児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春の相手方となった方、児童ポルノに描写された方(被害者)のために

1 児童ポルノ・児童買春(援助交際)の被害
 法律の世界では、児童ポルノ・児童買春は、児童に対する性的虐待・性的搾取と考えられています。
 その被害は、児童自身が将来健全に成長する権利が侵害される、将来的に身体的・精神的影響(後遺症)が残るという点にあって、一時の被害感情ではありません。

 児童から働きかけた、勧誘・誘引したという場合でも、児童が承諾したという場合でも、同じです。

 また、常習的に援助交際を行っている場合には、今後の援助交際を阻止する必要があります。
 例え話でいえば、往来の激しい道路をふらふらと歩いて、あっちでぶつかり傷を負い、こっちでぶつかり傷を負いという状況であって、1回毎の被害は重くないかも知れないが、実は「満身創痍」で重傷・重体となっているのかもしれません。

 したがって、このような行為に関与している児童を発見した場合には、直ちにやめさせて、安全な場所に保護します。
 次いで、それまでの行為による被害を治療しなければならない。
 それから、加害者の処罰です。

2 保護
 児童と加害者の間には、加害者の甘言によって擬似恋愛感情が生まれていることがあり、児童が加害者のもとに戻ることがあります。
 加害者が執拗に児童の所在を探索してくる場合には、シェルターの活用も考えるべきです。

 また、常習的に援助交際を行っている場合には、今後の援助交際を阻止する必要があります。
 例え話でいえば、往来の激しい道路をふらふらと歩いて、あっちでぶつかり傷を負い、こっちでぶつかり傷を負いという状況であって、1回毎の被害は重くないかも知れないが、実は「満身創痍」で重傷・重体となっているのかもしれません。

 なお、公的機関に保護を求める場合には、注意する必要があります。同法15条には「関係行政機関による児童の保護」が規定されていますが、警察庁都道府県警察に照会しても、警察が、同法15条にもとづいて児童を保護した前例はこれまで聞いたことがありません。すべて「非行少年」として処理されていると思われます。

 警察庁及び各都道府県警察によれば、警察は、児童ポルノ・児童買春の被害者を統計上カウントしていますが、保護した被害者の統計はありません。

児童ポルノ・児童買春被害者救済の実態
警察庁の統計
被害者数は認知しているが、被害者保護の件数は認知していない。
「平成12年の犯罪」から 被害者総数963。
「平成13年の犯罪」から 被害者総数1389。

 厚生労働省の資料でも被害者が犯罪少年・虞犯少年として「家裁送致」されている例があります。 

3 被害回復
 児童買春児童ポルノの被害の具体的内容については研究が進められていますが、多かれ少なかれ、児童の心身に有害な影響を受けていることは否定できません。
 しかも、被害者が「被害」を意識している場合はもちろん、被害者本人が意識していなくても、将来の人格形成に影響がある可能性もありますから、まず最初に専門機関(児童相談所等)の相談・診断を受けることが必要です。

児童ポルノ法第15条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
1 関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。

4 損害賠償
 児童買春・児童ポルノ犯人に対しては、損害賠償請求をすることが可能です。
 被害者が承諾していても同じです。
 もっとも、被害者の承諾・被害者の積極的関与は、過失相殺事由として考慮されることがあると考えます。
 具体的には犯人・弁護人に対して連絡してください。
 ただし、弁護人は被告人の利益を守る立場にありますから、あなたの利益を最大限守るためには、あなたも弁護士を依頼することをおすすめします。各弁護士会には、被害者救援窓口があります。
 
  加害者の刑事訴訟記録を活用してください。

5 警察への届出
 加害者の行為が犯罪になる場合は警察に届出て処罰を求めることも考えられます。
 ただし、この種犯罪は、児童が連携して(紹介しあっているなど)いることが多いので、届け出た児童が児童買春の共犯として被疑者として扱われるおそれがあります。最悪の場合、逮捕されることもあります。

 同法15条には「関係行政機関による児童の保護」が規定されていますが、警察庁都道府県警察に照会しても、警察が、同法15条にもとづいて児童を保護した前例はこれまで聞いたことがありません。すべて「非行少年」として処理されていると思われます

第15条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
   関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。

 したがって、警察への届出に先立って、弁護士に相談されることをお勧めします。

 また、実際の被害状況によっては、実は、児童ポルノ・児童買春にとどまらず、児童福祉法淫行罪、強姦罪、強制わいせつ罪等の重大犯罪の被害者であることもありますが、児童ポルノ・児童買春罪が成立する場合には、警察が事件を矮小化して、簡単な児童ポルノ・児童買春罪でのみ処理しようとする傾向が見受けられます。
 性犯罪は、刑事訴訟自体が被害者の負担となることがありますが、証人保護については制度が整備されています。正しい罰条を適用してもらわないと、被害の全体が評価されず、泣き寝入りの部分が残ります。被害の回復、社会秩序の回復、犯人の再犯防止の点でも問題が残ります。
 したがって、この点でも、まず弁護士への相談・アドバイスが必要です。

6 警察での事情聴取
 事情聴取の内容の一部を紹介しています。
 児童やその保護者にとっては、大変恥ずかしい内容を細かく聞かれることになります。
 警察では、女性警察官を担当させたり被害者への配慮も進んでいますが、不慣れな警察の場合は、およそ児童ポルノ・児童買春とは関係がない・必要がない事項まで質問していることもあります。
 この点でも弁護士のアドバイス・付き添いを検討して下さい。


7 刑事訴訟における被害者の地位
 犯罪被害者としての諸規定があります。
 児童ポルノの場合は特に、ビデオリンクによる証人尋問の制度があります。

刑事訴訟法第157条の2〔証人の付添人〕
裁判所は、証人を尋問する場合において、証人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、その証人の供述中、証人に付き添わせることができる。
(2)前項の規定により証人に付き添うこととされた者は、その証人の供述中、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。
第157条の3〔証人尋問の際の証人と被告人・傍聴人との間の遮蔽措置〕
裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が被告人の面前(次条第一項に規定する方法による場合を含む。)において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、被告人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。ただし、被告人から証人の状態を認識することができないようにするための措置については、弁護人が出頭している場合に限り、採ることができる。
(2)裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。
 
 
第157条の4〔ビデオリンク方式による証人尋問〕
裁判所は、次に掲げる者を証人として尋問する場合において、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所以外の場所(これらの者が在席する場所と同一の構内に限る。)にその証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、尋問することができる。
二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第四条から第八条までの罪の被害者
 
第292条の2〔被害者等の意見の陳述〕
裁判所は、被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹。以下この条において「被害者等」という。)から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。
(2)前項の規定による意見の陳述の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
(3)裁判長又は陪席の裁判官は、被害者等が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、当該被害者等に質問することができる。
(4)訴訟関係人は、被害者等が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、裁判長に告げて、当該被害者等に質問することができる。
(5)裁判長は、被害者等の意見の陳述又は訴訟関係人の被害者等に対する質問が既にした陳述若しくは質問と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、これを制限することができる。
(6)第百五十七条の二、第百五十七条の三及び第百五十七条の四第一項の規定は、第一項の規定による意見の陳述について準用する。
(7)裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。
(8)前項の規定により書面が提出された場合には、裁判長は、公判期日において、その旨を明らかにしなければならない。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、その書面を朗読し、又はその要旨を告げることができる。
(9)第一項の規定による陳述又は第七項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。
 
犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律
第2条(公判手続の傍聴)
刑事被告事件の係属する裁判所の裁判長は、当該被告事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)又は当該被害者の法定代理人から、当該被告事件の公判手続の傍聴の申出があるときは、傍聴席及び傍聴を希望する者の数その他の事情を考慮しつつ、申出をした者が傍聴できるよう配慮しなければならない。
第3条(公判記録の閲覧及び謄写)
刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、当該被害者等の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合その他正当な理由がある場合であって、犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができる。
2 裁判所は、前項の規定により謄写をさせる場合において、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
3 第一項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は、閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。
第4条(民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解)
刑事被告事件の被告人と被害者等は、両者の間における民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る。)について合意が成立した場合には、当該被告事件の係属する第一審裁判所又は控訴裁判所に対し、共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
2 前項の合意が被告人の被害者等に対する金銭の支払を内容とする場合において、被告人以外の者が被害者等に対し当該債務について保証する旨又は連帯して責任を負う旨を約したときは、その者も、同項の申立てとともに、被告人及び被害者等と共同してその旨の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
3 前二項の規定による申立ては、弁論の終結までに、公判期日に出頭し、当該申立てに係る合意及びその合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実を記載した書面を提出してしなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による申立てに係る合意を公判調書に記載したときは、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。

8 児童ポルノの回収
 
 児童ポルノ製造罪・陳列罪・所持罪の場合は犯人(被告人)に、販売罪の場合は犯人+購入者に対して、児童ポルノの回収・譲渡禁止を求めます。
 児童買春の場合でも、犯人が写真・ビデオを撮影している場合があり、後日公開されたり流通したりするので、それらの回収の必要があります。

 場合によっては、弁護人と連絡をとって、購入者を被告人の刑事事件の証人として尋問して、法廷で回収・譲渡禁止を誓約させるのも有効だと考えます。
 
9 証拠物の破棄
 押収された児童ポルノは、検察官が保管しており、刑事裁判が確定すると破棄されます。
 児童ポルノに描写された方は、児童ポルノの破棄に立ち会うことができます。

平成12年12月8日
法務省刑事局
 被害者のプライバシーにかかわる証拠品の廃棄について(依命通達)
  没収等の事由により国庫に帰属した被害者のプライバシーにかかわる証拠品に関しし,近時,刑事事件の終結後,検察庁において確実に廃棄されたかどうかにつき,被害者が強い関心を抱く場合があることが指摘されているところ,被害者保護の観点から,これらの証拠品について,今後,下記の取扱いに沿った運用を実施することとしたので,その適正な運用に配意願います。 
1 証拠品の廃棄への立会いの機会を被害者等に与えることについて
 没収等の事由により国庫に帰属した被害者のプライバシーにかかわる証拠品について,被害者,その親族若しくはこれに準ずる者又は弁護士であるその代理人(以下「被害者等」という。)から申出があり,検察官において,被害者等に対し,証拠品の廃棄への立会いの機会を与えるのが相当と認める場合には,証拠品の廃棄日時,場所を通知してその機会を与えるものとする。

10 児童ポルノ陳列の禁止
 インターネット上であなたが描写されている児童ポルノを見つけたときは、プロバイダーに対して、削除等「権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずること」(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律3条)を求めることができます。
 
11 被告人・犯人の弁護人との対応について
 被告人・犯人に弁護人がついている場合があって、被害弁償(いわゆる「示談」)等のために被害者に連絡を取ることがあります。
 性犯罪ですので、弁護人からの連絡を受け付けるかどうか、示談交渉をするかどうか、示談に応じるか否かは、被害者側で慎重に判断して下さい。

 「弁護人」は弁護士ですが、このときは被告人・犯人の利益を図る業務に従事しており、被害者側の利益を図る立場にはありません。したがって、「弁護人」に色々質問されても、被害弁償に必要な範囲を超えて教えることはできませんので、有益な回答は得られません。 これは「弁護人」の立場上やむを得ないことです。
 刑事手続における被害者の権利を最大限に行使するためには、被害者側も弁護士を依頼することをお勧めします。

 なお、高校や私立中学の場合、援助交際児童(児童買春被害)は「問題行動」を理由にして自主退学させられる事が多いそうです。性犯罪の被害者が退学処分というのは弁護士としては理解に苦しむところです。
 もし、そういう処分を受けそうになった時・そういう処分に納得がいかない場合には、弁護士に相談すべきです。