児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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公然わいせつ罪で執行猶予中の者につき「現在執行猶予期間中である申立人が応募に当たり,当該犯罪歴を募集企業に知られることで採用を拒否されるなど一定の不利益を受けることがあったとしても,それは社会生活上やむを得ないものとして申立人において甘受すべきである。」として名の変更を許可しなかった事例(東京家裁r01/7/26)

公然わいせつ罪で執行猶予中の者につき「現在執行猶予期間中である申立人が応募に当たり,当該犯罪歴を募集企業に知られることで採用を拒否されるなど一定の不利益を受けることがあったとしても,それは社会生活上やむを得ないものとして申立人において甘受すべきである。」として名の変更を許可しなかった事例(東京家裁r01/7/26)

東京家裁令和元年 7月26日 裁判所名  裁判区分 審判
事件番号 令元(家)4080号
事件名 名の変更許可申立事件
申立人 
A 
主文
 1 本件申立てを却下する。
 2 手続費用は申立人の負担とする。
 
 
理由

第1 申立ての趣旨
 申立人の名「B」を「C」に変更することを許可する。
第2 当裁判所の判断
 1 本件申立ては,平成30年●●●月●●●日に公然わいせつの罪により懲役4月,執行猶予3年の有罪判決を受けた申立人が,逮捕時に報道された自己の氏名及び顔写真が現在もインターネット上に拡散されているため,就職の応募先にこれを知られてしまい,就職することができない状態にあるとして,申立人の名をインターネット上で検索できる「B」から「C」に変更することを求めるというものである。
 2 しかしながら,犯罪歴は,企業にとって,企業への適応性や企業の信用の保持等企業の秩序維持の観点から重要な情報の一つであって,応募者が雇用契約に先立って申告を求められた場合には,信義則上真実を告知すべき義務を負うものであるから,現在執行猶予期間中である申立人が応募に当たり,当該犯罪歴を募集企業に知られることで採用を拒否されるなど一定の不利益を受けることがあったとしても,それは社会生活上やむを得ないものとして申立人において甘受すべきである。したがって,このような不利益を回避することを理由として名の変更をすることは許されず,戸籍法107条の2にいう「正当な事由」があるとは認められない。
 ところで,申立人は,インターネット上の記事は努力をしても全て削除するのが不可能であること,公然わいせつ罪が軽微な犯罪であること,申立人が受けた刑には執行猶予が付されており,法的な贖罪を果たしていることなどを挙げ,申立人が受けている不利益は極めて過剰であるなどと主張する。しかしながら,前記のような犯罪歴の性質に鑑みれば,インターネット上の犯罪記事が一因となって採用を拒否されることがあったとしても,その不利益は応募者において甘受すべきものであって,それにもかかわらず,インターネット上の全記事の削除が不可能であるとの理由で名の変更を認めることは,前記告知義務に違反した応募を容認することにも繋がりかねず,相当でないことは明らかである。また,公然わいせつ罪が軽微な犯罪であるといえないのは勿論,いまだ執行猶予期間中である申立人が法的な贖罪を果たしたといえないことも明らかであるから,現状において申立人が望むような就職をすることができない状態にあるとしても,これをもって名の変更を認めるべきであるとはいえない。申立人の主張は採用することができない。
 3 よって,本件申立てには理由がないから,これを却下することとし,主文のとおり審判する。
 東京家庭裁判所家事第4部
 (裁判官 中里敦)