児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

着エロの被描写者の年齢判定方法

 タナー法は東京地裁H28.3.15で過信しないようにとされていますが、 タナー法だと胸と陰部が露出されてないと判定不能になりますので、これまでの着エロの事件は、全部児童を個人特定する方法で立証されています。

日本・児童ポルノ規制の実情と課題
子どもたちを守るために、 何が求められているのか ~「疑わしさ」の壁を越えて
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ

5 医師による所見 児童ポルノの捜査において、対象者の特定ができず、年齢が判明しない場合、小児科医の専門的な判定をうけているとされる。
そこでHRNは、性暴力、性虐待等の被害児童への往診経験の豊富な20年のキャリアの小児科医に対し、本件で確認したビデオの一部について、年齢に関する照会を求めた。
写真上、顔つき、筋肉の付き方(特におしりや腰ライン)、骨格、乳房の発育、陰毛の発育等の全体像で総合判断したところ、以下の通りであった。
? 「小●(学)生13人 全部見せスペシャル!!」 → 小学校高学年と思われる。
? 「6年生 本物のロリータビデオ 裏」 → 顔がはっきりせず、判定できない。
? 「桜」 → 小学校高学年または中学生と思われる。
ただし、上記3点はパッケージの写真を示したに過ぎなかったため、十分な判断には至らなかった。
そこで、?ないし?についてはDVD作品を提供し、判断を求めた。
その結果、以下のような回答が返ってきた。
? 「ちゃんは139cmの小○生」 → 18歳未満と考えられる。
顔つき、身体の発育状況から断定が困難であるが、小学校高学年である可能性もある。
? 「1年3組 2番 」 → 骨格、乳房の発育から小学生または中学生と考えられる。
? 「下校途中の小●生を拉致って生ハメ集団レイプ」 8つのチャプターがあるが、小学生高学年から中学生とみられる少女が一人、中学生とみられる少女が一人含まれている。
? 「仕事とはいえ、心底いやだった撮影の作品」 → 作品の出演者は中学生とみられる。
? 同封 「女子高生部集団ジャック」 → 登場する女性は18歳以上とみられる。
6 小括 以上の通り、実店舗調査、インターネット調査を通じ、児童ポルノないしそれと疑われるDVD作品、動画が公然と販売・流通されていることが明らかになった。

裁判年月日  平成28年 3月15日  裁判所名  東京地裁
事件名  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2016WLJPCA03156003
出典
エストロー・ジャパン
 2  D医師の供述に基づく児童性の認定について
  (1) D医師は,性発達を評価する学問的な方法として世界的によく用いられている手法としてタナー法があり,同法においては,乳房及び乳輪は乳房のふくらみと乳輪の隆起により,陰毛は濃さや範囲により,それぞれ1度から5度のステージで発達段階が定義され,それにより性発達の段階を評価することができること,そして,タナー法の分類と日本人女子の性発達との関係を調査した研究が複数なされており,同研究の結果に照らせば,乳房又は陰部につきタナー何度であれば年齢が何歳から何歳の範囲に入るかを推測できることから,児童認定写真の被写体については,いずれも18歳未満と認められる旨述べる。
 前記のD医師の供述については,同医師が,小児科学,小児内分泌学を専門にする医師として,専門的知見や過去の経験等に基づいて述べられたものであること,タナー法及び同法の度数と日本における女児の思春期の二次性徴の年齢に関するものとして,D医師が資料として引用したものを含め複数の研究がなされていること等からすると,女児の性発達の段階を評価する手法としてのタナー法の存在や,同法における度数の判定に用いる具体的な基準の定立,さらに,日本人女子について同法の各度数と年齢との間に有意な相関関係を示す医学的知見が存在する点については,十分な信用性が認められる。
 しかしながら,他方で,白木和夫ほか総編集「小児科学(第2版)」医学書院(弁1)に「二次性徴の出現時期が正常であるかどうかを評価するには,正常児の発現時期を知る必要がある。しかしわが国では包括的なデータはほとんどない。よく引用されるのはTannerらの英国人小児の二次性徴発現年齢のデータであるが,人種も年代も違うこのデータを,そのまま現代の日本人小児にあてはめるわけにはいかない。」との指摘にも留意する必要がある。この点は,同文献が出版された平成14年以降にD医師が証人尋問において引用した論文(弁2。以下「田中論文」という。)等が発表され,日本における正常児の二次性徴の発現時期に関する研究が進んだと認められるものの,そのことを踏まえても,タナー法による分類に基づく年齢の判定は,あくまで統計的数字による判定であって,全くの例外を許さないものとは解されない。その統計的数字も,例えば,現在のDNA型鑑定に比すればその正確さは及ばない。身長や肌の艶,顔つき,あるいは手の平のレントゲン写真などといった判断資料は一切捨象して,胸部及び陰毛のみに限定して判断するタナー法の分類に基づく年齢の判定は,あくまで,18歳未満の児童であるか否かを判断する際の間接事実ないし判断資料の一つとみるべきである。