児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

島戸論文児童ポルノ単純所持と擬似ポルノ

 警察学論集買ってくださいよ。
 こんな事書くと抗議メールくるんですが、
 擬似児童ポルノは、児童ポルノ法の守備範囲外だが、他の立法によって規制される可能性がある。児童ポルノ法に取り込むのは被害者性が薄まるので勘弁してください。

 単純所持は保護法益が理解できないんですが、単純製造も保護法益不明確のまま入ってしまいましたから、理屈こねても入っちゃう可能性はある。

 島戸さんは、こう書いている。

島戸論文(警察学論集)
1他人に提供する目的を伴わない児童ポルノの所持の問題
、国会においても、児童ポルノの存在を許さず、これを撲滅すべきことについては異論がないところであり、今後、単純所持を禁止、処罰するか否かについて検討課題とされている。これと併せ、児童ポルノが児童の尊厳を害し、その存在が許されないことについて、政府は、教育、啓発を一層充実させていくことが求められており、児童ポルノの所持について許されないとの意識が広まっていくことが期待される。
2 実在しない児童のポルノの問題
実在しない児童のポルノについても、その規制の安否について将来的に検討を続けることとした。
本法が児童ポルノを規制対象とするのは、それが児童を性の対象とする風潮を助長することになるのみならず、描写の対象となった児童の人権を害することによるものである。この観点から、従来から、実在しない児童を描写したポルノについては、本法第2条第3項にいう「児童ポルノ」に該当しないとされており、今回の見直しにおいても、この部分に変更はない。実在しない児童を描写した漫画その他のポルノに閲し、どのような規制が必要なのか、必要でないかについては、今後の議論に委ねている

児童ポルノの児童は実在することを要する?

 児童ポルノ法は、児童福祉法の特別法として位置づけて、生身の児童を保護する立法として育てたいと考えています。
 擬似児童ポルノを規制したい奴も規制されたくない奴も、よその土俵で戦ってくれということです。漫画とかアニメとかcgとか・・・。

 なかなか公刊物には掲載されませんが、児童ポルノ法に詳しい実務家には有名な判決がありますので紹介します。

 大阪高裁H12では立法趣旨から実在性の要件を導いています。立法趣旨を変えないと、擬似児童ポルノは入れられないことになります。

平成一二年一〇月二四日宣告 裁判所書記官 池 田 豊
平成一二年(う)第六四九号
弁護人奥村弁護士
2 法二条一項について(控訴理由第7、第17)
児童ポルノも表現行為の一形態であるところ、表現行為を制限する法令の規定が非常に包括的な場合には、憲法上保護された表現の自由が不当に制約されるおそれがあるから、「より制限的でない他の規制手段」が考えられる場合には、それによらなければならない。ところで、婚姻可能年齢は、民法上男子は一八歳、女子は一六歳とされており(民法七三一条)、また、刑法上の性的行為に同意することが可能な年齢は、一三歳とされている(刑法一七六条、一七七条)のであるから、少なくとも一六歳以上の女子には、法律上、性的な行為に同意する能力があり、性的自己決定権があるというべきである。法二条一項は、一八歳未満の者をすべて児童とした上、これを一律に児童ポルノ法における規制対象としているが、右のように、児童のうちで性的自己決定権を有する者がいることに配慮すると、児童の年齢に応じて規制方法を変えるというように、「より制限的でない他の規制手段」を採ることを考えるべきである。したがって、法二条一項は、表現の自由に対する過度に広範な規制であり、憲法二一条に違反している。また、後記のとおり、児童ポルノ法においては、児童ポルノの製造行為も処罰されることになっているのであるから、法二条一項が、一律に一八歳未満の者をもって児童としているのは、性的自己決定権を有する児童が性的な表現を含むビデオに出演する権利を不当に侵害するものであり、同条項は、憲法一三条にも違反する、という。
しかし、児童ポルノ法は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為などにより心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的としている(法一条)ところ、児童買春の当事者となったり、児童をポルノに描写することは、その対象となった児童自身の心身に有害な影響を与えるのみならず、そのような対象となっていない児童においても、健全な性的観念を持てなくなるなど、児童の人格の完全かつ調和のとれた発達が阻害されることにつながるものであるから、児童ポルノ法は、直接的には児童買春の対象となった児童や児童ポルノに描写された児童の保護を目的とするものであるが、間接的には、児童一般を保護することをも目的としていると解される。したがって、このような同法の立法趣旨にかんがみると、一八歳未満の者を一律に児童とした上で、児童買春や児童ポルノを規制する必要性は高いというべきであるから、法二条一項が表現の自由に対する過度に広範な規制を定めたものとはいえないし、また、そのために所論にいわゆる児童の性的自己決定権が制約されることになっても、その制約には合理的な理由があるというべきであるから、同条項が憲法一三条に違反するともいえない。
法二条三項について(控訴理由第8ないし第12、第14、第15)
 所論は、法二条三項によって規制対象とされる児童ポルノとは、被撮影者となつている子供の人権を救済し、保護するという児童ポルノ法の規制目的に照らすと、被撮影者の氏名、住所が判明しているまでの必要はないにしても、具体的に特定することができる児童が被撮影者となっている場合に限るとすべきであるのに、同条項において、そのような特定を要求していないのは、表現の自由に対する過度に広範な規制というべきである、という。
しかし、前記2において説示したような児童ポルノ法の立法趣旨、すなわち、同法が、児童ポルノに描写される児童自身の権利を擁護し、ひいては児童一般の権利をも擁護するものであることに照らすと、児童ポルノに描写されている児童が実在する者であることは必要であるというべきであるが、さらに進んで、その児童が具体的に特定することができる者であることまでの必要はないから、所論のような規定が設けられていないからといって、法二条三項が、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。
 所論は、児童ポルノの被撮影者は、一見児童であるように見えても、一八歳以上の者である場合があり得るから、検察官は、被撮影者となっている児童が存在し、その者が児童であることを積極的に立証する必要があるのに、法二条三項にその旨が明記されていないのは、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものであって、憲法二一条に違反する、という。
しかし、所論の指摘するような構成要件該当事実について検察官に立証責任があることは、刑訴法上当然であるから、法二条三項に所論指摘のような規定が設けられていないからといって、同条項が、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。 
 所論は、規制対象となる児童ポルノについて、法二条三項は、「写真、ビデオテープその他の物」で法二条三項各号のいずれかに該当するものとしているが、児童の権利を擁護するという立法目的に照らすと、規制対象とすべき児童ポルノは、被撮影者が実在する特定の児童であることが明らかである写真及びビデオテープに限られるべきであるのに、同条項において、「その他の物」を含むとしているのは、例えば、抽象画から漫画まで広がりがあり、実在する特定の児童を描いたものであるか否か判然とせず、したがって規制対象に当たるかどうかの判断が恣意的になされる危険性が高い絵画まで含むことになるから、法二条三項は、表現の自由を過度に広範に規制するものであって、憲法二一条に違反する、という。
しかし、児童が視覚により認識することができる方法により描写されることによる悪影響は、写真、ビデオテープに限られず、所論の指摘する絵画等についても同様であるから、法二条三項が表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。
 所論は、①法二条三項二号、三号は、児童ポルノとして規制の対象とされる児童の姿態の描写について、いずれも「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件を設けてこれを限定しているが、性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうかを通常人が客観的に判断することは難しく、その判断基準は曖昧である。また、右の要件を、刑法上のわいせつの概念である「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」という要件と対比すると、「いたずらに」という限定がないため、表現が性的に過度であることが要件とされておらず、規制の対象が広がっている。これらの点において、法二条三項二号、三号は、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものであって、憲法二一条に違反する。②また、法二条三項二号、三号にいう「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かを客観的に判断することは困難である。
通常人は、児童の裸体等に性的興奮を覚えたり、それから刺激を受けたりしないのであるから、通常人を基準としてこれを判断するのであれば、児童ポルノに当たるものはなくなるし、また、子供の性に対して特別に過敏に反応する者を基準としてこれを判断することは、通常人を名宛人とする法規範の解釈としては許されない。したがって、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かの判断基準が明確ではないのに、これを要件とする法二条三項二号、三号は、漠然として不明確な規定であるから、憲法二一条に違反するものであり、かつ、刑罰法規の明確性を要請する「憲法三一条にも違反するものである、という。
しかし、わいせつ物頒布等の罪を規定した刑法一七五条は、社会の善良な性風俗を保護することを目的とするものであるから、同条におけるわいせつの概念としては、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するほどに著しく性欲を興奮、刺激せしめることを要するとされるのに対し、児童ポルノ法は、すでに前記2等において説示したとおり、児童ポルノに描写されることの害悪から当該児童を保護し、ひいては児童一般を保護することを目的とするものであるから、著しく性欲を興奮、刺激せしめるものでなくとも、児童ポルノの児童に与える悪影響は大きく、したがって処罰の必要性が高いと考えられること、すなわち、両者の保護法益ないし規制の対象に自ずから相違があることなどに照らすと、所論の指摘するところを考慮しても、法二条三項二号及び三号が、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものとはいえないし、また、わいせつの概念が所論①のようなものであるにもかかわらず、刑法一七五条が憲法二一条及び三一条に違反するものでないとされていること(最高裁判所昭和五八年一〇月二七日判決刑集三七巻八号一二九四頁、同昭和五四年一一月一九日決定刑集三三巻七号七五四頁等参照)などからしても、法二条三項二号及び三号が、漠然として不明確な規定といえないことは明らかである。
所論は、①表現行為を制限する立法については、立法の趣旨、目的とそれを達成するための規制手段との間に合理的関連性があることが要求される。児童ポルノ法の立法目的は、法一条に記載されているとおり、児童に対する性的搾取や性的虐待等の防止にある。ところで、一般的にいえば、性的虐待とは相手の意思を無視して暴力的あるいは強制的に行われる性的行為をいうが、児童の中でも高年齢のものは、性的自己決定能力を備えているのであるから、「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為」一般が、法一条にいう児童の性的搾取や性的虐待に当たるとはいえない。したがって、児童ポルノとして規制すべき対象物を定めるに当たっては、右のような性的虐待につながるものであること、すなわち、被撮影者の意思に反するものであることを要件とすべきである。しかるに、法二条三項一号が、被撮影者の意思に反することを構成要件としていないのは、立法目的とそれを達成するための規制手段との間に合理的関連性を欠いているというべきである。②また、法二条三項二号、三号についても、被撮影者の意思に反することを要件としていない点において、法一条の立法目的との合理的関連性を欠いているというべきである、という。
しかし、前記2等において説示したような児童ポルノ法の立法の趣旨、目的、ことに同法が、児童買春の対象となったり、児童ポルノに描写された児童の保護だけでなく、児童一般の保護をも目的としていることに照らすと、法二条三項各号が、児童ポルノで描写された被撮影者の意思に反することを要件としていなくとも、立法目的と規制手段との間に合理的関連性を欠くとはいえない。
4 法七条二項における規制対象行為について(控訴理由第13)
所論は、法七条二項は、児童ポルノの製造、所持、運搬についても処罰することとしているが、これらの行為を禁じても、児童虐待を防ぐという立法目的を達成することはできないから、これらの行為をも処罰する法七条二項は、表現の自由に対する過度に広範な規制というべきであり、憲法二一条に違反する、という。
ところで、法七条二項は、同条一項所定の、児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与又は公然陳列の目的による児童ポルノの製造、所持、運搬等の行為を処罰するものであるところ、右各行為は、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず、このような行為により児童ポルノが社会に広がるときには、児童を性欲の対象として捉える風潮を助長するとともに、身体的、精神的に未熟である児童一般の心身の成長にも重大な悪影響を与えることになり、前記児童ポルノ法の立法の趣旨、目的にもとることになるものである。したがって、同条一項所定の製造、所持、運搬等の行為を処罰する必要性は高いというべきであるから、法七条二項において、右各行為を処罰の対象としていることが、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。
5 各所論はいずれも採用することができない。


 金沢支部曰く、児童の定義からして、生身の児童だと解釈するわけですから、擬似ポルノをこの法典に入れるのは無理です。

名古屋高等裁判所金沢支部
平成14年3月28日
平成13年(う)第78号
弁護人奥村弁護士
(3)所論は,児童買春処罰法により規制される児童ポルノ(同法2粂3項)は,実在する児童が被写体となった視覚的表現手段に限るべきものであるところ,同条項では児童の実在性が明文化されておらず,萎縮効果のおそれがあるから,憲法21条に違反するという(控訴理由第8)。確かに,上記「児童ポルノ」は実在する児童を被写体としたものと解すべきであるが,この点は児童買春処罰法2条1項の「児童」が18歳に満たない者と定義され,これを用いて児童ポルノも定義づけられていることからすると,児童の実在を前提とする趣旨は明確となっているというべきである。所論は採用できない。


mac判決の原田さんもこう判示している。
175条との法条競合説は保護法益を明示させるための夏井教授の提案です。

東京高裁平成15年6月4日宣告
平成15年(う)第361号
弁護人奥村弁護士
2 罪数関係の誤りをいう論旨について(控訴理由第8,第11,第13,第14)
所論は,
児童ポルノ罪は,個人的法益に対する罪であるから,被害児童毎に包括して一罪が成立し,製造・所持は販売を目的としているから,製造罪,所持罪,販売罪は牽違犯であり,これらはわいせつ図画販売罪・わいせつ図画販売目的所持罪と観念的競合になり,結局,一罪となるが,原判決は,併合罪処理をしており,罪数判断を誤っている(控訴理由第8),
児童ポルノ罪とわいせつ図画等に係る罪とは法条兢合(特別関係)により児童ポルノ罪のみが成立する(控訴理由第11),
児童ポルノ販売罪の保護法益は描写された者の個人的法益であるから,罪数も侵害された法益の個数を基準とすべきであり,販売罪は5罪が成立し併合罪となるのにこれを包括一罪とした原判決は法令解釈を誤っている(控訴理由第13),
④原判決は,児童ポルノ製造罪について撮影行為を基準に1回1罪としているが,弁護人の主張に対する判断では媒体を基準にして罪数を判断すべきであると判示しており,理由齟齬であり,また,MOに関しては1個しか製造していないから,撮影行為が何回に及んでも1個の製造罪であり,ビデオテープは12本製造されているから12罪であって,法令解釈の誤りがある(控訴理由第14)などという。
 まず,①の点は,児童ポルノ製造罪及び同所持罪は,販売等の目的をもってされるものであり,販売罪等と手段,結果という関係にあることが多いが,とりわけ,児童ポルノの製造は,それ自体が児童に対する性的搾取及び性的虐待であり,児童に対する侵害の程度が極めて大きいものがあるからこそ,わいせつ物の規制と異なり,製造過程に遡ってこれを規制するものである。この立法趣旨に照らせば,各罪はそれぞれ法益侵害の態様を異にし,それぞれ別個独立に処罰しようとするものであって,販売等の目的が共通であっても,その過程全体を牽連犯一罪として,あるいは児童毎に包括一罪として,既判力等の点で個別処罰を不可能とするような解釈はとるべきではない。
 もっとも,わいせつ図画販売目的所持罪と同販売罪とは包括一罪であるから,結局,原判示第2ないし第4の各罪は一罪として評価されるべきであり,この点で原判決には法令の適用を誤った違法があるが,処断刑期の範囲は同一であるから,判決に影響を及ぼすものではない。
 ②の点は,児童ポルノ販売罪等は,その行為が,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず,これが社会にまん延すると,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えることなどを理由に処罰しようとするものであって,性的秩序,風俗を害することを防止しようとする刑法のわいせつ図画に係る罪とは処罰根拠が異なるだけでなく,児童ポルノに該当するものでも,わいせつ図画には該当しない場合もあるから,所論のいうように両罪が法条兢合(特別関係)にあるとは認められない。
 ③の点は,原判決には所論のいうような誤りはなく,所論は原判決を正解しないものである。
 ④については,一個の機会に撮影して製造した物は一罪と解するべきであるが,本件のMOについては,全く別の機会に製作されたファイルが追加記録されているのであるから,媒体は同一でも追加記録は別罪を構成するものというべきである。原判決の「弁護人の主張に対する判断」の1は,画像データが同一でも別の媒体に複写すれば製造に当たる旨を説示したにすぎず,媒体が同一であれば一罪になる旨判示したものではなく,所論は原判決を正解しないものといわざるを得ない。

 微罪・軽罪じゃないし表現の自由にも関係しますから、解釈を固めておく必要があります。
 ほとんど控訴棄却判決ですが、1事件1論点という具合にこうやって判例を積んでいるわけです。
 改正法にも影響が出ていて、少しはフィードバックされていると思います。
 どんな主張・立証をすれば、こんな判示が引き出せるのかは、屁理屈弁護人の企業秘密です。

名古屋高裁金沢支部h14.3.28

 破棄減刑ですから、弁護人にはいい判決です。
「代償の供与の約束は形式的で足りる」というのは納得できないのですが、
「被害弁償で減刑」とか「真剣交際は児童買春罪ではない」とか使える判示ありますよね。

強姦罪の手段たる暴行脅迫が買春罪からははみ出すので「強姦罪等とは構成要件を異にしていて,児童買春罪等が強姦罪等と不可分の一体をなすとはいえず」というんですが、12歳未満の場合は「姦淫」だけですから重なります。

名古屋高等裁判所金沢支部
平成14年3月28日宣告裁判所書記官久保守
平成13年(う)第78号
判決
上記の者に対するわいせつ図画販売,児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春処罰法」ともいう。)違反被告事件について,平成13年9月14日金沢地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官村主意博出席の上審理し,次のとおり判決する。

主文
原判決を破棄する。被告人を懲役1年10か月に処する。
原審における未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
押収してある8ミリビデオカセットテープ2本(原庁平成13年押第13号の1,2)を没収する。

理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成名義の各控訴趣意書(平成13年11月13日付け並びに「その2」,「その3」及び「その4」と題するもの),各控訴理由補充書(平成14年1月15日付け及び「最終」と題するもの。なお,各補充書中,控訴理由第23「訴訟手続の法令違反」の項は,職権発動を求める趣旨である。)のとおりであり(なお,弁護人は,同月17日付け及び同月18日付け各控訴理由補充書は陳述しない旨当審第1回公判期日において釈明した。),これに対する答弁は検察官村主意博作成名義の答弁書のとおりであるから,これらを引用する。

第1 控訴趣意中,事実の誤認の論旨(控訴理由第19)について
 所論は,原判決は,原判示第2,第3の1及び第4の各児童買春行為について,対償の供与の約束をしたことを認定したが,証拠によれば,被告人にはこのような高額な対償を支払う意思はなく,詐言であったことが明らかであるとし,このような場合には児童買春処罰法2粂2項にいう代償の供与の約束をしたことには当たらないから,同法4条の児童買春罪(以下,単に「児童買春罪」という。)は成立しないという。
 しかしながら,児童買春は,児童買春の相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであることから規制の対象とされたものであるところ,対償の供与の約束が客観的に認められ,これにより性交等がされた場合にあっては,たとえ被告人ないしはその共犯者において現実にこれを供与する具体的な意思がなかったとしても,児童の心身に与える有害性や社会の風潮に及ぼす影響という点に変わりはない。しかも,規定の文言も「その供与の約束」とされていて被告人らの具体的意思如何によってその成否が左右されるものとして定められたものとは認め難い。対償の供与の約束が客観的に認められれば,「その供与の約束」という要件を満たすものというべきである。関係証拠によれば,原判示第2,第3の1及び第4のいずれにおいてもそのような「対償の供与の約束」があったと認められる。所論は採用できない(なお,所論は,形式的な「対償の供与の約束」でよいというのであれば,準強姦罪で問うべき事案が児童買春罪で処理されるおそれがあるとも主張するが,準強姦罪は「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて姦淫した」ことが要件とされているのに対し,児童買春罪では対償を供与することによって性交等する関係にあることが必要であって,両者は明らかにその構成要件を異にするから,所論を採用することはできない。)。

第2 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の論旨(控訴理由第4及び第23)について
1 所論は,原判示第2ないし第4の各行為は,被害者らの真摯な承諾なく抗拒不能の状態でされたもので,強姦,準強姦,強制わいせつ,準強制わいせつ罪に当たるとし,いずれについても被害者らの告訴はなく,親告罪たる強姦罪等の一部起訴は許されないから,本件起訴は違法であって訴訟手続の法令違反があるという(控訴理由第23)。
 しかしながら,児童買春罪や児童買春処罰法7条2項の児童ポルノ製造罪(以下,単に「児童ポルノ製造罪」という。)は親告罪ではなく,しかも強姦罪等とは構成要件を異にしていて,児童買春罪等が強姦罪等と不可分の一体をなすとはいえず,原判示第2ないし第4が強姦罪等の一部起訴であるとはいえないから,告訴欠如の如何を論ずるまでもなく(最高裁昭和28年12月16日大法廷判決・刑集7巻12号2550貢参照),所論は失当である。なお,被告人の捜査段階及び原審公判の供述,共犯者の捜査段階の供述並びに被害者らの各供述によると,被告人らが被害者らに対して,畏怖させるような脅迫言辞を申し向けたことは認められない上,被害者らが性交等に及ぶ際あるいはその後の被告人らとのやりとりをみると,被害者らが恐怖心もあって買春に応じたと述べる部分もあるものの,他方で,買春行為の後,明日は行かないから,1日目の分だけお金を払って欲しい旨の電子メールを被告人に送信したり(原判示第2),これだけ恥ずかしい思いをしたのだからお金はもらって当然と思い,振込みでなく現金で欲しい旨申し出,受取りのため被告人が説明した場所に赴いたり(同第3の1),2度にわたって性交等に応じ,しかも2度目の際被告人に名刺を要求してこれを受け取り,記載してあった電話番号に電話をかけたり(同第4)していることなどが認められ,これら言動からすると,所論指摘の点を踏まえても,被害者らは対償の供与の約束により買春行為に応じたものと認めるのが相当であり,各被害者が抗拒不能の状況にあったということはできない。

2 また,所論は,起訴状の公訴事実や原判決の罪となるべき事実に被撮影者の氏名を掲げることが,児童買春処罰法12条1項に違反し,訴訟手続の法令違反があるなどともいうが(控訴理由第4),訴因の特定や被告人の防御の観点からして何ら違法ではなく,所論は失当である。

第3 控訴趣意中,法令の適用の誤り等の論旨(控訴理由第1ないし第18及び第22)について
1 児童買春処罰法が憲法,条約上の規定に違反する旨の各所論(控訴理由第7ないし第15,第17及び第22)について
(1)所論は,児童ポルノ憲法21条の表現の自由の範疇にあるとし,児童買春処罰法が処罰対象とする児童の年齢を一律18歳末満としている点は,刑法上の性的同意年齢が13歳とされ,民法上の婚姻年齢も女子は16歳とされていること,高年齢の児童の場合は自己決定能力を備えているから,必ずしも児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為がすべて児童に対する性的搾取,性的虐待であるとは限らないことからすると,必要以上の,あるいは立法目的に照らし合理的関連性を欠く過度に広範な規制であって,児童ポルノ製造罪の規定は憲法21条1項に違反し(控訴理由第7及び第10),また憲法13条の児童ポルノに出演する児童の自己決定権を侵害するもので(控訴理由第13),無効であるという。
 しかしながら,性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を描写するなどした児童ポルノを製造,頒布等する行為は,第1で述べた児童買春同様,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象ととらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであり,そのためかかる行為が規制されたものであるところ,このような規制の趣旨目的に照らせば,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とすることは,身体的及び精神的に未熟である児童の自己決定権を制約する部分があるとしても,合理的な理由があるというべきであり,また表現の自由などとの関係においても必要以上の,あるいは立法目的に照らし合理的関連性を欠く過度に広範な規制であるとはいえないから,所論指摘の憲法の各条項に違反するものということはできない。

(2)また,所論は,児童買春罪の規定についても,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とする点で,また規定の文言上対償を伴うすべての性交等が処罰対象とされていて真剣な交際でも代償を供与すれば本罪に当たることとなる点で,過度に広範に性行為に関する児童の自己決定権を侵害するから憲法13条に違反するという(控訴理由第15)。
 しかしながら,第1で述べた規制の趣旨目的に照らせば,単なる性交等ではなく,金銭等の対償を供与し,又はその供与の約束をして,児童に対し,性交等する児童買春について,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とすることには合理的な理由があるというべきであり,また「対償の供与」とは,児童に対して性交等することに対する反対給付として経済的利益等を供与することを意味するところ,児童買春処罰法1条の制定の目的を併せ考慮すれば,所論指摘のような真剣な交際の場合がこれに当たるとはいえないから,所論はその前提を誤っていて採用することはできない。

(3)所論は,児童買春処罰法により規制される児童ポルノ(同法2粂3項)は,実在する児童が被写体となった視覚的表現手段に限るべきものであるところ,同条項では児童の実在性が明文化されておらず,萎縮効果のおそれがあるから,憲法21条に違反するという(控訴理由第8)。確かに,上記「児童ポルノ」は実在する児童を被写体としたものと解すべきであるが,この点は児童買春処罰法2条1項の「児童」が18歳に満たない者と定義され,これを用いて児童ポルノも定義づけられていることからすると,児童の実在を前提とする趣旨は明確となっているというべきである。所論は採用できない。

(4)所論は,児童ポルノ製造罪に関し,「児童ポルノ」を限定する要件として「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という文言を児童買春処罰法2条3項2号及び3号の中で用いているが,この限定はあいまいで対象が拡大するおそれがあり,しかも「わいせつ」概念に閲し最高裁判例(昭和26年5月10日判決・刑集5巻6号1026貢)が示した基準と比較しても,「いたずらに」という点や「普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する」という点を要求していないから,明らかに過度に広範な規制として(控訴理由第9),また誰を基準としてその要件を判断するのかが読み取れないから漠然不明確である,ないしは児童ポルノが一般人の性欲を刺激するとはいえずこのような要件を含む内容を規定すること自体許されないなどとして(控訴理由第11及び第12),それぞれ憲法21粂,31条1項に違反するなどという。
 しかしながら,原判示第3の2の児童ポルノ製造行為は,児童買春処罰法7条3項1号に該当する児童ポルノを製造したとして起訴され,原判決もその旨を藩定したことが明らかであるから(原判示第3の2では「児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により,描写した児童ポルノ」とされている。),同項2号又は3号の文言について種々論難する上記各主張(もとより上記各号に関する主張が法令全体の無効を来す類のものとも解されない。)はいずれも本件においては失当である(なお,付言するに,刑法175条の「わいせつ」の文言と比べても,児童貞春処罰法2条3項の「児童ポルノ」は各号ともにその内容が具体的に定義されていて,あいまいであるとはいえず,また児童ポルノの性質上,「いたずらに」とか,「普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する」を要しないとすることには合理性が諷められるから,その要件が過度に広範であるということはできない。また,誰を基準として判断するかの点についても,刑法における「わいせつ」概念と同様,「一般人」を基準として,その性欲を興奮させ又は刺激するものと解すべきことは一般人を対象とする法規範としての性質上明らかであり,また児童ポルノで奉るからといって,一般人の性欲を興奮させ又は刺激することがないとはいえないというべきである。)。
 また,所論は,児童買春処罰法2条2項の,性交等の定義の中の「性交類似行為」とは何かが漠然不明確であるから,同条項は憲法31条に違反するともいう(控訴理由第22)。しかし,その文言からすれば,その意義は,異性間の性交とその態様を同じくする状況下における,あるいは性交を模して行われる手淫・口淫行為,同性愛行為など,実質的にみて性交と同視し得る態様における性的な行為をいうものと解されるから,同条に違反し無効であるとはいえない。

(5)さらに,所論は,児童の権利に関する条約12条の意見を表明する権利,31条の文化的生活等に参加する権利においては,児童の年齢に応じた取扱いを求めているとし,児童買春及び児童ポルノ製造についても,同様に解すべきであるから,一律に18歳未満の者を対象とした児童買春処罰法は上記規定に反するものであるという(控訴理由第14)。
 しかし,そもそも児童買春,児童ポルノ製造行為が上記の意見を表明する権利や文化的生活等に参加する権利として保障されているとは読みとれないし,児童買春処罰法の趣旨目的からして,同法が同条約の上記規定に反するものであるとは到底解されず,所論指摘の見解は独自のものというべきであって採用の限りでない。

(6)所論は,児童買春罪と児童福祉法60条1項の児童に淫行をさせる罪」(以下,単に「児童に淫行をさせる罪」という。)とが併存していることによって,ある行為がどちらで処罰されるのかが通常の判断能力を有する一般人において判断することができず,刑罰法規についての予見可能性を損なうから,罪刑法定主義憲法31条)に違反するという(控訴理由第17)。しかし,それぞれの規定における構成要件の内容からすると,一般人の立場において,両者のどちらに,あるいはその双方に該当するか否かの判断は可能というべきであるから,所論は採用できない。

2 児童買春罪,児童ポルノ製造罪と児童に淫行をさせる罪との関係等について(控訴理由第1ないし第6,第16,第18及び第21)
(1)所論は,児童買春罪と児童に淫行をさせる罪とは,行為態様で区別され,後者が成立しない場合に前者が成立するという補充関係にあるとし,本件犯行のように多額の代償を約束して同意を得て性交ないし性交類似行為をするのは児童の純然たる自由意思によるものではなく,児童に淫行をさせる罪に当たり児童買春罪は成立せず,本件各犯行に同罪を適用したことには法令の適用の誤りがあるなどという(控訴理由第1)。
 しかしながら,児童買春罪は,児童買春が児童の権利を侵害し,その心身に有害な影響を与えるとともに,児童を性欲の対象としてとらえる社会風潮を助長することになるため,これを処罰するものであるのに対し,児童に淫行をさせる罪は,国内における心身の未熟な児童の育成の観点から,児童に反倫理的な性行為をさせることがその健全な発育を著しく阻害するためこれを処罰するもので,その処罰根拠を異にし,しかも両罪の規制態様にも差異があることからすると,被告人自身が淫行の相手方になったと認められる場合にあって,その際通常伴われる程度の働きかけを超えて未成熟な児童に淫行を容易にさせ,あるいは助長,促進するといった事実上の影響力を与え淫行をさせる行為をしたと認められるようなときには,両罪に該当することもあり得ると解される。したがって,児童買春罪は常に児童に淫行をさせる罪を補充する関係にあるとする所論は前提において失当である。加えて,多額の対償の供与の約束をして性行為に同意させることが直ちに児童の自由意思を失わせるものとはいい難く,関係証拠によれば,先に述べたとおり(前記第2の1),本件各児童買春行為は対償の供与の約束により児童がその意思によって応じたものと認められるから,法令の適用に誤りはなく(もとより本件事案が訴追裁量を逸脱した起訴であるとは認められない。),所論を採用することはできない。

(2)また,所論は,児童ポルノ製造罪についても,同様に,児童に淫行をさせる罪と補充関係にあって,原判示第3の2の行為は同罪に該当するとし(控訴理由第3),さらにこれを前提として原判示第3の1の児童買春罪と同第3の2の児童ポルノ製造舞とをいずれも児童に淫行させる罪1罪と評価すべき旨主張する(控訴理由第6)。
 しかしながら,児童ポルノ製造罪と児童に淫行をさせる罪とではその構成要件が明らかに異なり,補充関係にあるなどとは到底いえないから(児童買春罪と児童に淫行をさせる罪との関係については(1)で述べたとおりである。),所論は前提を誤っていて失当である(なお,以上に述べたところからすれば,児童買春罪,児童ポルノ製造罪が成立するときには常に児童に淫行をさせる罪が成立するとし,児童買春罪,児童ポルノ製造罪を独立の罰則として制定する必要は全くないなどとする主張(控訴理由第16)も理由がないことは明らかである。)。そして,関係証拠によれば,原判示第2ないし第4の各行為については,児童買春ないし児童ポルノ製造罪が成立すると認められるから,上記各行為につき,証拠上児童に淫行をさせる罪が成立することは明らかであるとし,裁判所には検察官に対し訴因変更を命じ又はこれを促すべき義務があるのにこれをしなかったことに訴訟手続の法令違反(審理不尽)があるなどとの主張(控訴理由第18)も失当であって採用できない。

(3)所論は,原判示第3の1の買春行為がビデオで撮影しながら行われたものであることから,上記児童買春罪と原判示第3の2の児童ポルノ製造罪とは観念的競合となるともいうが(控訴理由第21),両罪の行為は行為者の動態が社会見解上1個のものと評価することはできないから,採用することはできない(なお,所論が原判示第3の2の児童ポルノ製造罪の罪数に関して主張する点(控訴理由第4)は,そもそも本件では被撮影者は1人しかいないのであるから,問題とならない。)。

(4)以上のほかにも,弁護人は,原判決の理由の記載について種々論難するが(控訴理由第2及び第5など),いずれも理由がない。

第4 控訴趣意中,量刑不当の論旨(控訴理由第20)について
 論旨は,要するに,被告人を懲役2年の実刑に処した原判決の量刑は重すぎるというのである。そこで,原審記録を調査して検討する。本件は,不特定の客8名に対するわいせつビデオテープの販売,児童3名に対する買春行為及びうち1名の児童を被写体とする児童ポルノの製造という,わいせつ図画販売,児童買春及び児童ポルノ製造の各事案であるが,もとより動機に酌量すべき点は認められない。その態様をみるに,わいせつ図画販売では,インターネットのメールクラブの掲示板に広告を出すなどして手広くわいせつビデオテープを販売したというもので,計画的かつ常習性の認められる悪質なものであり,児童買春及び児童ポルノ製造では,精神的に未熟な15歳あるいは16歳の児童に対し,高額な対償供与を餌に性交等に及んだというもので,その内容も破廉恥極まる悪質なものである。原判決説示のとおり,対償供与を反故にする態様も卑劣であって,児童買春の相手方となった児童の心身に与えた悪影響も重大といわざるを得ない。しかるに原判決までには,謝罪の手紙を一部児童の母親あてに出したとする以外は,これら児童に対し何らの慰蒋の措置も請じられていない。以上によれば,被告人の刑事責任は重い。そうすると,被告人は本件各犯行を反省していること,前科はないことなど,所論が指摘し,記録上藩められる被告人のために酌むべき事情を考慮しても,その宣告時点でみる限り,原判決の量刑が重すぎて不当であるとはいえない。
 しかしながら,当審における事実取調べの結果によれば,原判決後,児童買春の相手方となった児童らの保護者のうち弁償金受額の意思を示した者1名に対し30万円を支払い,その余の者らに対する弁償金支払の代わりとして,合計60万円の購罪寄附をしたこと,原判決を受けて被告人はさらに反省を深めていることなどの事情が認められる。そこで,原判決当時から存在した前記諸事情に原判決後に生じた上記事情を併せて考察すると,犯行の件数,態様などからして,現時点においてもなお本件は執行猶予を付すべき事案とはいえないが,原判決の量刑はその刑期の点で重すぎるに至ったというべきである。
 よって,刑訴法397条2項により,原判決を破棄した上,同法400条ただし書により,当裁判所において更に判決する。原判決がその挙示する証拠により認定した事実に,原判決の適用した法令(ただし,「1罰条」の「判示第2の所為」の項中,「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条」とあるのを「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号」と,同「判示第3の1(1)及び(2),第4の1及び2の各所為」の項中,「それぞれ包括して同法律4条」とあるのを「それぞれ包括して同法律4条,2条2項1号」とそれぞれ改める。)を適用(刑種の選択及び併合罪加重を含む。)し,その処断刑期の範囲内で被告人を懲役1年10か月に処し,刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中90日をその刑に算入し,押収してある8ミリビデオカセットテープ2本(原庁平成13年押第13号の1,2)は,判示第1の犯罪行為を組成した物で被告人以外の者に属しないから(なお,上記各テープについて,共犯者は所有権を放棄している。),同法19粂1項1号,2項本文を適用してこれらを没収することとして,主文のとおり判決する。
平成14年3月28日
名古屋高等裁判所金沢支部第2部
裁判長裁判官安江勤
裁判官源孝治
裁判官入江猛

 医道審議会

 医療従事者による刑事事件の弁護にあたっては、刑事処分と行政処分をセットで考えてください。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/07/s0729-8.html
医道審議会医道分科会議事要旨


1.日時 平成16年7月29日(木) 午後5時00分〜午後8時40分


2.場所 厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎第5号館17階)


3.出席者 (委員) 岩井宜子、植松治雄、片山 仁、鎌田 薫、見城美枝子、赫 彰郎、堀田 力、山路憲夫


厚生労働省) 岩尾医政局長、岡島審議官、原総務課長、中垣医事課長、
山内歯科保健課長、宮澤試験免許室長、
田原医師資質向上対策室長他



4.議事要旨

○医師・歯科医師行政処分について

(1 )医師20名、歯科医師13名に対する行政処分について諮問がなされ、審議の結果、医師19名、歯科医師11名に対する行政処分を行うとともに、医師1名、歯科医師2名については、行政指導(戒告)を行う旨の答申がなされた。

[答申の概要] (医師) 19件
医師免許取消 … 2件 ( 建造物等以外放火・業務妨害1件、準強制わいせつ・業務上過失傷害1件)

医業停止 4年 … 2件 ( 収賄1件、詐欺・診療報酬不正請求1件)

医業停止 3年 … 1件 ( 収賄

医業停止 2年 … 1件 ( 大麻取締法違反)

医業停止 1年6月 … 1件 ( 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反)

医業停止 1年 … 3件 ( 業務上過失致死3件)

医業停止 10月 … 1件 ( 業務上過失致死)

医業停止 6月 … 4件 ( 結核予防法違反1件、診療報酬不正請求3件)

医業停止 3月 … 3件 ( 県暴力的不良行為等防止条例違反1件、銃砲刀剣類所持等取締法違反1件、窃盗1件)

医業停止 1月 … 1件 ( 診療報酬不正請求)


歯科医師) 11件
歯科医師免許取消 … 1件 ( 準強姦未遂)

歯科医業停止 4年 … 1件 ( 詐欺)

歯科医業停止 3年 … 1件 ( 覚せい剤取締法違反)

歯科医業停止 1年6月 … 2件 ( 大麻取締法違反1件、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反1件)

歯科医業停止 6月 … 2件 ( 業務上過失致死1件、業務上過失致死・道路交通法違反1件)

歯科医業停止 3月 … 2件 ( 道路交通法違反・業務上過失傷害1件、名誉毀損1件)

歯科医業停止 2月 … 1件 ( 診療報酬不正請求)

歯科医業停止 1月 … 1件 ( 診療報酬不正請求)



(2 )事務局から、行政処分の対象としなかった医師36名、歯科医師1名について行政指導(戒告)を行う旨の報告がなされた。



○その他

(1 )行政処分の対象とする刑事事件とならなかった医療過誤等への対応状況について報告がなされた。


(2 )富士見産婦人科病院損害賠償請求事件最高裁判所判決について報告が行われ、議論がなされた。


問い合わせ先 : 厚生労働省医政局医事課
担当 : 手島(内2576)
電話 : (代)03−5253−1111

児童ポルノの児童は実在することを要する?

 児童ポルノ法は、児童福祉法の特別法として位置づけて、生身の児童を保護する立法として育てたいと考えています。
 擬似児童ポルノを規制したい奴も規制されたくない奴も、よその土俵で戦ってくれということです。漫画とかアニメとかcgとか・・・。

 なかなか公刊物には掲載されませんが、児童ポルノ法に詳しい実務家には有名な判決がありますので紹介します。

 大阪高裁H12では立法趣旨から実在性の要件を導いています。立法趣旨を変えないと、擬似児童ポルノは入れられないことになります。

平成一二年一〇月二四日宣告 裁判所書記官 池 田 豊
平成一二年(う)第六四九号
弁護人奥村弁護士
2 法二条一項について(控訴理由第7、第17)
児童ポルノも表現行為の一形態であるところ、表現行為を制限する法令の規定が非常に包括的な場合には、憲法上保護された表現の自由が不当に制約されるおそれがあるから、「より制限的でない他の規制手段」が考えられる場合には、それによらなければならない。ところで、婚姻可能年齢は、民法上男子は一八歳、女子は一六歳とされており(民法七三一条)、また、刑法上の性的行為に同意することが可能な年齢は、一三歳とされている(刑法一七六条、一七七条)のであるから、少なくとも一六歳以上の女子には、法律上、性的な行為に同意する能力があり、性的自己決定権があるというべきである。法二条一項は、一八歳未満の者をすべて児童とした上、これを一律に児童ポルノ法における規制対象としているが、右のように、児童のうちで性的自己決定権を有する者がいることに配慮すると、児童の年齢に応じて規制方法を変えるというように、「より制限的でない他の規制手段」を採ることを考えるべきである。したがって、法二条一項は、表現の自由に対する過度に広範な規制であり、憲法二一条に違反している。また、後記のとおり、児童ポルノ法においては、児童ポルノの製造行為も処罰されることになっているのであるから、法二条一項が、一律に一八歳未満の者をもって児童としているのは、性的自己決定権を有する児童が性的な表現を含むビデオに出演する権利を不当に侵害するものであり、同条項は、憲法一三条にも違反する、という。
しかし、児童ポルノ法は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為などにより心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的としている(法一条)ところ、児童買春の当事者となったり、児童をポルノに描写することは、その対象となった児童自身の心身に有害な影響を与えるのみならず、そのような対象となっていない児童においても、健全な性的観念を持てなくなるなど、児童の人格の完全かつ調和のとれた発達が阻害されることにつながるものであるから、児童ポルノ法は、直接的には児童買春の対象となった児童や児童ポルノに描写された児童の保護を目的とするものであるが、間接的には、児童一般を保護することをも目的としていると解される。したがって、このような同法の立法趣旨にかんがみると、一八歳未満の者を一律に児童とした上で、児童買春や児童ポルノを規制する必要性は高いというべきであるから、法二条一項が表現の自由に対する過度に広範な規制を定めたものとはいえないし、また、そのために所論にいわゆる児童の性的自己決定権が制約されることになっても、その制約には合理的な理由があるというべきであるから、同条項が憲法一三条に違反するともいえない。
法二条三項について(控訴理由第8ないし第12、第14、第15)
 所論は、法二条三項によって規制対象とされる児童ポルノとは、被撮影者となつている子供の人権を救済し、保護するという児童ポルノ法の規制目的に照らすと、被撮影者の氏名、住所が判明しているまでの必要はないにしても、具体的に特定することができる児童が被撮影者となっている場合に限るとすべきであるのに、同条項において、そのような特定を要求していないのは、表現の自由に対する過度に広範な規制というべきである、という。
しかし、前記2において説示したような児童ポルノ法の立法趣旨、すなわち、同法が、児童ポルノに描写される児童自身の権利を擁護し、ひいては児童一般の権利をも擁護するものであることに照らすと、児童ポルノに描写されている児童が実在する者であることは必要であるというべきであるが、さらに進んで、その児童が具体的に特定することができる者であることまでの必要はないから、所論のような規定が設けられていないからといって、法二条三項が、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。
 所論は、児童ポルノの被撮影者は、一見児童であるように見えても、一八歳以上の者である場合があり得るから、検察官は、被撮影者となっている児童が存在し、その者が児童であることを積極的に立証する必要があるのに、法二条三項にその旨が明記されていないのは、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものであって、憲法二一条に違反する、という。
しかし、所論の指摘するような構成要件該当事実について検察官に立証責任があることは、刑訴法上当然であるから、法二条三項に所論指摘のような規定が設けられていないからといって、同条項が、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。 
 所論は、規制対象となる児童ポルノについて、法二条三項は、「写真、ビデオテープその他の物」で法二条三項各号のいずれかに該当するものとしているが、児童の権利を擁護するという立法目的に照らすと、規制対象とすべき児童ポルノは、被撮影者が実在する特定の児童であることが明らかである写真及びビデオテープに限られるべきであるのに、同条項において、「その他の物」を含むとしているのは、例えば、抽象画から漫画まで広がりがあり、実在する特定の児童を描いたものであるか否か判然とせず、したがって規制対象に当たるかどうかの判断が恣意的になされる危険性が高い絵画まで含むことになるから、法二条三項は、表現の自由を過度に広範に規制するものであって、憲法二一条に違反する、という。
しかし、児童が視覚により認識することができる方法により描写されることによる悪影響は、写真、ビデオテープに限られず、所論の指摘する絵画等についても同様であるから、法二条三項が表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。
 所論は、①法二条三項二号、三号は、児童ポルノとして規制の対象とされる児童の姿態の描写について、いずれも「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件を設けてこれを限定しているが、性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうかを通常人が客観的に判断することは難しく、その判断基準は曖昧である。また、右の要件を、刑法上のわいせつの概念である「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」という要件と対比すると、「いたずらに」という限定がないため、表現が性的に過度であることが要件とされておらず、規制の対象が広がっている。これらの点において、法二条三項二号、三号は、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものであって、憲法二一条に違反する。②また、法二条三項二号、三号にいう「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かを客観的に判断することは困難である。
通常人は、児童の裸体等に性的興奮を覚えたり、それから刺激を受けたりしないのであるから、通常人を基準としてこれを判断するのであれば、児童ポルノに当たるものはなくなるし、また、子供の性に対して特別に過敏に反応する者を基準としてこれを判断することは、通常人を名宛人とする法規範の解釈としては許されない。したがって、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かの判断基準が明確ではないのに、これを要件とする法二条三項二号、三号は、漠然として不明確な規定であるから、憲法二一条に違反するものであり、かつ、刑罰法規の明確性を要請する「憲法三一条にも違反するものである、という。
しかし、わいせつ物頒布等の罪を規定した刑法一七五条は、社会の善良な性風俗を保護することを目的とするものであるから、同条におけるわいせつの概念としては、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するほどに著しく性欲を興奮、刺激せしめることを要するとされるのに対し、児童ポルノ法は、すでに前記2等において説示したとおり、児童ポルノに描写されることの害悪から当該児童を保護し、ひいては児童一般を保護することを目的とするものであるから、著しく性欲を興奮、刺激せしめるものでなくとも、児童ポルノの児童に与える悪影響は大きく、したがって処罰の必要性が高いと考えられること、すなわち、両者の保護法益ないし規制の対象に自ずから相違があることなどに照らすと、所論の指摘するところを考慮しても、法二条三項二号及び三号が、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものとはいえないし、また、わいせつの概念が所論①のようなものであるにもかかわらず、刑法一七五条が憲法二一条及び三一条に違反するものでないとされていること(最高裁判所昭和五八年一〇月二七日判決刑集三七巻八号一二九四頁、同昭和五四年一一月一九日決定刑集三三巻七号七五四頁等参照)などからしても、法二条三項二号及び三号が、漠然として不明確な規定といえないことは明らかである。
所論は、①表現行為を制限する立法については、立法の趣旨、目的とそれを達成するための規制手段との間に合理的関連性があることが要求される。児童ポルノ法の立法目的は、法一条に記載されているとおり、児童に対する性的搾取や性的虐待等の防止にある。ところで、一般的にいえば、性的虐待とは相手の意思を無視して暴力的あるいは強制的に行われる性的行為をいうが、児童の中でも高年齢のものは、性的自己決定能力を備えているのであるから、「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為」一般が、法一条にいう児童の性的搾取や性的虐待に当たるとはいえない。したがって、児童ポルノとして規制すべき対象物を定めるに当たっては、右のような性的虐待につながるものであること、すなわち、被撮影者の意思に反するものであることを要件とすべきである。しかるに、法二条三項一号が、被撮影者の意思に反することを構成要件としていないのは、立法目的とそれを達成するための規制手段との間に合理的関連性を欠いているというべきである。②また、法二条三項二号、三号についても、被撮影者の意思に反することを要件としていない点において、法一条の立法目的との合理的関連性を欠いているというべきである、という。
しかし、前記2等において説示したような児童ポルノ法の立法の趣旨、目的、ことに同法が、児童買春の対象となったり、児童ポルノに描写された児童の保護だけでなく、児童一般の保護をも目的としていることに照らすと、法二条三項各号が、児童ポルノで描写された被撮影者の意思に反することを要件としていなくとも、立法目的と規制手段との間に合理的関連性を欠くとはいえない。
4 法七条二項における規制対象行為について(控訴理由第13)
所論は、法七条二項は、児童ポルノの製造、所持、運搬についても処罰することとしているが、これらの行為を禁じても、児童虐待を防ぐという立法目的を達成することはできないから、これらの行為をも処罰する法七条二項は、表現の自由に対する過度に広範な規制というべきであり、憲法二一条に違反する、という。
ところで、法七条二項は、同条一項所定の、児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与又は公然陳列の目的による児童ポルノの製造、所持、運搬等の行為を処罰するものであるところ、右各行為は、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず、このような行為により児童ポルノが社会に広がるときには、児童を性欲の対象として捉える風潮を助長するとともに、身体的、精神的に未熟である児童一般の心身の成長にも重大な悪影響を与えることになり、前記児童ポルノ法の立法の趣旨、目的にもとることになるものである。したがって、同条一項所定の製造、所持、運搬等の行為を処罰する必要性は高いというべきであるから、法七条二項において、右各行為を処罰の対象としていることが、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。
5 各所論はいずれも採用することができない。


 金沢支部曰く、児童の定義からして、生身の児童だと解釈するわけですから、擬似ポルノをこの法典に入れるのは無理です。

名古屋高等裁判所金沢支部
平成14年3月28日
平成13年(う)第78号
弁護人奥村弁護士
(3)所論は,児童買春処罰法により規制される児童ポルノ(同法2粂3項)は,実在する児童が被写体となった視覚的表現手段に限るべきものであるところ,同条項では児童の実在性が明文化されておらず,萎縮効果のおそれがあるから,憲法21条に違反するという(控訴理由第8)。確かに,上記「児童ポルノ」は実在する児童を被写体としたものと解すべきであるが,この点は児童買春処罰法2条1項の「児童」が18歳に満たない者と定義され,これを用いて児童ポルノも定義づけられていることからすると,児童の実在を前提とする趣旨は明確となっているというべきである。所論は採用できない。


mac判決の原田さんもこう判示している。
175条との法条競合説は保護法益を明示させるための夏井教授の提案です。

東京高裁平成15年6月4日宣告
平成15年(う)第361号
弁護人奥村弁護士
2 罪数関係の誤りをいう論旨について(控訴理由第8,第11,第13,第14)
所論は,
児童ポルノ罪は,個人的法益に対する罪であるから,被害児童毎に包括して一罪が成立し,製造・所持は販売を目的としているから,製造罪,所持罪,販売罪は牽違犯であり,これらはわいせつ図画販売罪・わいせつ図画販売目的所持罪と観念的競合になり,結局,一罪となるが,原判決は,併合罪処理をしており,罪数判断を誤っている(控訴理由第8),
児童ポルノ罪とわいせつ図画等に係る罪とは法条兢合(特別関係)により児童ポルノ罪のみが成立する(控訴理由第11),
児童ポルノ販売罪の保護法益は描写された者の個人的法益であるから,罪数も侵害された法益の個数を基準とすべきであり,販売罪は5罪が成立し併合罪となるのにこれを包括一罪とした原判決は法令解釈を誤っている(控訴理由第13),
④原判決は,児童ポルノ製造罪について撮影行為を基準に1回1罪としているが,弁護人の主張に対する判断では媒体を基準にして罪数を判断すべきであると判示しており,理由齟齬であり,また,MOに関しては1個しか製造していないから,撮影行為が何回に及んでも1個の製造罪であり,ビデオテープは12本製造されているから12罪であって,法令解釈の誤りがある(控訴理由第14)などという。
 まず,①の点は,児童ポルノ製造罪及び同所持罪は,販売等の目的をもってされるものであり,販売罪等と手段,結果という関係にあることが多いが,とりわけ,児童ポルノの製造は,それ自体が児童に対する性的搾取及び性的虐待であり,児童に対する侵害の程度が極めて大きいものがあるからこそ,わいせつ物の規制と異なり,製造過程に遡ってこれを規制するものである。この立法趣旨に照らせば,各罪はそれぞれ法益侵害の態様を異にし,それぞれ別個独立に処罰しようとするものであって,販売等の目的が共通であっても,その過程全体を牽連犯一罪として,あるいは児童毎に包括一罪として,既判力等の点で個別処罰を不可能とするような解釈はとるべきではない。
 もっとも,わいせつ図画販売目的所持罪と同販売罪とは包括一罪であるから,結局,原判示第2ないし第4の各罪は一罪として評価されるべきであり,この点で原判決には法令の適用を誤った違法があるが,処断刑期の範囲は同一であるから,判決に影響を及ぼすものではない。
 ②の点は,児童ポルノ販売罪等は,その行為が,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず,これが社会にまん延すると,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えることなどを理由に処罰しようとするものであって,性的秩序,風俗を害することを防止しようとする刑法のわいせつ図画に係る罪とは処罰根拠が異なるだけでなく,児童ポルノに該当するものでも,わいせつ図画には該当しない場合もあるから,所論のいうように両罪が法条兢合(特別関係)にあるとは認められない。
 ③の点は,原判決には所論のいうような誤りはなく,所論は原判決を正解しないものである。
 ④については,一個の機会に撮影して製造した物は一罪と解するべきであるが,本件のMOについては,全く別の機会に製作されたファイルが追加記録されているのであるから,媒体は同一でも追加記録は別罪を構成するものというべきである。原判決の「弁護人の主張に対する判断」の1は,画像データが同一でも別の媒体に複写すれば製造に当たる旨を説示したにすぎず,媒体が同一であれば一罪になる旨判示したものではなく,所論は原判決を正解しないものといわざるを得ない。

 微罪・軽罪じゃないし表現の自由にも関係しますから、解釈を固めておく必要があります。
 ほとんど控訴棄却判決ですが、1事件1論点という具合にこうやって判例を積んでいるわけです。
 改正法にも影響が出ていて、少しはフィードバックされていると思います。
 どんな主張・立証をすれば、こんな判示が引き出せるのかは、屁理屈弁護人の企業秘密です。

名古屋高裁金沢支部h14.3.28

 破棄減刑ですから、弁護人にはいい判決です。
「代償の供与の約束は形式的で足りる」というのは納得できないのですが、
「被害弁償で減刑」とか「真剣交際は児童買春罪ではない」とか使える判示ありますよね。

強姦罪の手段たる暴行脅迫が買春罪からははみ出すので「強姦罪等とは構成要件を異にしていて,児童買春罪等が強姦罪等と不可分の一体をなすとはいえず」というんですが、12歳未満の場合は「姦淫」だけですから重なります。

名古屋高等裁判所金沢支部
平成14年3月28日宣告裁判所書記官久保守
平成13年(う)第78号
判決
上記の者に対するわいせつ図画販売,児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春処罰法」ともいう。)違反被告事件について,平成13年9月14日金沢地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官村主意博出席の上審理し,次のとおり判決する。

主文
原判決を破棄する。被告人を懲役1年10か月に処する。
原審における未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
押収してある8ミリビデオカセットテープ2本(原庁平成13年押第13号の1,2)を没収する。

理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成名義の各控訴趣意書(平成13年11月13日付け並びに「その2」,「その3」及び「その4」と題するもの),各控訴理由補充書(平成14年1月15日付け及び「最終」と題するもの。なお,各補充書中,控訴理由第23「訴訟手続の法令違反」の項は,職権発動を求める趣旨である。)のとおりであり(なお,弁護人は,同月17日付け及び同月18日付け各控訴理由補充書は陳述しない旨当審第1回公判期日において釈明した。),これに対する答弁は検察官村主意博作成名義の答弁書のとおりであるから,これらを引用する。

第1 控訴趣意中,事実の誤認の論旨(控訴理由第19)について
 所論は,原判決は,原判示第2,第3の1及び第4の各児童買春行為について,対償の供与の約束をしたことを認定したが,証拠によれば,被告人にはこのような高額な対償を支払う意思はなく,詐言であったことが明らかであるとし,このような場合には児童買春処罰法2粂2項にいう代償の供与の約束をしたことには当たらないから,同法4条の児童買春罪(以下,単に「児童買春罪」という。)は成立しないという。
 しかしながら,児童買春は,児童買春の相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであることから規制の対象とされたものであるところ,対償の供与の約束が客観的に認められ,これにより性交等がされた場合にあっては,たとえ被告人ないしはその共犯者において現実にこれを供与する具体的な意思がなかったとしても,児童の心身に与える有害性や社会の風潮に及ぼす影響という点に変わりはない。しかも,規定の文言も「その供与の約束」とされていて被告人らの具体的意思如何によってその成否が左右されるものとして定められたものとは認め難い。対償の供与の約束が客観的に認められれば,「その供与の約束」という要件を満たすものというべきである。関係証拠によれば,原判示第2,第3の1及び第4のいずれにおいてもそのような「対償の供与の約束」があったと認められる。所論は採用できない(なお,所論は,形式的な「対償の供与の約束」でよいというのであれば,準強姦罪で問うべき事案が児童買春罪で処理されるおそれがあるとも主張するが,準強姦罪は「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて姦淫した」ことが要件とされているのに対し,児童買春罪では対償を供与することによって性交等する関係にあることが必要であって,両者は明らかにその構成要件を異にするから,所論を採用することはできない。)。

第2 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の論旨(控訴理由第4及び第23)について
1 所論は,原判示第2ないし第4の各行為は,被害者らの真摯な承諾なく抗拒不能の状態でされたもので,強姦,準強姦,強制わいせつ,準強制わいせつ罪に当たるとし,いずれについても被害者らの告訴はなく,親告罪たる強姦罪等の一部起訴は許されないから,本件起訴は違法であって訴訟手続の法令違反があるという(控訴理由第23)。
 しかしながら,児童買春罪や児童買春処罰法7条2項の児童ポルノ製造罪(以下,単に「児童ポルノ製造罪」という。)は親告罪ではなく,しかも強姦罪等とは構成要件を異にしていて,児童買春罪等が強姦罪等と不可分の一体をなすとはいえず,原判示第2ないし第4が強姦罪等の一部起訴であるとはいえないから,告訴欠如の如何を論ずるまでもなく(最高裁昭和28年12月16日大法廷判決・刑集7巻12号2550貢参照),所論は失当である。なお,被告人の捜査段階及び原審公判の供述,共犯者の捜査段階の供述並びに被害者らの各供述によると,被告人らが被害者らに対して,畏怖させるような脅迫言辞を申し向けたことは認められない上,被害者らが性交等に及ぶ際あるいはその後の被告人らとのやりとりをみると,被害者らが恐怖心もあって買春に応じたと述べる部分もあるものの,他方で,買春行為の後,明日は行かないから,1日目の分だけお金を払って欲しい旨の電子メールを被告人に送信したり(原判示第2),これだけ恥ずかしい思いをしたのだからお金はもらって当然と思い,振込みでなく現金で欲しい旨申し出,受取りのため被告人が説明した場所に赴いたり(同第3の1),2度にわたって性交等に応じ,しかも2度目の際被告人に名刺を要求してこれを受け取り,記載してあった電話番号に電話をかけたり(同第4)していることなどが認められ,これら言動からすると,所論指摘の点を踏まえても,被害者らは対償の供与の約束により買春行為に応じたものと認めるのが相当であり,各被害者が抗拒不能の状況にあったということはできない。

2 また,所論は,起訴状の公訴事実や原判決の罪となるべき事実に被撮影者の氏名を掲げることが,児童買春処罰法12条1項に違反し,訴訟手続の法令違反があるなどともいうが(控訴理由第4),訴因の特定や被告人の防御の観点からして何ら違法ではなく,所論は失当である。

第3 控訴趣意中,法令の適用の誤り等の論旨(控訴理由第1ないし第18及び第22)について
1 児童買春処罰法が憲法,条約上の規定に違反する旨の各所論(控訴理由第7ないし第15,第17及び第22)について
(1)所論は,児童ポルノ憲法21条の表現の自由の範疇にあるとし,児童買春処罰法が処罰対象とする児童の年齢を一律18歳末満としている点は,刑法上の性的同意年齢が13歳とされ,民法上の婚姻年齢も女子は16歳とされていること,高年齢の児童の場合は自己決定能力を備えているから,必ずしも児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為がすべて児童に対する性的搾取,性的虐待であるとは限らないことからすると,必要以上の,あるいは立法目的に照らし合理的関連性を欠く過度に広範な規制であって,児童ポルノ製造罪の規定は憲法21条1項に違反し(控訴理由第7及び第10),また憲法13条の児童ポルノに出演する児童の自己決定権を侵害するもので(控訴理由第13),無効であるという。
 しかしながら,性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を描写するなどした児童ポルノを製造,頒布等する行為は,第1で述べた児童買春同様,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象ととらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであり,そのためかかる行為が規制されたものであるところ,このような規制の趣旨目的に照らせば,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とすることは,身体的及び精神的に未熟である児童の自己決定権を制約する部分があるとしても,合理的な理由があるというべきであり,また表現の自由などとの関係においても必要以上の,あるいは立法目的に照らし合理的関連性を欠く過度に広範な規制であるとはいえないから,所論指摘の憲法の各条項に違反するものということはできない。

(2)また,所論は,児童買春罪の規定についても,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とする点で,また規定の文言上対償を伴うすべての性交等が処罰対象とされていて真剣な交際でも代償を供与すれば本罪に当たることとなる点で,過度に広範に性行為に関する児童の自己決定権を侵害するから憲法13条に違反するという(控訴理由第15)。
 しかしながら,第1で述べた規制の趣旨目的に照らせば,単なる性交等ではなく,金銭等の対償を供与し,又はその供与の約束をして,児童に対し,性交等する児童買春について,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とすることには合理的な理由があるというべきであり,また「対償の供与」とは,児童に対して性交等することに対する反対給付として経済的利益等を供与することを意味するところ,児童買春処罰法1条の制定の目的を併せ考慮すれば,所論指摘のような真剣な交際の場合がこれに当たるとはいえないから,所論はその前提を誤っていて採用することはできない。

(3)所論は,児童買春処罰法により規制される児童ポルノ(同法2粂3項)は,実在する児童が被写体となった視覚的表現手段に限るべきものであるところ,同条項では児童の実在性が明文化されておらず,萎縮効果のおそれがあるから,憲法21条に違反するという(控訴理由第8)。確かに,上記「児童ポルノ」は実在する児童を被写体としたものと解すべきであるが,この点は児童買春処罰法2条1項の「児童」が18歳に満たない者と定義され,これを用いて児童ポルノも定義づけられていることからすると,児童の実在を前提とする趣旨は明確となっているというべきである。所論は採用できない。

(4)所論は,児童ポルノ製造罪に関し,「児童ポルノ」を限定する要件として「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という文言を児童買春処罰法2条3項2号及び3号の中で用いているが,この限定はあいまいで対象が拡大するおそれがあり,しかも「わいせつ」概念に閲し最高裁判例(昭和26年5月10日判決・刑集5巻6号1026貢)が示した基準と比較しても,「いたずらに」という点や「普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する」という点を要求していないから,明らかに過度に広範な規制として(控訴理由第9),また誰を基準としてその要件を判断するのかが読み取れないから漠然不明確である,ないしは児童ポルノが一般人の性欲を刺激するとはいえずこのような要件を含む内容を規定すること自体許されないなどとして(控訴理由第11及び第12),それぞれ憲法21粂,31条1項に違反するなどという。
 しかしながら,原判示第3の2の児童ポルノ製造行為は,児童買春処罰法7条3項1号に該当する児童ポルノを製造したとして起訴され,原判決もその旨を藩定したことが明らかであるから(原判示第3の2では「児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により,描写した児童ポルノ」とされている。),同項2号又は3号の文言について種々論難する上記各主張(もとより上記各号に関する主張が法令全体の無効を来す類のものとも解されない。)はいずれも本件においては失当である(なお,付言するに,刑法175条の「わいせつ」の文言と比べても,児童貞春処罰法2条3項の「児童ポルノ」は各号ともにその内容が具体的に定義されていて,あいまいであるとはいえず,また児童ポルノの性質上,「いたずらに」とか,「普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する」を要しないとすることには合理性が諷められるから,その要件が過度に広範であるということはできない。また,誰を基準として判断するかの点についても,刑法における「わいせつ」概念と同様,「一般人」を基準として,その性欲を興奮させ又は刺激するものと解すべきことは一般人を対象とする法規範としての性質上明らかであり,また児童ポルノで奉るからといって,一般人の性欲を興奮させ又は刺激することがないとはいえないというべきである。)。
 また,所論は,児童買春処罰法2条2項の,性交等の定義の中の「性交類似行為」とは何かが漠然不明確であるから,同条項は憲法31条に違反するともいう(控訴理由第22)。しかし,その文言からすれば,その意義は,異性間の性交とその態様を同じくする状況下における,あるいは性交を模して行われる手淫・口淫行為,同性愛行為など,実質的にみて性交と同視し得る態様における性的な行為をいうものと解されるから,同条に違反し無効であるとはいえない。

(5)さらに,所論は,児童の権利に関する条約12条の意見を表明する権利,31条の文化的生活等に参加する権利においては,児童の年齢に応じた取扱いを求めているとし,児童買春及び児童ポルノ製造についても,同様に解すべきであるから,一律に18歳未満の者を対象とした児童買春処罰法は上記規定に反するものであるという(控訴理由第14)。
 しかし,そもそも児童買春,児童ポルノ製造行為が上記の意見を表明する権利や文化的生活等に参加する権利として保障されているとは読みとれないし,児童買春処罰法の趣旨目的からして,同法が同条約の上記規定に反するものであるとは到底解されず,所論指摘の見解は独自のものというべきであって採用の限りでない。

(6)所論は,児童買春罪と児童福祉法60条1項の児童に淫行をさせる罪」(以下,単に「児童に淫行をさせる罪」という。)とが併存していることによって,ある行為がどちらで処罰されるのかが通常の判断能力を有する一般人において判断することができず,刑罰法規についての予見可能性を損なうから,罪刑法定主義憲法31条)に違反するという(控訴理由第17)。しかし,それぞれの規定における構成要件の内容からすると,一般人の立場において,両者のどちらに,あるいはその双方に該当するか否かの判断は可能というべきであるから,所論は採用できない。

2 児童買春罪,児童ポルノ製造罪と児童に淫行をさせる罪との関係等について(控訴理由第1ないし第6,第16,第18及び第21)
(1)所論は,児童買春罪と児童に淫行をさせる罪とは,行為態様で区別され,後者が成立しない場合に前者が成立するという補充関係にあるとし,本件犯行のように多額の代償を約束して同意を得て性交ないし性交類似行為をするのは児童の純然たる自由意思によるものではなく,児童に淫行をさせる罪に当たり児童買春罪は成立せず,本件各犯行に同罪を適用したことには法令の適用の誤りがあるなどという(控訴理由第1)。
 しかしながら,児童買春罪は,児童買春が児童の権利を侵害し,その心身に有害な影響を与えるとともに,児童を性欲の対象としてとらえる社会風潮を助長することになるため,これを処罰するものであるのに対し,児童に淫行をさせる罪は,国内における心身の未熟な児童の育成の観点から,児童に反倫理的な性行為をさせることがその健全な発育を著しく阻害するためこれを処罰するもので,その処罰根拠を異にし,しかも両罪の規制態様にも差異があることからすると,被告人自身が淫行の相手方になったと認められる場合にあって,その際通常伴われる程度の働きかけを超えて未成熟な児童に淫行を容易にさせ,あるいは助長,促進するといった事実上の影響力を与え淫行をさせる行為をしたと認められるようなときには,両罪に該当することもあり得ると解される。したがって,児童買春罪は常に児童に淫行をさせる罪を補充する関係にあるとする所論は前提において失当である。加えて,多額の対償の供与の約束をして性行為に同意させることが直ちに児童の自由意思を失わせるものとはいい難く,関係証拠によ