こういう訴因が併合罪で起訴された場合の主張。
1 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,提供の目的で,同児童の前記1の姿態及び同児童が陰部・乳房を露出した姿態を自己の使用する携帯電話機付属のデジタルカメラで撮影し,その電磁的記録を同携帯電話機に装着した電磁的記録媒体であるmicroSDカードに記録させ,もって,児童を相手方とする性交類似行為にかかる児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為にかかる児童の姿態及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録媒体である児童ポルノを製造し
2 Pに対し,児童を相手方とする性交類似行為にかかる児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為にかかる児童の姿態及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録媒体である児童ポルノの画像データ合計4個を,自己のパーソナルコンピュータから電気通信回線を通じてP使用のパーソナルコンピュータに送信し,もって,児童ポルノを提供したものである
これは主張した人はいないが、理論的には有力説。
2 提供目的製造罪と提供罪
牽連犯の要件である抽象的牽連性と具体的牽連性を満たすから牽連犯である。
条解刑法第2版p198
裁判例コンメンタール刑法第1巻P493
3 牽連犯とする裁判例
裁判例を挙げる
奈良地裁H18.1.13*1
さいたま地裁熊谷支部H18.2.9*2
富山地裁高岡支部H19.4.11*3
さいたま地方裁判所川越支部H20.3.11
東京高裁H20.8.13
牽連犯としたさいたま地裁川越支部判決の法令適用を東京高裁が追認している。
さいたま地方裁判所川越支部H20.3.11*4
◇科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段・後段,10条(判示第3の児童ポルノ提供とわいせつ図画販売,児童ポルノ提供目的所持とわいせつ図画販売目的所持は,それぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,判示第2の児童ポルノ製造と判示第3の児童ポルノ提供・わいせつ図画販売,児童ポルノ提供目的所持・わいせつ図画販売目的所持との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を一罪として刑及び犯情の最も重い児童ポルノ提供目的所持の罪の刑で処断)
東京高等裁判所H20.8.13*5
6 法令適用の誤りについての職権による指摘
原判決には,(1)原判示第2の事実について,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条5項前段,4項前段を適用すべきところを,同法7条5項前段しか適用しなかった点,(2)原判示第3の事実中,児童ポルノ提供及び児童ポルノ提供目的所持について,7条5項前段、4項前段を適用すべきところを,同法7条5項前段,4項後段を適用した点,(3)原判示第2と原判示第3の罪を牽連犯とした上で,原判示第3の児童ポルノ提供目的所持の罪の刑で処断するとしたにもかかわらず,原判示第2の刑種の選択をした点,(4)主文で没収を言い渡したにもかかわらず,その根拠法条を摘示しなかった点で,法令適用の誤りがあるが,これらはいずれも判決に影響を及ぼすことが明らかな誤りとはいえない。
2 児童ポルノ法には刑法8条にいう「特別の規定」がないこと。
牽連犯は刑法第1編54条に根拠があり、提供目的製造罪と提供罪とが「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるとき」に当たることも明白である。
しかも、児童ポルノ法には刑法8条にいう「特別の規定」がない。
刑法
第8条(他の法令の罪に対する適用)
この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。
従って、両罪が牽連犯となることは明かである。