児童ポルノ法2条3項2号の「性器」の概念について、「陰裂の内側にある器官、すなわち、陰核から小陰唇、大陰唇、膣前庭、膣口を含む領域(尿道口、会陰を含まない)のもの」とする弁護人の主張は失当であり、外陰部とされる恥丘から会陰を含む大陰唇、陰核、小陰唇、膣前庭、膣口ととらえることが妥当である(関東地方の事件の論告)(さいたま地方裁判所熊谷支部令和7年4月15日)

児童ポルノ法2条3項2号の「性器」の概念について、「陰裂の内側にある器官、すなわち、陰核から小陰唇、大陰唇、膣前庭、膣口を含む領域(尿道口、会陰を含まない)のもの」とする弁護人の主張は失当であり、外陰部とされる恥丘から会陰を含む大陰唇、陰核、小陰唇、膣前庭、膣口ととらえることが妥当である(関東地方の事件の論告)

 恥丘が性器だとすると、ビキニ型の水着だと「性器の周辺部」(3号)が露出している可能性が出てきます。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
第二条(定義)
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

関東地方の論告
9 「性器」(児童ポルノ法2条3項2号)の概念は、刑罰法規として明確であり、罪刑法定主義憲法31条)に反しないこと
(1)弁護人は、「性器」(児童ポルノ法2条3項2号)について、国語辞典においては、生殖器と説明されていること、裁判例においても「性器」の範囲をもっぱら「大陰唇、小陰唇、陰核の部分」を指しており、恥丘や陰裂を「性器」とするものはないことから、陰裂の内側にある器官、すなわち、陰核から小陰唇、大陰唇、膣前庭、膣口を含む領域(尿道口、会陰を含まない)のものであると主張する一方、被告人の「性器」の認識が~~~、一般の通常人が具体的場合に当該行為がその適用を受けるかどうかを判断することが可能な基準を示しているとはいえず、不明確である旨主張する。
(2)しかし、そもそも、生殖器とは、「生物の有性生殖を営む器官。高等生物では、生殖巣(精巣、卵巣)およびそれに付随する生殖輸管や交接器」(広辞苑第7版)とされており、「交接器」についても、交接(交尾)行動に関与する器官の総称であり、主として生殖に関連する機関である生殖器のうち、性差の外見的特徴をなす外性器のことを指す通称と解されている。
また、医学的観点においても、外性器のうち外陰の説明について、「左右の恥骨は正中線で恥骨結合をつくりますが、体表から皮層の膨らみとしてとらえることができ、恥丘から会陰にかけては1対の皮層の壁があり、これを大陰唇と呼びます。」(令和6年10月29日付け弁護人作成の主張書面(児童ポルノ該当性について)13頁参照)と説明されており、恥丘から会陰までを含めて大陰唇となされているものである。
さらに、弁護人が裁判例として例示する東京地判平成28年5月9日及び東京高判平成29年4月13日には、「大陰唇、小陰唇、陰核などの女性器」などと記載されており、女性器の対象を大陰唇、小陰唇、陰核に限定する趣旨とみなすことはできないものである。
以上のことからすれば、「性器」の概念について、「陰裂の内側にある器官、すなわち、陰核から小陰唇、大陰唇、膣前庭、膣口を含む領域(尿道口、会陰を含まない)のもの」とする弁護人の主張は失当であり、外陰部とされる恥丘から会陰を含む大陰唇、陰核、小陰唇、膣前庭、膣口ととらえることが妥当である(令和6年10月29日付け弁護人作成の主張書面(児童ポルノ該当性について)14頁に記載された「外陰部の形態」参照)。
(3)さらに、被告人が「性器」の認識について広く捉えていることをもって、一般の通常人が具体的場合に当該行為がその適用を受けるかどうかを判断することが可能な基準を示しているとはいえないという点についても、~~としても、「性器」の概念は、前記のとおり一般的に明確になっており、一般の通常人が具体的場合に当該行為がその適用を受けるかどうかを判断することが可能な基準を示しているといえるのであるから、被告人の認識が異なることのみをもって、一般の通常人が具体的場合に当該行為がその適用を受けるか.どうかを判断することが可能な基準を示しているとはいえないとするのは不合理である。

判決が公表されました

熊谷支部r0704015強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ被告事件
《書 誌》
提供 TKC
【文献番号】 25622685
【文献種別】 判決/さいたま地方裁判所熊谷支部(第一審)
【裁判年月日】 令和 7年 4月15日
【事件名】 強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 菱田泰信 岡井麻奈美 徳橋宏信

4 弁護人の主張〔4〕(性器に接触しているか否か)について
 陰裂は、性器である左右の大陰唇の外端が向かい合う所であるから性器の一部と言いうるところ、陰裂が社会通念上強い性的意味合いを有すること、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み、児童の権利を擁護するという児童買春、児童ポルノ処罰法の目的(同法1条)等にも照らせば、「性器」は陰裂の内側の器官に限るとする弁護人の主張は採用できず、陰裂自体も「性器」に当たると解するのが相当である。そして、判示第6、第7及び第9の各事実において弁護人が性器接触を争う画像データ(甲29・別表番号1、甲30・9頁、甲43・別表番号9)に描写された別紙A又は別紙Bの姿態は、被告人が別紙A又は別紙Bの陰裂の内側には触れていないものの、その左手が着衣を脱いで露出した別紙A又は別紙Bの陰裂部分に直接触れていると認められるから、判示第6及び第9の各事実には児童ポルノ製造罪が、判示第7事実には児童ポルノ公然陳列罪がそれぞれ成立する。
5 弁護人の主張〔5〕(「陰部」、「性器」及び「胸部」の定義が不明確であるか否か)について
 同項2号の「性器」該当性は、具体的事案において一般人が社会通念に照らして判断可能であるから、「性器」の概念が刑罰法規として不明確で罪刑法定主義に違反する旨の弁護人の主張は採用できない。