http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20040807#p2
の続き。
児童ポルノに被害者が観念できるかというのは、個人的には肯定すべきだと思うんですけど、警察統計では、
検挙件数73件
被害児童35件
ということで、被害児童がいない事件が1/2くらいあるようです。
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen19/syounengaiyou1601-06.pdf
児童ポルノ事件は、検挙件数は73件(同21.5%減、検挙人員48人(同36.0%減)といずれも減少した。児童ポルノ事件の被害児童数は35人(34.6%増)といずれも増加した。
実は、細かい統計を取りよせてみると、警察は、製造罪についてのみ被害者をカウントしているようです。統計上、販売罪頒布罪においては被害者はいない。
法律上は、「児童ポルノ頒布等の行為がが児童の心身の成長に重大な影響を与える」ことになっていますが、ビデオ等に描写されている児童の姿が警察には見えないようです。
(教育、啓発及び調査研究)
第十四条 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの頒布等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
第十五条 関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
第十六条 国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。
全ての児童ポルノ罪について被害者を観念するのが児童ポルノ罪個人的法益説なんですが、判例上、「奥村弁護士独自の見解」と認定されています。判例は児童ポルノ罪一般について被害者を観念しない。
これには立法者も意外だったようで、奥村弁護士からは「立法技術が未熟だ」とか「立法者は頭が悪い」などと批判され、控訴趣意書でも攻撃されたところで、改正法でも、「『の擁護に資する』を『を擁護する』に改める。」という体裁で、被害者性が強調されています。
これじゃまだわからんわけで、なおも奥村弁護士は「立法技術が未熟だ」とか「立法者は頭が悪い」などと批判します。
条文の体裁として「児童に対して・・・」「児童を・・・」という形にしないと裁判官には理解できない。
面と向かって、国会議員に「立法者は頭が悪い」というのも勇気がいる話ですが、児童ポルノ罪による被害者が救済されない実態と、立法技術の拙さで児童ポルノ罪の被害者の存在を隠ぺいしてしまった責任を考えると、100回くらい「立法者は頭が悪い」と連呼しても平気です。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律
第一条中「かんがみ」の下に「、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ」を加え、「の擁護に資する」を「を擁護する」に改める。
改正前
第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資することを目的とする。
↓
改正後
第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。