児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制性交被告事件(177条後段)の罪となるべき事実で「養女と性交しようとした」とする一審判決について、「強制性交等未遂罪の事実を判断する際は、実行の着手があったことを認める具体的事実を記載しなければいけない」として原判決を破棄した事例(宮崎支部R01.9.26 1審宮崎地裁R01.6.20)

強制性交被告事件(177条後段)の罪となるべき事実で「養女と性交しようとした」とする一審判決について、「強制性交等未遂罪の事実を判断する際は、実行の着手があったことを認める具体的事実を記載しなければいけない」として原判決を破棄した事例(宮崎支部R01.9.26 1審宮崎地裁R01.6.20)

 被告人控訴で理由不備の破棄だと思われます。上訴申立後の未決勾留の日数(約3ヶ月)が全部本刑に通算されます。1審は実刑判決の割には雑な審理だった印象になります。

刑訴法第三七八条[同前━絶対的]
 左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつてその事由があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
四 判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること。
・・・
刑訴法 第四九五条[未決勾留日数の法定通算]
①上訴の提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。
②上訴申立後の未決勾留の日数は、左の場合には、全部これを本刑に通算する。
一 検察官が上訴を申し立てたとき。
二 検察官以外の者が上訴を申し立てた場合においてその上訴審において原判決が破棄されたとき。
③前二項の規定による通算については、未決勾留の一日を刑期の一日又は金額の四千円に折算する。
④上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留は、上訴中の未決勾留日数に準じて、これを通算する。

 刑法はこう言う条文配列で、13未満については特則があるので、監護者性交ではなく強制性交(177後段)が適用されるんですが、179条2項が特則だという主張も考えられます。

第一七七条(強制性交等)
 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

第一七九条(監護者わいせつ及び監護者性交等)
2十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。

高裁宮崎支部も懲役4年の判決 養女に性的暴行未遂 /宮崎県
2019.09.27 朝日新聞
 養女にした妻の連れ子の12歳の少女に性的暴行をしようとしたとして、強制性交等未遂罪に問われた県内の男の控訴審判決が26日、福岡高裁宮崎支部であった。芦高源裁判長は一審・宮崎地裁判決を事実の記載が不十分として破棄した上で、改めて強制性交等未遂罪の成立を認め、一審と同じ懲役4年を言い渡した。
 高裁判決によると、男は昨年11月上旬ごろ、自宅で少女に暴行しようとした。
 一審判決で性的暴行を裏付ける具体的な行為が明示されていなかったことから、高裁では検察側の訴因変更請求を認め、判決でその内容は認定された。弁護側は性交の意志を否定して無罪を主張したが、認められなかった。
・・・

養女乱暴未遂男に懲役4年/高裁宮崎判決
2019.09.27 宮崎日日新聞 当時12歳の養女を乱暴しようとしたとして強制性交等未遂の罪に問われた男の控訴審判決で、福岡高裁宮崎支部は26日、懲役4年とした一審宮崎地裁判決を破棄し、「罪となるべき事実」を一部修正した上で改めて懲役4年を言い渡した。
 芦〓源裁判長は、罪となるべき事実で「養女と性交しようとした」とする一審判決について、「強制性交等未遂罪の事実を判断する際は、実行の着手があったことを認める具体的事実を記載しなければいけない」と指摘。控訴審判決では具体的な文言を加えた。

1審判決

強制性交未遂 懲役4年判決 地裁=宮崎
2019.06.21 読売新聞
 養女にわいせつな行為をしようとしたとして強制性交未遂罪に問われた県内の男に対し、宮崎地裁(福島恵子裁判長)は20日、懲役4年(求刑・懲役7年)の判決を言い渡した。
 判決によると、男は昨年11月上旬頃、自宅で養女(当時12歳)にわいせつな行為をしようとした。福島裁判長は「性交に応じなければ坊主頭にする旨を述べ、性交に及ぼうとしたもので、監護者としての立場を利用した卑劣な犯行」と指摘した。