児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

海外の児童ポルノ・アドレス掲載、19歳私大生ら摘発

 リンクとかアドレス掲載も公然陳列罪。
 いよいよそういう動きですね。
 しかし、そんな条文ないのに、50万円は大金なのに、被疑者も弁護人も疑問に思わないんでしょうかね。地裁で有罪の裁判例があって、奥村が捜査弁護を担当した事件は起訴猶予で。
 いきなり逮捕されて小田原か・・・。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090708-00000078-yom-soci
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090708-OYT1T00078.htm
 捜査関係者らによると、男2人は昨年9月と今年2月、掲示板に海外の動画サイトの児童ポルノに接続するアドレス計11点を掲載し、不特定多数に閲覧させた。2人とも同法違反罪などで罰金50万円が確定している。
 少年は昨年8月、児童ポルノサイトのアドレスが掲載されることを知りながら、この掲示板を開設した疑い。調べに対し、「犯罪になるとは思わなかった」と話しているという。
 甲南大法科大学院園田寿教授(刑法)は「国内の掲示板からの有害な海外サイトへのリンクを摘発したことは、警鐘を鳴らした点で意義がある」と話している。

この問題は
 1 リンクは犯罪(公然陳列罪(幇助))か?
 2 リンクは犯罪だとして、リンクさせずにurlを掲載する行為は犯罪か?
に分析されて、学説はリンク不可罰説と可罰説に分かれます。
 url掲載行為が処罰されるという学説はありません。

 問い合わせてくる前に文献を読んで下さい。
リンク不可罰説

小池健治検事「実務刑事判例評釈(79) 自らが作成した画像処理ソフトの使用を誘引し、自らのホームページにわいせつ画像等を内容とするホームページへのリンクを設定するなどした行為につき、わいせつ物公然陳列罪の幇助犯が成立するとした事例」警察公論第56巻2号
前田雅英「ハイテク犯罪の現状と動向 ハイテク犯罪の実体法上の諸問題」自由と正義 第51巻10号P45
前田雅英「インターネットとわいせつ図画公然陳列罪」東京都立大学法学会雑誌'97.7 P607
立山紘毅「ネットワークと法の中心課題(3)いわゆる「リンク」をめぐる犯罪に関する憲法学的考察」ジュリスト997号
塩見淳「インターネットとわいせつ犯罪」現代刑事法 1999 No.8 P38
川崎友巳「サイバーポルノの刑事規制1」同志社法学51巻6号P97
渡邊卓也「電脳空間における刑事的規制」P135〜
園田寿「わいせつの電子的存在について」関大法学論集47巻4号1997年
渡邊卓也「電脳空間における電子的参照の可罰性」早稲田大学大学院社会科学研究科紀要別冊 第10巻
小倉一志 サイバースペース表現の自由p210〜
 警察庁の見解(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準)

リンク可罰説

前田雅英「インターネットとわいせつ犯罪」ジュリスト1112号P83
山口厚「コンピュータ・ネットワークと犯罪」ジュリスト1117号P76
山口厚「情報通信ネットワークと刑法」『現代の法6』'98 P112
永井善之「サイバー・ポルノの刑事規制」P226
山中敬一「インターネットとわいせつ罪」インターネットと法[第3版]P104
川崎友巳「サイバーポルノの刑事規制2」同志社法学52巻1号P12
佐久間修「ネットワーク犯罪におけるわいせつ物の公然陳列」西原春夫先生古稀祝賀論文集第3巻p225
佐久間修「最先端法領域の刑事規制」p329

 クリックすると自動的にジャンプするのは、公然陳列行為と同視できるというのです。

追記
 今回はリンクを貼っていたようです。
 それと管理者の刑事責任の判例を組み合わせているわけで、神奈川県警はよく勉強している感じです。
 それに対して、掲示板の管理者の認識は甘すぎますね。

控訴趣意書30頁、上告趣意書25頁脱稿

 簡潔に記載したというか、理由が少ない事件なので、趣意書が薄い。
 差出最終日1週間前になると、郵便事故がないかとか気になって。
 差出最終日の通知書を出してきて確認して、出しておきました。
 くれぐれも
   被告人「先生、趣意書出してくれはりましたん?」
   弁護人「えっ?」
ということはないように。

危険物取扱者=危険人物ではないですよ。

 乙4と牽引免許持ってます。
 そんなに特殊な知識はありません。ガソリンは常温で引火点超えてるので火気厳禁とか常識ですよね。
 弁護士になれなかったらタンクローリーかバスの運転手でもやろうと思ってました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090708-00000113-san-soci
危険物取扱者の資格を持ち、犯行に使ったガソリンの扱いを熟知していたことが7日、関係者への取材でわかった。
・・・
関係者によると、容疑者は昭和59年9月に危険物取扱者の資格を取得。約2年半前から此花区内の石油製品販売会社でタンクローリーの運転手として勤務し、ガソリンを運搬していた。

携帯の交流サイト、健全認定一時停止 モバイル監視機構

 健全認定されてても健全じゃなかったわけです。
 だいたい、刑事事件になっても、「苦情」としてサイトやEMAに上がってこないのが大半ですから、対応はかなり遅いと思います。

http://www.asahi.com/digital/mobile/TKY200907070264.html
携帯電話からネットに接続し、書き込みができる交流サイトの健全性を審査するモバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)は7日、交流サイト「ポケゲー」に対する健全認定を一時停止したと発表した。認定の一時停止は初めて。ポケゲーは携帯各社のフィルタリング(閲覧制限)の対象になる。

 フィルタリングが普及していれば、大きな制裁になるでしょうが、売り上げの増減はどうなんでしょ?

ペドファイルとの戦い

 葉梨議員はペドファイル狩りをやりたいようです。
 ペドファイルというのは、小学生を性的対象にする嗜好だと思うのですが、現状の児童ポルノ・児童買春の被害児童の年齢層は中高生ですよね。
 13歳未満との性行為とか撮影は、強制わいせつ罪とか強姦罪の守備範囲。
 13歳未満の児童ポルノ・児童買春というのは稀です。
 それなら、強姦罪・強制わいせつ罪(刑法176条後段・177条後段)に手を加えるべきでした。
 児童ポルノ提供犯人は、売れるから売ってるだけで、そういう趣味の人は少ない。
 そういう意味で、規制の趣旨と現実がずれてます。

171 - 衆 - 法務委員会 - 12号 平成21年06月26日
○葉梨議員 単純所持の禁止について、私ども二つの提案をさせていただいております。
 一つは、一般的な禁止規定として、みだりに児童ポルノを所持、保管すること、これについては一般的な禁止規定を置いております。これについては罰則はございません。そして、自己の性的好奇心を満たす目的で所持、保管をする者については一年以下のということで、罰則の規定を置かせていただいている、この二段構えということになります。
 これはどういうことかといいますと、みだりにというのは正当な理由なくということなんですけれども、一般的な禁止規定を置くということ、それと、その中でも性的好奇心目的というのは罰則を付するということで、例えば、他人の性的好奇心を満たす目的、例えばお父さんが見ている、お父さんが見たいということで子供が無理やり持たされている、そんなことで子供を罰するわけにもまいりませんし、また、別の正当な目的、例えば捜査目的、これは正当な理由にもなりますし、みだりにということにも、また性的好奇心を満たす目的にもなりませんけれども、例えば捜査目的で児童ポルノを持っていますよというようなものまでこれを禁止するということではございません。
 ですから、そういった意味では、みだりに児童ポルノを所持すること自体を罰則をもって禁止するべきだという意見もあるんですけれども、基本的にこの法律というのは、ペドファイル小児性愛者との戦いということでございますから、自己の性的好奇心を満たす目的で所持をしているというような場合を罰則をもって禁止しているというわけなんです。
 そして、民主党案についてのお尋ねでございますけれども、まず一つは、一般的な考え方として、児童ポルノを持つこと、これが悪いことである、つまり我が国として悪いことであるというような宣言、これは一切ございません。悪いことでないということであれば、それはいいことなんです。
 ですから、そういった意味でいいますと、児童ポルノを持ち続けても構わないということ、今の法律もそうはなってはいるんですけれども、それを議論する過程で、児童ポルノを今後持ち続けても構わないということを、まさに真正面から単純所持の禁止ということをこの国会で議論して、そしてその中で民主党案がいいということになれば、それを国会が認めてしまうということになってしまうのかなというような感じもいたします。
 また、有償でまたは反復で、そこのところは、私は民主党の提案者ではございませんので、民主党案について有権解釈をする立場では、立法者として解釈をする立場ではありませんけれども、拝見するところ、有償で取得をする、それから反復で取得をするというような行為、これを禁止するだけということになりますと、先ほど言っていましたように、持ち続けても構わないということですね。それで、だれだれさんの子供時代の写真を私はたくさんうちに抱えているんですよというようなことをそこらじゅうで言いふらして回ったって構わないということですね。テレビで言ったっていいし、新聞で言ったっていいし。
 そして、さらには、ビデオを他人に見せる、提供じゃありません、単に見せるだけですから。自分のうちに、ある友人を呼んできて、児童ポルノのビデオを他人に見せる、そして見せてお金を取る。これは営業としてやりさえしなければ、この法律は風俗営業ではございませんので、営業を規制しているわけじゃありませんけれども、少なくともこの法律は、例えばお金を取ったとしたって、そのような行為は多分禁止することはできないんだろうというふうに思います。
 また、家宝として児童ポルノを持っている。大量の児童ポルノを、これを相続によって取得する。相続というのは反復がありませんね、一回限りですから。そういった場合もこの法律によっては禁止することはできないんだろうというふうに思います。
 ですから、一般的な禁止規定を置きながら、ペドファイルの方々が自己の性的好奇心を満たす目的でこれを所持するというものについてはやはり罰則をもって対処するという、それぐらいのところまでは、我々としても、日本の子供あるいは世界の子供、これを守るために踏み込んでいかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えています


○葉梨議員 児童ポルノという用語が本当にいい用語かというと、私は個人的には必ずしもそうは思わないです。
 当時、この法律をつくったときに、いろいろな形でこの定義規定についても工夫をいたしました、どういう名称を使いましょうかと。ただ、わいせつな画像という言葉も使えませんし、それから、卑わいな画像ということも使えない。やはりそこにおいては、日本が国際的なペドファイルとの戦いの戦列に加わるという意味からも、当時議論されていました、平成十二年に採択された児童の権利条約の選択議定書、さらには平成十三年に採択されましたサイバー犯罪条約、こういったものにおけるチャイルドポルノグラフィー、これをいわゆる国際的スタンダードとして禁止していこうという中で、そのチャイルドポルノグラフィーという言葉を、まさに日本もそれに加わるんだということで、児童ポルノを使ったということであって。
 ですから、ポルノが風俗犯、風俗犯と言われますけれども、風俗犯を規制する法律、取り締まる法律でポルノなんという言葉を使った法律は今までなかったんですね。一番最初に法律用語として、児童買春の禁止法の中でこの児童ポルノという言葉を使わせていただいたんです。むしろ、今までの風俗犯の体系とは全然違うんだ、そして国際的な戦列に加わるんだという意味で、果たして、言葉が個人的に好きか嫌いかという話は別として、児童ポルノということを使わせていただいたということの経緯を覚えております。
 性欲を興奮させ刺激させるということについては、また後の質疑でもあろうかと思いますけれども、基本的な当時の考え方としては、やはり医学書ですとかあるいは家庭内の成長の記録、こういったものは除かなきゃいけない。その中で、性欲を興奮させ刺激させるというような法令用語もあった、あるいは運用の積み重ねもある、現実に幾つかの判例も出ているわけでございまして、その言葉を使わせていただいたわけです。
 我々の考え方としては、児童のヌード、それから児童の性器等をさわる、さわられる、あるいは性行為、性交類似行為等の姿態、こういったものについては基本的に児童ポルノなんだろうというような考え方を持たせていただいたというわけであります。ですから、その考え方を今変える必然性は私はないと思います。


○枝野議員 民主党案では規制されませんが、与党案でも、「性的好奇心を満たす目的」が満たされるのかどうか、非常に疑問があると思います。
○葉梨委員 多分、そうやって宣伝して回る方はペドファイル小児性愛者ですから、与党案ではここのところを禁止されるだろうというふうに思います。
 自分が保有する児童ポルノを、友人であるばりばりの小児性愛者、ペドファイルに見せて、見せるだけよという代価として百万円をもらう行為、これは民主党案では規制対象となりますか。
○枝野議員 お言葉ですが、持っていて見せるからといって、ペドファイルであるという推定がどうして働くんでしょうか。私は、そこがまさに、持っているということだけでこいつは悪いやつなんだということをうかがわせるという、それに基づいて自白が強要されるのではないかという危惧のまさに一番のポイントだろうというふうに思います。
 今の点についても、私どもの案でも入りませんが、残念ながら、一人にだけ見せるということはどちらの法案でも対象になっていないわけで、そちらは所持は対象になる。だけれども、その人が人に見せてお金を取ることを目的としているのなら、自己の性的好奇心を満たす目的というのはむしろ排除される推定が働くんじゃないですか。
○葉梨委員 それはそうでもないと思いますね、一緒に楽しむということもあるわけですから。(枝野議員「こともあるわけでしょう。だけれども、違う場合もある」と呼ぶ)
 答弁者、それは客観的によく実態に即して考えてみたらいいと思いますよ。百万円をもらって、それを持っていて一緒に楽しむという形であればということで、もちろん、それを営業としてやっているような形であれば、自己の性的好奇心を満たす目的ではないということもあるでしょう、他人の性的好奇心を満たす目的で。ただ、営業としてやっているようなことであれば、それは別途の営業法の規制があるし、そもそも、「みだりに、」にということで一般的な禁止規定を入れていますから、そういったものについてはやはり廃棄するということは、与党案では期待をされるということです。
 小児性愛者、ペドファイルでありますお父さんが亡くなりました、その子である子供もやはり小児性愛者、ペドファイルでございます。大量の児童ポルノを家宝として相続する行為は、民主党案では規制対象となりますか。
○枝野議員 小児性愛者であるかどうかということは内心の問題なので、客観的に判断できないというふうに思います。どなたかが持っていた大量の児童ポルノが、結果的に相続で違う方になったとしても、そのこと自体を違法性のあることとして排除することは、残念ながらできないというふうに思います。
○葉梨委員 私、捜査機関じゃないものですから、小児性愛者であるかどうか判断できないというのは、これは具体的な捜査の事例に即して言っているのではなくて、ある小児性愛者が小児性愛者である子供に対して相続をした場合はどうですかというふうに聞いているわけで、立証できないからどうのこうのというのは、レベルの全然違う話なんです。