児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

仙台高裁が不適法と判断した控訴理由

 数件起訴されているので無罪にはならないのですが、3件が訴因不特定で公訴棄却になると宣告刑は7年程度下がるはずです。これが不適法というはおかしい。

控訴理由 訴訟手続の法令違反(訴因不特定)・法令適用の誤り
1 はじめに
 裁判所は撮影行為について強制わいせつ罪と3項製造罪の成立を認めるのであれば、罪数処理は避けられない問題である。併合罪であるから、観念的競合とした原判決には法令適用の誤りがあるから破棄を免れない

 さらに、本件の判示第2〜4では、本来併合罪の関係にある強制わいせつ罪の事実と3項製造罪の事実が混然一体として記載されている。
 本件は、本来併合罪とされるべき数罪が混然と一罪として起訴されているのであるから、このこと自体訴因の特定を欠くと言わざるをえない。
 本件公訴自体が刑訴法256条3項に違反して違法無効であるから、原裁判所は公訴棄却(338条4号)すべきであった。
 にもかかわらず、実体判決をした原判決には訴訟手続の法令違反があるから原判決は破棄を免れない。

 さらに、漫然、不特定な事実を認定判示した点で、審理不尽と言うべきであって、この点でも訴訟手続の法令違反がある。

 さらに、実務の大勢は性犯罪とそれに伴う製造行為は併合罪であるのに、本件でのみ観念的競合とするのは法適用上の平等(憲法14条1項)に反するから、その意味でも法令適用の誤りがある。

 なお、弁護人は併合罪の主張をするが、併合罪加重を行えという趣旨ではない。宣告刑期については不利益変更禁止(402条)があるので観念的競合→併合罪の罪数処理の変更の主張は被告人には不利益な主張とはならない。
 そもそも適法な訴訟手続で裁かれることこそ被告人にとって最大の利益であるし、被告人控訴事件であるから、破棄されれば法定通算などの点で被告人に有利な結果となる。