児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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北海道青少年健全育成条例の自撮り規制

 これは結局、全国に適用されるようです。全国には公布されてません。

 要求行為は、児童ポルノ法の児童ポルノを送ってもらうわけですが、自画撮りの場合は、まだ存在しないわけですから、「3号に該当するやつ送れ」と言われれば該当しますが、「エッチじゃない胸の画像送れ」とかになると該当しないんでしょうね。
 わいせつ頒布罪等で、片面的処罰になってるから買い主は処罰されませんよね、児童ポルノ提供罪もそうなんですけど、ましては、要求行為は処罰されませんが、条例で処罰することはどうなんですかね。

北海道青少年健全育成条例の解説
(20) 令和元年10月16日公布
青少年の健全な育成を図る環境が変化している現状に鑑み、青少年に対して児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止するとともに、ゲームソフトについて包括的な有害図書類の指定を行うため、所要の改正を行った。
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止(新設)
青少年に対して不当な手段等により、当該青少年の児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止する規定を設けた。
・・・・・
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第38条の2 何人も、青少年に対し、次の各号のいずれかに該当して当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。第1号において同じ。)の提供を求めてはならない。
(1) 当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を拒まれたとき。
(2) 当該青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は当該青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をしたとき。
(3) 当該青少年が13歳未満の者であるとき。
【趣旨】
本条は、青少年に、当該青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ又はその情報を記録した電磁的記録その他の記録の提供を不当に求めることを禁止した規定である。
【解説】
1 本条は、青少年の健全な育成を阻害するおそれのあるものとして、社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止したものであり、その認定にあたっては、行為の外形だけによることなく、動機、手段及び態様並びに当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断しなければならない。
2 「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、求める相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等ということである。したがって、他の青少年の姿態が描写された児童ポルノ等を求めた場合については、該当しない。
3 「提供を求める」とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第7条第2項に規定する「提供」を行うように求めることであり、当該児童ポルノ等を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいい、具体的には、有体物としての児童ポルノを交付するように求めたり、電磁的記録を電子メールで送信するよう求める行為がこれに当たる。
また、「求める」とは、青少年に対して、要求するのみならず、勧誘するなども含めた広い概念である。
どのような表現が「児童ポルノ」に該当するかについては、要求文言とその前後のやりとりを総合的に判断し、該当性の判断を行うこととなるが、その要求に青少年が応じてしまった場合、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項に規定する児童ポルノが提供されると社会通念上明らかに認められることが必要である。
4 「提供を拒まれたとき」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めた被疑者が、それを拒否されたと認識しているということである。したがって、やりとりの記録などから拒否されたと認識していることが明らかである場合のほか、社会通念上、青少年の意思表示が拒否したと認められるものであり、かつ、それが被疑者に到達していることが明らかである場合には、拒否されたと認識していたということができる。
5 「威迫」とは、他人に対して言語挙動をもって気勢を示し、不安の感を生じさせることをいう。
「脅迫」と異なり、他人に恐怖心を生じさせる程度のものであることを要しないが、単に「威勢を示す」(他人に不安感を抱かせるような態度をとる)というよりは強度のものを指す。
6 「欺く」とは、他人を錯誤に陥れ、虚偽の事実を真実と誤認させることである。真実でないことを真実であるとして表示する行為で、虚偽の事実を摘示する場合と真実の事実を隠ぺいする場合とが含まれる。
7 「困惑させる」とは、困り戸惑わせることをいい、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意思を拘束することによって精神的に自由な判断ができないようにすることをいう。
相手方に威力を示す場合、義理人情の機微につけ込む場合、恩顧愛執の情義その他相手方を心理的に拘束し得るような問題を持ち込む場合などが考えられるが、いずれにしても、相手方に対する言動のほか、相手方の年齢、知能、性格、置かれた環境、前後の事情などを総合して判定する。
8 「対償を供与し、若しくはその供与の約束をする」とは、児童ポルノ等の提供に対する反対給付としての経済的な利益を供与、又はその約束をすることをいう。
「対償」は、現金のみならず、物品、債務の免除も含まれ、金額の多寡は問わない。
「約束」とは、相手に対し、又は互いに、取り決めを行うことである。
9 常習とは
一定の犯罪行為を反複する習癖をいい、反復される犯罪は同質のもであることを要する。常習性の有無の判断は、裁判官の自由なる心証によってなされ、その判断資料に制限はない。「常習」の認定については、人間の内面に起因するものであることから、一定の基準を定めることは不可能であり、個々具体的に判断するよりほかはないが、行為の回数、期間、同種の前科、反復累行の事実、行為の性質方法その他の資料から認定することとなる。常習は、行為の属性ではなく行為者の属性であることから、常習犯は一種の身分犯である。

【罰則】
本条に違反した者は、30 万円以下の罰金に処せられる。(第61 条第4号)
常習として本条に違反した者は、6月以下の懲役又は50 万円以下の罰金に処せられる。(第59 条第3号)

第59条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(3) 常習として第38条の2の規定に違反した者
第61条
次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(4) 第38条の2の規定に違反した者(前条に該当する場合を除く。)
第65条
第34条、第38条又は第39条の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第57条、第58条、第60条又は第61条(第3号に係る部分に限る。)の規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。

【関係法令】
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条(定義)、
第7条(児童ポルノ所持、提供等)
【関係判例
高松高裁判決(昭和61年12月2日)要旨
本件は、被告人が数回にわたり徳島県所在の自宅から香川県にあるA方に電話をして、同人の妻Bに対し「あんたが好きです。会ってほしい。」などと反覆して申向け、もって同女に著しく不安又は迷惑を覚えさせるようなことをしたという事案であるところ、原審は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年12月23日香川県条例50号)10条、11条1項は香川県の区域内における行為に対して適用されるのが原則であって、区域外の行為に本件条例を適用するには特段の根拠の存在することが必要であるが、本件被告人の行為は区域外でなされたものであり、本件条例を適用する特段の根拠はないとして、被告人は無罪としたのであるが、条例は当該地方公共団体の区域内の行為に適用されるのが原則であるものの、本件のように当該地方公共団体の区域外から区域内に向けて内容が犯罪となる電話をかける行為に及んだ場合には、電話をかけた場所のみならず、電話を受けた場所である結果発生地も犯罪地と認められるのであり、このように犯罪の結果発生地が香川県にあるとされる以上、行為者は直接かつ現実的に香川県に関わりを持ったものというべく、香川県民及び滞在者と同様に本件条例が適用されるものと解すべきである。なお、本件条例12条は本件条例が適用される通常の場合の行為者として「県民及び滞在者」を挙げて適用上の注意を示しているに過ぎないと解すべく、同条を根拠として本件条例が適用される行為者の範囲を直ちに限定することは相当でない。
また、原審は、香川県民及び滞在者以外の者に本件条例を適用し処罰すると、本件条例の存在、内容を了知することが不可能若しくは著しく困難なことから、行為に際し違法性の認識すら持ち得ない者が処罰される結果を招くというが、故意の内容に違法性の認識は必要がないのみならず、本件被告人は、一般通常人におけると同様、本件違法性の認識に欠くる所はなかったものと認められるから、右の結果が不合理であるとはいえない