児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

リベンジポルノの発信者情報開示(東京地裁R04.12.17)

 権利侵害としてはプライバシー権が主張されるようです。

 プロバイダーも、撮影・投稿された事情・意図が分からないので、一歩引いた表現になっています。

  イ 被告の主張
  原告の風貌と類似するという判断には主観的な要素が大きく影響することからすると、本件動画の被写体と原告との同定可能性の判断は、慎重に判断されるべきである。
  また、本件動画の内容からすると、原告と撮影者は、いわゆる性風俗嬢と客の関係にあるものと考えられ、原告は、本件動画の撮影に同意し、何の恥じらいの素振りも見せずに撮影に応じていることからすると、金銭対価の提供を受けて、本件動画の撮影に応じたものと強く推認される。そうすると、原告は、本件動画の公開について、包括的に同意をしていたか、少なくとも本件動画が公開され得ることを十分に想定していたというべきであるから、本件投稿が、原告のプライバシー権を侵害するものではないと解する余地がある。


 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律には、発信者情報開示の特則はありません。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
第四条(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の特例)
 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第三条第二項及び第四条(第一号に係る部分に限る。)の場合のほか、特定電気通信役務提供者(同法第二条第三号に規定する特定電気通信役務提供者をいう。第一号及び第二号において同じ。)は、特定電気通信(同法第二条第一号に規定する特定電気通信をいう。第一号において同じ。)による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者(同法第二条第四号に規定する発信者をいう。第二号及び第三号において同じ。)に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれにも該当するときは、賠償の責めに任じない。
一 特定電気通信による情報であって私事性的画像記録に係るものの流通によって自己の名誉又は私生活の平穏(以下この号において「名誉等」という。)を侵害されたとする者(撮影対象者(当該撮影対象者が死亡している場合にあっては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)に限る。)から、当該名誉等を侵害したとする情報(以下この号及び次号において「私事性的画像侵害情報」という。)、名誉等が侵害された旨、名誉等が侵害されたとする理由及び当該私事性的画像侵害情報が私事性的画像記録に係るものである旨(同号において「私事性的画像侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対し私事性的画像侵害情報の送信を防止する措置(以下この条及び次条において「私事性的画像侵害情報送信防止措置」という。)を講ずるよう申出があったとき。
二 当該特定電気通信役務提供者が、当該私事性的画像侵害情報の発信者に対し当該私事性的画像侵害情報等を示して当該私事性的画像侵害情報送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会したとき。
三 当該発信者が当該照会を受けた日から二日を経過しても当該発信者から当該私事性的画像侵害情報送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。〔本条改正の施行は、令三法二七施行日〕

東京地方裁判所
令和3年(ワ)第22752号
令和03年12月17日
東京都(以下略)
原告 X
同訴訟代理人弁護士 中嶋俊明
東京都(以下略)
被告 ビッグローブ株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 髙橋利昌

主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
  主文同旨
第2 事案の概要
  本件は、インターネット上のサイトにおいて、氏名不詳者が投稿した別紙投稿記事目録記載の投稿により、原告のプライバシー権が侵害されたとして、原告が、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下、単に「法」という。)4条1項に基づき、上記投稿に係る別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を求めた事案である。
 1 前提事実(以下の事実は、当事者間に争いがない事実であるか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実である。)
  (1) 被告は、電気通信事業を営む株式会社である(弁論の全趣旨)。
  (2) 訴外FC2インクが運営するインターネットサイトである「B」(以下「本件サイト」という。)において、氏名不詳者により、別紙投稿記事目録記載の「タイムスタンプ」欄記載の日に、「投稿内容」欄記載の投稿(以下「本件投稿」という。)がされた(甲1ないし4)。
  (3) 本件投稿は、インターネットを通じて不特定の誰もが自由に閲覧することが可能であり、法2条1号の「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信…の送信」である「特定電気通信」に当たる。
  また、本件投稿が投稿の際に経由したリモートホストや電子通信設備一式は法2条2号の「特定電気通信の用に供される電気通信設備」である「特定電気通信設備」に該当する。
  そして、本件投稿は、被告を経由プロバイダとして投稿されており、被告は、上記「特定電気通信設備」を用いて本件投稿の投稿と閲覧を媒介し、又は特定電気通信設備をこれら他人の通信の用に供する者であり、法2条3号の「特定電気通信役務提供者」に該当し、法4条1項の「当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」に該当する。(以上について甲1ないし5、弁論の全趣旨)
  (4) 被告は、本件投稿に用いられたIPアドレス及び投稿日時の記録により特定されるIPアドレスの使用に係る契約の契約者の氏名又は名称、住所、電話番号及び電子メールアドレスの情報を有している(甲6、弁論の全趣旨)。
 2 争点
  (1) 権利侵害の明白性(争点1)
  (2) 正当な理由の有無(争点2)
 3 争点に関する当事者の主張
  (1) 争点1(権利侵害の明白性)
  ア 原告の主張
  本件投稿は、「(流出)Cで声掛けた色白の女の子を持ち帰ってそのまま生ハメ!少しムチっとした身体に色白ピンク乳首の子はいかがですか?」と題する動画(以下「本件動画」という。)を販売するものである。本件動画は、原告と第三者が性行為を行っているものであり、原告の容貌や身体にはモザイク処理がされていないことからすると、本件動画に映っている者が原告であることは、容易に識別することができる。
  また、本件投稿により販売されている本件動画は、密室における性行為であるから、不特定の第三者に開示されることが想定されているものではなく、私生活上の秘密に属するものであり、かつ、自己が欲しない他者には開示されたくない情報であることは、一般人の感受性を基準としても明らかである。したがって、本件動画を公開することは、原告のプライバシー権を侵害するものである。
  そして、本件投稿は、原告の同意なく、投稿者が不当に利益を得ようとして投稿されたものであるから、違法性阻却事由は存在せず、むしろ、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律が適用される犯罪行為であるというべきである。
  イ 被告の主張
  原告の風貌と類似するという判断には主観的な要素が大きく影響することからすると、本件動画の被写体と原告との同定可能性の判断は、慎重に判断されるべきである。
  また、本件動画の内容からすると、原告と撮影者は、いわゆる性風俗嬢と客の関係にあるものと考えられ、原告は、本件動画の撮影に同意し、何の恥じらいの素振りも見せずに撮影に応じていることからすると、金銭対価の提供を受けて、本件動画の撮影に応じたものと強く推認される。そうすると、原告は、本件動画の公開について、包括的に同意をしていたか、少なくとも本件動画が公開され得ることを十分に想定していたというべきであるから、本件投稿が、原告のプライバシー権を侵害するものではないと解する余地がある。
  (2) 争点2(正当な理由の有無)
  ア 原告の主張
  原告は、本件投稿を投稿した者に対し、損害賠償請求等を予定しており、発信者情報の開示を求める正当な理由がある。
  イ 被告の主張
  争う。

第3 当裁判所の判断
 1 争点1(権利侵害の明白性)について
  ア 前提事実、証拠(甲1、2、7)及び弁論の全趣旨によれば、本件投稿は、本件サイト上において、本件動画を販売するものであり、本件動画に映っている者の容貌や身体にはモザイク処理がされていないことからすると、原告を知る者からすると、本件動画に映っている者が原告であると認識することができるというべきであるから、本件投稿と原告との同定可能性を認めることができる。
  イ 本件投稿は、密室における原告と第三者との間の性行為を撮影した動画であるところ、このような動画の内容は、私生活上の秘密に属するもので、一般人の感受性を基準として公開を欲しないものであり、いまだ一般の人々に知られていない事柄であるといえるから、本件動画をインターネット上に公開する本件投稿は、原告のプライバシー権を侵害するものであると認めるのが相当である。
  そして、本件投稿は、本件動画を販売するものであり、投稿者は営利を目的として投稿したものであるといえるが、本件投稿により本件動画を本件サイトに公開することについて、原告の同意があったことをうかがわせる証拠はなく、そのほか違法性を阻却すべき事由があったことをうかがわせる証拠もない。
  これに対し、被告は、前記第2の3(1)イのとおり、原告は、本件動画の公開について包括的に同意をしていたか、少なくとも本件動画が公開され得ることを十分に想定していたというべきである旨主張するが、本件サイトで本件動画を公開することにより、不特定多数の者が本件動画を閲覧等することができることになるのであるから、原告が本件動画を撮影することに同意していたとしても、そのことから本件サイトに公開することを同意し、あるいは公開され得ることを想定していたということはできず、原告の同意があったことをうかがわせる証拠がないことは、上記のとおりである。したがって、被告の上記主張は採用することができない。
  ウ 以上によれば、本件投稿は、原告のプライバシー権を侵害するものであると認められる。
 2 争点2(正当な理由の有無)
  弁論の全趣旨によれば、原告は、本件投稿をした者に対し、不法行為に基づく損害賠償等の請求をすること予定していることが認められるから、本件投稿に係る別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を受けるべき正当な理由のあることが認められる。
第4 結論
  よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用については民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。
民事第26部
 (裁判官 市野井哲也)
別紙(省略)