口腔性交等につき、不同意わいせつ罪の場合と区別し、不同意性交等罪として加重処罰することとされた刑法177条の規定は、憲法14条に違反しない。(東京高裁r07.10.16)
東京高裁r07.10.16は口腔性交と膣性交を比較して「性交と同等の身体接触」というのだが、オンラインで自慰させる場合は、道東の身体的接触がないから、合理的・相当性がないよね。
口腔性交等につき性交と同様の身体的接触を伴う性交渉としてこれを強いられて性的自由が侵害された場合の悪質性・重大性に鑑み、それらに至らない態様の不同意わいせつの場合と区別し、性交と同等のものとして厳重に処罰してこれを規制することとした立法目的は正当なものであり、また、不同意わいせつ罪の法定刑が6月以上10年以下の懲役(原判示の各行為当時)とされるのに対して口腔性交等を含む不同意性交等罪のそれが5年以上の有期懲役(前同)とされた刑罰加重の内容・程度も、その悪質性・重大性が性交と同等と考えられること等に鑑みると、上記立法目的達成の手段として合理性、相当性が認められる。したがって、不同意わいせつ罪の場合と区別し、不同意性交等罪として加重処罰することとされた刑法177条の規定は、憲法14条に違反しない。
書 誌》
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【文献番号】 25574974
【文献種別】 判決/東京高等裁判所(控訴審)
【裁判年月日】 令和 7年10月16日
【事件番号】 令和7年(う)第1040号
【事件名】 不同意性交等被告事件
【判示事項】 〔高等裁判所刑事判例集〕
口腔性交等についての刑法177条と憲法14条
【要旨】 〔高等裁判所刑事判例集〕
口腔性交等につき、不同意わいせつ罪の場合と区別し、不同意性交等罪として加重処罰することとされた刑法177条の規定は、憲法14条に違反しない。
【裁判結果】 棄却
【裁判官】 入江猛 瀧岡俊文 三浦隆昭
【掲載文献】 高等裁判所刑事判例集第77巻2号23頁(裁判所ウェブサイト掲載)
【参照法令】 刑法177条
日本国憲法14条
【備考】 第一審 令和7年5月22日東京地方裁判所立川支部令和7年(わ)第64号、令和7年(わ)第181号
【全文容量】 約10Kバイト(A4印刷:約6枚)《全 文》
【文献番号】25574974
不同意性交等被告事件
東京高等裁判所令和7年(う)第1040号
令和7年10月16日第6刑事部判決
【原審】令和7年(わ)第64号、令和7年(わ)第181号 令和7年5月22日 東京地方裁判所立川支部判決
主 文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中80日を原判決の刑に算入する。
理 由
第1 事案の概要及び控訴趣意(以下、原判決中の略称を用いる。)
本件は、被告人が、A及びBがいずれも16歳未満であり、同人らの生まれた日よりも自らが5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら、〔1〕令和6年10月にA(当時14歳)の、〔2〕同年11月にB(当時13歳)の各陰茎を、それぞれ自己の口腔内に入れて口腔性交に及んだという事案である。
本件控訴の趣意は、弁護人八戸孝彦(主任)及び古椎庸文共同作成の控訴趣意書記載のとおりであり、論旨は法令適用の誤り及び量刑不当の主張である。
第2 法令適用の誤りの主張について
1 論旨は、要するに、
(1)刑法177条の不同意性交等罪の法定刑(原判示の各行為当時5年以上の有期懲役)は不同意わいせつ罪のそれ(前同6月以上10年以下の懲役)よりも大幅に加重されているが、このような極端な法定刑の差異はいわゆるわいせつ行為の一種である「口腔性交」の規制として合理的な範囲を逸脱しており、また、
(2)同条3項が16歳未満の者に対して性交等をした場合を規定している点についても現在の性教育の普及、知的能力の向上の時代に16歳以上とその未満とで処罰の対象を分別する合理性に大きな問題があって、同項は法の下の平等(憲法14条)に反するものであるから、原判示各行為に対して不同意性交等罪の成立を認めた原判決は、法令の適用を誤っており、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであるというものと解される。
2 まず、(1)についてみると、平成29年改正(同年法律第72号)前の強姦罪は、同改正により強制性交等罪として構成要件の見直し及び法定刑の引上げが行われ、その後、令和5年改正(同年法律第66号)により不同意性交等罪としての処罰規定が整備されるに至っているが、平成29年改正の趣旨は、〔1〕従前の強姦罪は強制わいせつ罪の加重類型として女子に対する性交に限って処罰対象とされていたものの、肛門性交及び口腔性交について、被害者としては、自己の体内への他者の性器の挿入又は他者の体内への自己の性器の挿入という濃厚な身体的接触を伴う性交渉を強いられるものであって、その悪質性・重大性は性交と同等と考えられることから、これらについても性交と同じく加重処罰することとされるとともに、保護法益である性的自由ないし性的自己決定権が侵害され、身体的・精神的に重大な苦痛を受けることについて性差はないと考えられたことから、客体も女性に限らないこととされたものであり、また、〔2〕従前の強姦罪につき実務において法定刑の下限が懲役5年である強盗罪及び現住建造物等放火罪よりも重い量刑がされる事件の割合が高くなっている状況等を踏まえ、強姦罪の悪質性・重大性に対する社会一般の評価は、少なくとも強盗罪及び現住建造物等放火罪のそれらに対する評価を下回るものではないと考えられ、強姦罪の法定刑の下限は低きに失して、国民意識と大きく異なることとなっていると認められたことから、法定刑の下限を懲役5年に引き上げることとされたものである。
以上のように、口腔性交等につき性交と同様の身体的接触を伴う性交渉としてこれを強いられて性的自由が侵害された場合の悪質性・重大性に鑑み、それらに至らない態様の不同意わいせつの場合と区別し、性交と同等のものとして厳重に処罰してこれを規制することとした立法目的は正当なものであり、また、不同意わいせつ罪の法定刑が6月以上10年以下の懲役(原判示の各行為当時)とされるのに対して口腔性交等を含む不同意性交等罪のそれが5年以上の有期懲役(前同)とされた刑罰加重の内容・程度も、その悪質性・重大性が性交と同等と考えられること等に鑑みると、上記立法目的達成の手段として合理性、相当性が認められる。したがって、不同意わいせつ罪の場合と区別し、不同意性交等罪として加重処罰することとされた刑法177条の規定は、憲法14条に違反しない。
3 次に、(2)についてみると、刑法177条3項の立法趣旨は、性的行為に関して有効に自由な意思決定をするための能力の内実として、行為の性的な意味を認識する能力だけでなく、行為の相手方との関係において、行為が自己に及ぼす影響について自律的に考えて理解したり、その結果に基づいて相手方に対処する能力が必要であるところ、これらの能力が十分に備わるとみることができる年齢は早くとも16歳であり、13歳以上16歳未満の者は、前者の能力が一律に欠けるわけではないものの、後者の能力が十分でなく、相手方との関係が対等でなければ、有効に自由な意思決定ができる前提となる能力に欠けると考えられることから、その者に性的行為をすること自体で処罰されることとなる年齢を「13歳未満」から「16歳未満」に引上げつつ、相手方との間に対等な関係がおよそあり得ず、有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠ける場合に限って処罰する観点から、当該13歳以上16歳未満の者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者を処罰対象としたというものである。
これは心理学的・精神医学的知見等を踏まえ、上記の年齢の者の性的自由・性的自己決定権を保護する目的で制定されたものであり、その目的はもとより正当であり、その規制内容も、刑罰の謙抑性の観点から、双方の年齢が要件を満たすだけで、対等な関係がおよそあり得ず、有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠ける場合に限って処罰するように規定されているから、合理的で相当なものと解される。以上のような刑法177条3項の目的の正当性、規制内容の合理性、相当性に鑑みれば、同項の規定は、13歳以上16歳未満と16歳以上とで段階的な区別を設けている点を含め、憲法14条に違反しない。
4 以上のとおりであり、原判示の各行為につき刑法177条3項の不同意性交等罪が成立するとした原判決の法令の解釈・適用に誤りはない。論旨は理由がない。