児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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わいせつな行為とは,本条においても,基本的には, 174条, 175条の場合と同様,性欲を刺激,興奮又は満足させ, かつ,普通人の性的差恥心を害し, 善良な性的道義観念に反する行為をいうものと解される。条解刑法第4版

 最新版でも「わいせつな行為とは,本条においても,基本的には, 174条, 175条の場合と同様,性欲を刺激,興奮又は満足させ, かつ,普通人の性的差恥心を害し, 善良な性的道義観念に反する行為をいうものと解される。」という定義を置いてますが、それでは具体的行為が出てこないので、行為を列挙しています。

条解刑法第3版
4)わいせつな行為
ア意義
わいせつな行為とは,本条においても,基本的には. 174条, 175条の場合と同様,性欲を刺激,興奮又は満足させ,かつ,普通人の性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反する行為をいうものと解される。
しかし本条が個人の性的自由を保護法益とするものであり,客体である個人の性的自由を侵害するかという見地から解釈する必要があるため,他の条文の場合とは若干の解釈の違いが生じてくる。
例えば,接吻も本条のわいせつな行為に当た500 § 176 l主4)(イ)'5 )(ア)るものと解される(後述イ参照。174条の場合につき,同条注3参照)。
イ具体的行為
わいせつな行為の具体例としては.陰部に手を触れたり,手指で弄んだり,自己の陰部を押し当てることや女性の乳房を弄ぶことなどである。
陰部や乳房を着衣の上から触れた場合については,単に触れるだけでは足りず,着衣の上からでも弄んだといえるような態様であることが必要であるから,厚手の着衣の上からという場合は,薄手の着衣の上からという場合より,強い態様のものであることを要しよう(薄手の着衣の上からの場合につき肯定した例として,名古屋高金沢支判昭36・5・2下集35=6 399)。
なお,乳房が未発達な女児に対する場合であっても,社会通念上,性的感情の侵害があるといえるから,わいせつ性は肯定されるが,全く発達していない幼児や男性の場合には否定されよう(大コンメ2版( 9)63)。
接吻もわいせつな行為に当たる(東京高判昭32・1・22高集10-1-10,最決昭50・6・19裁判集196-653)。
性交あるいは性交類似の行為は典型的なわいせつ行為であるが,本条の特別法である次条の強姦罪が成立する場合には,本罪は成立しない。
したがって,次条に当たらない態様,すなわち,女性が男性を姦淫した場合や,旺門性交等の性交類似行為をした場合には,その他の要件を充たせば本罪が成立する(少年の紅門に異物を挿入した行為がわいせつ行為に当たるとした例として,東京高判昭59・6・13判時1143-155参照)。
身体的な接触行為はなくても人前で裸にする場合は,それが公然といえるか否かに関わりなく,本罪を構成する。
したがって,裸にして写真を撮る行為が本罪に該当するのは当然で=ある(東京高判昭29・5・29判特40-138。
なお,その場合の犯意につき,本条注5ア参照)。
これに対し,単なる抱擁は,わいせつ行為とはいえない。
女性の啓部を撫でる行為については,厚手の着衣の上から撫でてもわいせつといえないが(痴漢行為として条例違反となり得ることにつき,本条注8同参照),下着の上から撫でたような場合にはわいせつ性を肯定し得るであろう(東京高判平13・9・18東時52-1=12-54,名古屋高判平15・6・2判時1834161)。
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ア性的意図
従来の多数説は,本罪が傾向犯であり,わいせつな主観的傾向,すなわち行為者の性欲を刺激興奮満足させる性的意図が必要で、あると解していた(注釈(4)295)。
最判昭45・1・29集24-1-1も.女性を脅迫して裸にし,撮影した事案につき,そのような性的意図がなく,専ら報復,侮辱,虐待の目的に出たときは,本罪は成立しないとしている。
これに対し,当該行為が被害者の性的自由あるいは性的差恥心を侵害するような行為であり,行為者もそのような性質の行為であることを認識していれば,行為がわいせつであるという意味の認識があるものと解されるから,前記のような性的意図は必要としないものと解する見解が多い(大コンメ2版(9)64)。
その後の下級審の裁判例には,女性を全裸にして写真撮影した事案につき,それが被害者に性的差恥心を与える性的意味のある行為,すなわちわいせつ行為であることを認識していたとして本罪の成立を認めたものがある(東京地判昭62・9・16判時1294-143)。
わいせつについての意味の認識をもって性的意図の存在を認めるものであり,事実上,性的意図を不要としたものと解する余地がある。

条解刑法第4版
4) わいせつな行為
意義
わいせつな行為とは,本条においても,基本的には, 174条, 175条の場合と同様,性欲を刺激,興奮又は満足させ, かつ,普通人の性的差恥心を害し, 善良な性的道義観念に反する行為をいうものと解される。
しかし,本条が個人の性的自由を保護法益とするものであり,客体である個人の性的自由を侵害するかという見地から解釈する必要があるため,他の条文の場合とは若干の解釈の違いが生じてくる。
例えば,接吻も本条のわいせつな行為に当たるものと解される(後述(イ)参照。
174条の場合につき, 同条注3参照)。
わいせつな行為としては,行為自体の性的性質から直ちにわいせつと評価できるものもあるが,行為自体の性的性質が不明確なため,行為時の具体的状況(行為者と被害者の関係各属性周囲の状況や、行為者の目的等の主観的事情など)を考慮しなければわいせつと評価できないものもある(最大判平29・11・29集71-9-467,本条注5㈲参照)。
(イ) 具体的行為わいせつな行為の具体例としては, 陰部に手を触れたり,手指で弄んだり, 自己の陰部を押し当てることや,女性の乳房を弄ぶことなどである~陰部や乳房を着衣の上から触れた場合については,単に触れるだけでは足りず,着衣の上からでも弄んだといえるような態様であることが必要であるから,厚手の着衣の上からという場合は, 薄手の着衣の上からという場合より, 強い態様のものであることを要しよう(薄手の着衣の上からの場合につき肯定した例として, 名古屋高金沢支判昭36.5.2下集35=6-399)。
なお,乳房が未発達な女児に対する場合であっても,社会通念上‘性的感情の侵害があるといえるから, わいせつ性は肯定されるが,全く発達していない幼児や男性の場合には否定されよう(大コンメ3版(9)68)。
接吻もわいせつな行為に当たる(東京高判昭32・1・22高集10-110,最決昭50・6・19裁判集196-653)。
性交あるいは肛門性交・口腔性交は典型的なわいせつ行為であるが,本条の特別法である次条の強制性交等罪が成立する場合には,本罪は成立しない。
したがって,次条に当たらない態様,例えば, 陰茎を口腔内に全く入れずに舌先でなめる行為や,女性の外陰部をなめる行為は, その他の要件を充たせば本罪が成立する(少年の肛門に異物を挿入した行為がわいせつ行為に当たるとした例として,東京高判昭59.6.13判時1143-155参照)。
身体的な接触行為はなくても, 人前で裸にする場合は, それが公然といえるか否かに関わりなく, 本罪を構成する。
したがって,裸にして写真を撮る行為が本罪に該当するのは当然である(東京高判昭29.5.29判特40-138)。
これに対し,単なる抱擁は, わいせつ行為とはいえない。
女性の臂部を撫でる行為については,厚手の着衣の上から撫でてもわいせつといえないが(痴漢行為として条例違反となり得ることにつき,本条注8(キ)参照),下着の上から撫でたような場合にはわいせつ性を肯定し得るであろう(東京高判平13・9・18東時52-1=12-54, 名古屋高判平15.6.2判時1834-161)。
5) 故意
ア本罪は故意犯である。
行為がわいせつであるという意味の認識が必要であり, それ以上に性的意図を要するか否かについては争いがあるが,後記のとおり, 判例は不要と解するに至った。
被害者の承諾の誤信につき, 次条注7(イ)参照。
イ 性的意図
かつての多数説は,本罪が傾向犯であり, わいせつな主観的傾向すなわち行為者の性欲を刺激興奮,満足させる性的意図が必要であると解していた(注釈(4)295)。
最判昭45・1・29集24-1-1も,女性を脅迫して裸にし,撮影した事案につき, そのような性的意図がなく‘專ら報復,侮辱,虐待の目的に出たときは,本罪は成立しないとしていた。
これに対しては, 当該行為が被害者の性的自由あるいは性的差恥心を侵害するような行為であり,行為者もそのような性質の行為であることを認識していれば,行為がわいせつであるという意味の認識があるものと解されるから,前記のような性的意図は必要としないものと解する見解が多く((新)注釈(2)621,大コンメ3版(9)69), その後の下級審の裁判例にも, わいせつについての意味の認識をもって性的意図の存在を認め,事実上性的意図を不要にしたと解されるものなどがあった。
このような中で,最大判平29・11・29集71-9-467は,性的な被害の実態とそれに対する社会の意識の変化やその変化を反映させた法改正の経緯等に照らすと,従来の判例の正当性を支える実質的な根拠を見いだすことは困難であるなどとして, 判例を変更し,行為者の目的等の主観的事情は, わいせつな行為に当たるか否かの判断を行うための個別具体的な事情の一つとして考盧すべき場合があり得るものの,行為者の性的意図が本罪の成立要件となるものではない旨判断した。