児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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園田寿「児童ポルノ禁止法7条3項違反の罪と児童福祉法34条1項6号違反の罪の罪数関係について[最高裁第一小法廷平成21.10.21決定]」甲南法務研究

 観念的競合説。
 学説は原田判決に習ってほとんど観念的競合説になりましたが、判例併合罪説。

論題 児童ポルノ禁止法7条3項違反の罪と児童福祉法34条1項6号違反の罪の罪数関係について[最高裁第一小法廷平成21.10.21決定]
著者 園田 寿(ソノダ ヒサシ)

請求記号 Z71-N334
雑誌名 甲南法務研究
Konan law forum
出版者・編者 甲南大学法科大学院
巻号・年月日 (6) [2010.3]
ページ 21〜27

ISSN 1880-0459
本文の言語コード jpn: 日本語
記事種別コード 8: 判例研究
記事登録ID 10618289
雑誌記事ID 817651600

きて、児童福祉法34条1項6号における「淫行」については、「性道徳上非難に値する性交またはこれに準ずべき性交類似行為」と解されており、具体的には、「児童の心身に与える有害性が直接かつ重大なもので、実質的にみて性交と同視しうる程度の性行為でなければならず、例えば、ヌードモデルやヌードショーの踊り子が、除部を露出したり、客に陰部を触れさせたりすることや、トルコ嬢として客に手淫を施す等の行為は、それだけでは本号にあたらない」と解されている14)。このような解釈に立てば、1号児童ポルノは、「淫行」そのものの描写であるが、2号児童ポルノと3号児童ポルノの内容は、(当該姿態が性交または性交類似行為でないため)「淫行」そのものの描写とはいえない。そうすると、3項製造罪の場合、法2条3項1号の「姿態をとらせ」た場合にのみ、3項製造罪の一部が淫行罪と重なることになるが、行為者が児童との性交の最中に、法2条3項2号と3号の「姿態をとらせ」た場合には、3項製造罪と淫行罪の重なり合いは否定されることになり、淫行の最中に被害児童のどの場面を撮影したかによって、観念的競合とされたり、あるいは併合罪とされたりすることになるおそれがある。この点においては、最高裁が、両行為は「一部重なる点はあるものの、両行為が通常伴う関係にあるとはいえない」とすることも理解できないわけではない。
しかし、再思すれば、淫行が「性道徳上非難に値する性交またはこれに準ずべき性交類似行為」だとしても、被害児童を全裸もしくは半裸にさせたり(法2条3項3号の姿態)、あるいは性器等を触ったの一部を着けさせなくした段階で、淫行罪の着手がある)。したがって、淫行の最中に、被害児童のどの場面を写したかによって罪数処理が異なるものではない。被害児童に対して性交あるいは性交類似行為を行わせた以上、それを撮影し(必ずしも性交ないし性交類似行為そのものが写っている必要はない)、媒体に描写して、児童ポルノを製造した場合には、淫行罪と3項製造罪とが成立し、両罪は観念的競合の関係に立つと考えられる。
また、判例によれば、犯罪行為の主要部分が重なり合うことによって一体性が強く認められるような場合は、刑法的観点から犯罪行為は一回であると考えられている。このような場合の典型例としては、数人に対して刃物を突きつけて一個の脅迫行為を行い、その場で数人から財物を強取した場合に、被害者ごとに成立する数個の強盗罪が観念的競合とされているケースがあげられると思う15)。つまり、「犯罪目的を達成するための手段とされる行為」と「犯罪目的を直接実現する行為」が構成要件的行為として規定されているような場合に、判例はそれぞれの行為が完全に重なり合わなくとも、これらの手段的行為ないしは目的実現行為と他の罪の実行行為とが重なり合う場合には観念的競合の成立を認めている。3項製造罪と淫行罪においても、3項製造罪における「姿態をとらせ」という行為は、児童ポルノの製造という犯罪目的を達成するための手段として実行行為の一部分と解されるのであり、また、上述のように、被害児童を全裸もしくは半裸にさせたり(法2条3項3号の姿態)、あるいは性器等を触ったり、触らせたりすること(法2条3項2号の姿態)は、淫行を実現するための実行行為の一部となりうる行為であるので、これらは観念的競合の関係に立つと解されるのである。確かに淫行そのものには児童ポルノの製造が必然的に伴うものではないが、児童に対して性的虐待を行い、それを記録するという点において児童ポルノの根源的な問題性を捉える以上、児童ポルノの製造行為(3項製造罪)は、児童に対する淫行ないしは淫行の一部を行うということを構成要件的に必要不可欠な条件としているのである。