児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

エアドロップ痴漢は、わいせつ電磁的記録記録媒体公然陳列罪・頒布罪(刑法175条1項)か卑わい行為(福岡県迷惑行為防止条例6条1項2号)か

「女性のわいせつな画像を同県糸島市の男性(34)のアイフォーンに送信した疑い。」ということで、送信した画像が、刑法のわいせつな画像であって誰彼無く送信した場合は、わいせつ電磁的記録記録媒体公然陳列罪ないしは頒布罪が成立して、卑わい行為には該当しない可能性があります。
 

条解刑法
不特定又は多数の人への交付・譲渡等であるから,不特定かつ多数の場合のみでなく,不特定かつ少数の場合も,特定かつ多数の場合も,それに該当する。たまたまl名の顧客に交付・譲渡等したに過ぎない場合であっても,それが不特定又は多数の人に対して交付・譲渡等する意思でされたものであれば,頒布に該当する(東京高判昭47・7・14判タ288-381,東京高判昭62・3・16判時1243-141)
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わいせつ図画頒布等被告事件
東京高等裁判所判決昭和47年7月14日
東京高等裁判所判決時報刑事23巻7号136頁
       判例タイムズ288号381頁
 所論は、原判決がその第一の一、二において、わいせつ図画頒布の事実を認定し、これに刑法第百七十五条前段を適用しているけれども、もともと「頒布」とは不特定または多数人に対し無償で交付することをいうのであるが、本件において頒布を受けたのは孝平という特定人であるから、特定人に対する無償交付は「頒布」ということはできない。これを頒布行為であるとした原判決は法令の解釈適用を誤つたもので、判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。
 よつて案ずるに、わいせつ図画の頒布罪が成立するためには、わいせつ図画を不特定または多数人に無償交付することを要することは所論のとおりであるが、不特定または多数人に対してなす目的のもとに無償交付がなされるかぎり、特定の一人に対して二回の無償交付をなしたに止まる場合といえども、これを「頒布」行為というを妨げないと解するのが相当である。これを本件についてみるに、原判決挙示の判示第一の一、二関係の諸証拠を総合すると、本件わいせつ写真集は、定也にたのまれて、被告人が自分の分をも含めて三千部を印刷の営業部長に依頼して作成したものの一部であり、被告人はパチンコ店「」で同店々員孝平に対し八ミリのわいせつフィルムを賃貸したいと申し入れたことがあること、被告人が「牡丹」に来るとき、いつも黒皮製の鞄の中の紙袋に、わいせつブック、春画をもつていたこと、孝平は他の店員から、被告人が他の店員にもわいせつ物を売りに来たことがあると聞いたことがあること、被告人が孝平に交付したものと、同種のものを矗士にも販売していること、などの諸事実が認められ、これらの事実を総合すると、被告人にはわいせつ図画を不特定または多数人に対して交付する目的があつたと認定するのが相当である。このような目的のもとに関根孝平に対して本件図画を無償交付した以上、これを「頒布」行為と評価するに何ら間然するところはない。これと同旨に出た原判決には何ら所論のような法令の解釈適用の誤りはなく、論旨は理由がなく、採用できない。
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東京高等裁判所判決昭和62年3月16日
判例時報1243号141頁
       理   由
 本件控訴の趣意は、弁護人海部安昌、同相原宏各作成名義の控訴趣意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は、検察官小林永和作成名義の答弁書に記載のとおりであるから、これらを引用する。
 一 弁護人海部安昌の控訴趣意第一(理由不備の主張)について
 論旨は、わいせつ図画販売罪が成立するためには、わいせつ図画を不特定又は多数の人に売ることが必要であり、一回の売渡しをもって右販売罪が成立するとするには、その売渡しが、不特定の人を相手方とするものであることのほか、不特定又は多数の人を対象とする反復の意思のもとになされたものであることが必要であるとされており、右要件は、判決の「罪となるべき事実」に判示されなければならないところ、原判決は、被告人が昭和六〇年一一月一〇日Aにわいせつビデオテープ二巻を売り渡した、という、A一人に対するただ一回の売渡しの事実を認定し、もって被告人がわいせつ図画を販売したものと判示しているが、右Aが特定人であれば右販売罪は成立しないのであるから、同人が不特定人であることの判示は不可欠であるのに、その旨の判示をしておらず、また、右売渡しが反復の意思をもってなされたことの判示もなく、原判決の右判示によっては、わいせつ図画販売罪の成立を認定するに由なきものであって、右の点において原判決には理由不備の違法がある旨主張する。
 そこで検討するに、刑法一七五条のわいせつ図画販売罪について有罪判決をするには、罪となるべき事実として、当該わいせつ図画を不特定又は多数の者に有償譲渡したという、「販売」にあたる事実を判示すべきであり、本件のように、当該行為が一人の者に対する一回の売渡しである場合には、それが不特定の者に対する売渡しであって、反復の意思でなされたものであることが明らかであるように判示すべきものと解されるところ、原判決は、罪となるべき事実として、「被告人は、静岡県浜松市丸塚町《番地略》所在のビデオテープのレンタル業『ビデオショップ甲田』店を経営している者であるが、昭和六〇年一一月一〇日ころ、同店前駐車場において、Aに対し、男女性交の場面等を露骨かつ詳細に撮影したわいせつのビデオテープ二巻を代金二万四〇〇〇円で売り渡し、もってわいせつの図画を販売したものである。」と判示しており、右判示事実自体からも、レンタル業とはいえ、ビデオテープを扱う店を経営する者である被告人が、本件わいせつビデオテープ二巻を客であるAに売り渡したものであり、原判決が「もってわいせつ図画を販売したものである」と認定判断しているように、右売渡しが、不特定の客に対する有償譲渡、すなわち、刑法一七五条にいう販売にあたるものであることを読みとることができるものというべきであって、原判決に所論の理由不備があるとはいえない。
 論旨は理由がない。
 二 弁護人相原宏の控訴趣意一(法令解釈の誤りの主張)について
 論旨は、刑法一七五条にいう販売とは、不特定又は多数の人に対する有償譲渡をいうところ、被告人が販売した相手先はAただ一人である上、同人は以前から甲田店の顧客であり、被告人はAから頼まれて、ビデオテープを販売したものであって、原判決は、刑法一七五条所定の販売の解釈を誤って適用したものである旨主張する。
 しかしながら、刑法一七五条にいう販売の意義は所論のとおりであるが、原判決挙示の関係証拠によれば、右Aが前記店の不特定の客の一人であること、被告人は、本件以外にも、同人に対し、あるいは他の者に対し、わいせつビデオテープを売り渡して利益をあげており、本件起訴にかかる売渡しもその一環であることが認められ、これがわいせつ図画の販売にあたることは明白であって、被告人の本件所為について、同条を適用した原判決の法令の解釈適用に誤りがあるとは認められない。
 論旨は理由がない。

福岡県迷惑行為防止条例(昭和三十九年福岡県条例第六十八号)
(卑わいな行為の禁止)
第六条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で次に掲げる行為をしてはならない。
一 他人の身体に直接触れ、又は衣服の上から触れること。
二 前号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
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福岡県迷惑行為防止条例逐条解説
ア「何人も」とは、「すべての自然人は」という意味であり、福岡県民に限らず、日本人で
あると、外国人であるとを問わない。
イ「公共の場所」とは、不特定かつ多数の者が自由に出入りし、又は利用し得る施設及び場所をいい、場所の属性ではなく状態で判断される。
例えば、公会堂、商店、遊技場デパート、ホテルのロビー、オートロック式ではないマンションの共用部分等が公共の場所に当たる。
ウ「公共の乗物」とは、不特定かつ多数の者が自由に利用し得る乗物をいい、有償又は無償を問わない。乗物の属性ではなく状態で判断される。
具体的には、電車、バス、ロープウェー、エレベーター等が公共の乗物に当たるが、多数人が利用するものの特定の者しか利用できない貸切バスは当たらない。
エ「正当な理由がないのに」とは、健全な社会常識から判断して認められる理由があるとはいえないことをいう。
オ「著しく」とは、社会的に容認し得ない程度に甚だしいものをいう。
カ「差恥」とは、恥ずかしく思う気持ち、恥じらいの感情であり、卑わいな行為によって惹起される性的差恥心を意味する。
キ「不安」とは、生命、身体、自由、名誉及び財産に対して、何らかの害が加えられるのではないかと心理的な圧迫感を抱くことをいう。
ク「覚えさせるような方法」とは、現実に相手方が差恥心又は不安を覚えたかどうかは問わず、社会通念として差恥心又は不安を覚えると認められる方法であれば足りる。
.第1項第2号関係
「卑わいな言動」とは、野卑でみだらな言動又は動作をいう。刑法第174条(公然わいせつ)より広い概念であり、わいせつに至らないもので性的道義観念に反し、他人に性的差恥心又は不安を覚えさせるものをいう。
例えば、人に対して恥ずかしくなるような卑わいな文言を言ったり、他人が身に着けているスカートを捲る行為等である。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/536576/
書類送検容疑は7月5日午後8時40分すぎ、同市営地下鉄空港線の電車内で、エアドロップで女性のわいせつな画像を同県糸島市の男性(34)のアイフォーンに送信した疑い。「受信した女性の反応が見たかった」と容疑を認めているという。

 被害男性は、電車内でスマートフォンを手にしながら周囲をうかがう不審な男性を発見。西新駅で降りた男性を追い掛け、110番した。署の調べに「何回か同じことをやった」と話しているという。

 県警によると、エアドロップ痴漢の被害相談は昨年2件だが、潜在被害はもっと多いとみられる。兵庫県内では逮捕者も出ている。署の宮原工生活安全課長は「軽い気持ちでわいせつ画像を送っても立派な犯罪行為」と強調した。