態であって性欲興奮・刺激するものを
をとらせ、これをビデオで撮影してビデオカセットに記録して描写することにより、
児童ポルノを製造した。

松江地裁H17.3.2
第2 H15.11 買春 性交 児童B
第3 H16.9 3項製造 児童B
Bが児童であることをしりながら
同児童に対し、
全裸で股を開かせるなどして同児童の性器等をデジカメで撮影し
その記録を同カメラのCFに記憶させ
もって
同児童にかかる児童ポルノ(3号児童ポルノ)を製造した

検察官の主張

検察官答弁書
控訴理由第11及び第12の主張について
所論は,公訴事実第2の2の事実において「姿態をとらせる」に該当する事実が全く記載されておらず,訴因不特定であるにもかかわらず,実体判断をした原判決には訴訟手続の法令違反があるというものである。
しかしながら,本件においては,被告人自身が被害児童と性交するなどして児童買春をし,その場面をデジタルビデオカメラ等で撮影したものであり,性交するなどに当たり,被告人の言動等により,当該児童が当該姿態をとったことは容易に理解でき,「姿態をとらせる」の文言が記載されていないからといって直ちに訴因が特定されないというものではないことは明らかである。
よって,論旨は理由がない。


 控訴理由は学問の香り高い内容なんですが、
 法廷ではこういうやりとりがありました。

弁護人
 甲138の写真では、スカートはめくれておりますがパンツはちゃんとはいているので、『衣服の一部または全部をつけない姿態』ではありません。事実誤認です。パンチラは児童ポルノではない!

検察官
 確かにパンツははいておりますが、単なるパンチラではなく、異常にくい込んでおります。『衣服の一部または全部をつけない姿態』であります!控訴の趣意は理由がない!

弁護人
 甲139の写真では、児童の口は男性の性器にぎりぎり触れておりません。『児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態』ではありません。事実誤認です。

検察官
 確かに児童の口は男性の性器にぎりぎり触れておりませんが『児童が他人の性器等を触る行為』の一環であります。控訴の趣意は理由がない!