児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(強姦罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例違反)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

性的意図は強制わいせつ罪(176条後段)の構成要件である(大阪高裁H29.6.2)

 必要説に戻った。
 不要説の大阪高裁H28.10.27があるので「わいせつ行為しようと企て」は要らないという判決かなと期待していました

性的意図必要説
?広島高裁h23.5.26
?東京高等裁判所H28.2.19
?広島高裁岡山支部H22.12.15
?福岡高裁h26.10.15
?東京高裁h13.9.18
?大阪高裁H29.6.2
。。。
性的意図不要説
阪高裁H28.10.27

阪高裁H28.10.27
(2)ところで,強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由と解され,同罪は被害者の性的自由を侵害する行為を処罰するものであり,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,強制わいせつ罪が成立し,行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないと解すべきである。
その理由は,原判決も指摘するとおり,犯人の性欲を刺激興奮させ,または満足させるという性的意図の有無によって,被害者の性的自由が侵害されたか否かが左一右されるとは考えられないし,このような犯人の性的意図が強制わいせつ罪の成立要件であると定めた規定はなく,同罪の成立にこのような特別な主観的要件を要求する実質的な根拠は存在しないと考えられるからである。
そうすると,本件において,被告人の目的がいかなるものであったにせよ,被告人の行為が被害女児の性的自由を侵害する行為であることは明らかであり,被告人も自己の行為がそういう行為であることは十分に認識していたと認められるから,強制わいせつ罪が成立することは明白である。
以上によれば,強制わいせつ罪の成立について犯人が性的意図を有する必要はないから,被告人に性的意図が認められないにしても,被告人には強制わいせつ罪が成立するとした原判決の判断及び法令解釈は相当というべきである。
当裁判所も,刑法176条について,原審と同様の解釈をとるものであり,最高裁判例(最高裁昭和45年1月29日第1小法廷判決・刑集24巻1号1頁)の判断基準を現時点において維持するのは相当ではないと考える。

大阪高等裁判所
平成29年6月2日
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書に記載のとおりであり,論旨は,理由不備及び量刑不当の主張である。
第1 理由不備の主張について
1 論旨は,要するに,原判示第1の強制わいせつの事実について,その「罪となるべ
き事実」として, 「わいせつ行為をしようと企て」という被告人の性的意図を摘示する必要があるのに, この点を摘示していない原判決には理由不備の違法がある, というのである。
2有罪判決を言い渡すに当たって示さなければならない罪となるべき事実(刑訴法335条1項)とは,刑罰法令各本条における犯罪の構成要件に該当する具体的事実をいい,これを示すには,その各本条の構成要件に該当すべき具体的事実を当該構成要件に該当するか否かを判定するに足りる程度に具体的に明白にし,その各本条を適用する事実上の根拠を確認できるようにすることをもって足りると解される(最高裁判所昭和24年2月1
0日第一小法廷判決・刑集3巻2号155頁参照) 。これを本件についてみると,原判示第1の罪となるべき事実の記載は,当時○歳の被害児童(男児)に対し, 「13歳未満であることを知りながら,同人に対し,その陰茎を手淫及び口淫するなどし」たというものであり,その外形的行為自体から,被告人が自己の性的欲求を満足させるという性的意図を持って行ったことが強く推認される上,その末尾に「もって13歳未満の男子にわいせつな行為をした」として,被告人の行為が刑法176条後段の強制わいせつ罪に該当する旨の評価的な説示もなされているから,所論のいうような「わいせつ行為をしようと企て」との文言がなくとも,原判決は,性的意図の点も含めた強制わいせつ罪の構成要件該当事実を欠けるところなく摘示しているといえる。したがって,原判決に理由不備の違法はない。
論旨は理由がない。