起訴状には被害者氏名があったのですが、判決では抜けました。弁護人は「被害者はいない」という主張をしていますので、その影響を受けた。
国内で行えば、強制わいせつ罪なんでしょうが、たまたま犯罪地が国外であったこと、被害児童の母親が営業として行っており告訴が出ないこと等、強制わいせつ罪は立件されませんでした。
もともと半裸で暮らしているとのことで、大阪府警撮影の被害児童の写真も半裸でした(これまた児童ポルノ)。
第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上七年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
大阪地方裁判所H14.4.26
判 決
上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官加藤幸裕出席の上審理し,次のとおり判決する。
主 文
被告人を懲役 に処する。
この裁判確定の日から 年間刑の執行を猶予する。
ネガフィルム2本を没収する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理 由
(罪となるべき事実)
被告人は,児童ポルノを販売する目的で,カンボディア王国時間の平成12年6月14日ころ,カンボディア王国プノンペン市ド地域ス区74番通り2154番所在の通称置屋において,当時6歳の児童をして,同児童が18歳に満たないことを知りながら,全裸又は半裸の姿で両脚を所かせカメラに向かって性器を露出させるなどし,その姿態を写真撮影した上,同日,同市カ地域モ通り番所在の写真現像所において,上記撮影に係る衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである写真70枚を撮影したフイルムを現像し,もって,児童ポルノを製造した。
(補足説明)
1 被告人は,販売目的がなかったと公判において主張するが,被告人の捜査段階での供述などによれば,(1)被告人は以前から児童の裸体写真等に強い関心があり,自分でも撮影することを思い立ったが,外国などでは相当高額で取引されていると知り,自分の趣味だけでなく売ることにすれば現在の収入よりも実入りがいいなどと考えるようになった,(2)インターネットのホームページを利用し,画像を送信する方法で取引することも考えたが,発覚しやすいと思うようになり,(3)ネガをスキャナーでパソコンに取り込んで自分用に保存し,ネガそのものを販売することに予定を変え,そのためにリバーサルフィルムを使用する土とにし,(4)平成11年2月のカンボディア旅行の際も知り合った日本人から「ロリコン写真を撮れる,高く売れる」などと聞かされ,平成12年3月に約26万円を出して撮影機材を購入し,(5)本件を含めて数回カンボディアなどに旅行しており,渡航滞在費用や機材購入費や児童やその親に渡す撮影報酬などで多額の金がかかり,貯金も乏しくなっているため,金が不足したり機会があればネガを売って,旅費などに充てたいと考えていたことが認められる。被告人のこの点の供述は具体的であり,連日にわたって多数の児童の姿態を本件事実を含め多数枚撮影していることや本件当時の被告人の生活経済状況等に照らしても,自然であって信用できる。
被告人は,本件撮影の主目的は自分の趣味を満足させるためであると公判で供述し,また,販売の具体的な時期や相手方が決まっていなかったことも静められるが,これらの事情があったとしても被告人の、販売目的は否定されない。
2 弁護人は,(1)本件のような写真は「性欲を興奮させ又は刺激する」との要件を満たさない,(2)写真を焼き付けず現像までを行ったにすぎない本件行為は製造に当たらない,(3被害者及びその母親の承諾があり,犯罪成立を阻却する,などと種々の主張をしている。しかし,(1)本件写真は,判示のとおり,単なる裸体でなく両脚を開かせ性器を露出させた蕎骨な描写をしており,一般人の性欲を興奮させ又は刺激する内容といえる。(2)撮影行為それ自体で既に被撮影児童の心身に有害な影響を与えており,十分に可罰性が認められる。そして,撮影によって記録として作出されれば,現像や焼き付け等はその後行うことが比較的容易であり,
現像あるいは焼き付け前でも流通が可能であっ七,児童一般の心身の成長に悪影響を及ぼす危険性もあるといえる。なお,本件では,現像まで行われているところ,撮影,現像及び焼き付けは製造の一連の過程というべきであり,撮影及び現像を製造行為と認定した。(3)本件児童は僅か6歳であり,真摯な承諾があったと評価することは困難であるし,児童ポルノの製造等が描写された児童の心身に有害な影響を与え児童一般の心身の成長に重大な影響を与えることに鑑みこれを処罰する法の趣旨に照らしても,犯罪成立を阻却するとは考えられない。弁護人のその他の主張も理由がないことが明らかである。
(量刑の理由)
本件は,児童の裸体写真に強い関心を持っている被告人が,趣味に止まらず販売することも考え・東南アジアの幼い少女のポルノ写真を撮影し,、現像したところで検挙された国外犯の事案である。 被告人は,自らの趣味と合わせて経費を捻出するなどを考えていたとはいえ販売利得目的も持って,児童を自己の欲望の対象とし,
その児童や社会の一般児童に悪影響を及ぼす行為を敢えてしたものであり,再犯のおそれも否定できず,厳しい処罰を科することが必要である。
ただし,被告人は,現在は自己の行為が児童に多大の迷惑を及ぼすものであることを理解し、今後は本件に類する行為をしないと約束し,反省の情が窺われ,50万円の購罪寄付もしていること,被告人にはさしたる前科がなく,父親も監督を約束していることなども考慮し,量刑した。