児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

AV業界に壊滅的な打撃? 強要被害70人超が告発準備…大手メーカーにメスも

 実はこういう業界とは関係がないので言いたいことを言うと、
 こういう裁判例が集積されていて、AV女優の募集とか派遣が「公衆道徳上有害な業務」として禁止されてるわけだから、募集とか派遣なくしてやるしかないですよね。
 自発的に来たのを雇用するようなのを労働基準法で禁止すれば、国内では撮影できなくなるでしょう。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
第五十八条
 公衆衛生又は◆公衆道徳上有害な業務◆に就かせる目的で労働者派遣をした者は、一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
・・・
職業安定法
第六十三条
 次の各号のいずれかに該当する者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
一 暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
二 公衆衛生又は◆公衆道徳上有害な業務◆に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者

      職業安定法違反被告事件
東京地方裁判所平成8年11月26日
判例タイムズ942号261頁
警察公論52巻4号107頁
(犯罪事実)
 被告人は、わいせつビデオ映画の制作販売業を営んでいたものであるが、わいせつビデオ映画制作の際に女優として自慰等の性戯をさせる目的で、平成七年一二月二〇日ころ、東京都渋谷区代々木〈番地略〉○○ビル二階の被告人の事務所において、B子(当時一五歳)と面接し、同女に対し、「セックス場面は撮らないで、入浴シーンやオナニーシーンを中心に撮る。」「出演料はいくら欲しいの。」「顔や人物がわかる部分はあまり撮らないし、入浴シーンなどで変な部分が写ったらボカシを入れる。三万円欲しければ三万円なりの内容でいく。五万円欲しければ五万円の内容でいく。親や友達には絶対分からないようにするから安心しなさい。」などと申し向け、自己の制作するわいせつビデオの女優として稼働することを説得勧誘し、もって、公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者を募集した。
(証拠の標目)〈省略〉
(補足説明)
 被告人は、前示犯罪事実につき、B子と面接した際、同女を全裸にせずに下着を着けさせてビデオを撮影するつもりであったから公衆道徳上有害な業務に就かせる目的はなかったと主張する。右主張は、B子の供述内容に反するばかりでなく、被告人自身がその後に実際にB子を全裸にして撮影していることに照らしても疑わしいところであるが、仮に、当初は被告人が主張するような意図であったとしても、本件のように心身の発達途上にある一五歳の女子中学生が自慰などをし、その場面を撮影させて報酬を得るということは、当該女子の人格や情操に悪影響を与えるとともに、現代社会における善良な風俗を害するものであるから、このような業務が職業安定法六三条二号にいう「公衆道徳上有害な業務」に該当することは明らかである。したがって、いずれにせよ、被告人の主張は理由がない。
・・・・
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律違反被告事件
東京地方裁判所判決平成6年3月7日
判例時報1530号144頁
 (認定事実)
 被告人有限会社甲野(以下、単に「被告人会社」という。)は、東京都新宿区《番地略》ビル一階に事務所を設けて芸能プロダクションを経営するもの、被告人NことAは、被告人会社取締役、被告人WことBは、被告人会社チーフマネージャーであるが、被告人NことA及び被告人BことBは、いずれも被告人会社の業務に関し、
 第一 被告人会社のスカウトマンCことCと共謀の上、平成四年七月三一日ころ、アダルトビデオ映画の製作等を業とする株式会社乙山に対し、同会社がアダルトビデオ映画を製作するに際し、出演女優をして男優を相手に性交及び口淫等の性戯をさせることを知りながら、被告人会社が雇用した労働者であるD子(昭和四八年七月二四日生)をアダルトビデオ映画の女優として派遣し、静岡県富士宮市《番地略》の元丙川酪農組合牧場跡地等において、右株式会社乙山のビデオ映画監督であるEの指揮命令のもとに同会社のために同女をアダルトビデオ映画の女優として稼働させ
 第二 共謀の上、平成五年四月二六日ころ、アダルトビデオ映画の製作等を業とする丁原ビデオ株式会社に対し、同会社がアダルトビデオ映画を製作するに際し、出演女優をして男優を相手に口淫等の性戯をさせることを知りながら、被告人会社が雇用した労働者であるF子(昭和四六年一〇月一三日生)をアダルトビデオ映画の女優として派遣し、東京都世田谷区《番地略》戊田スタジオ等において、右丁原ビデオ株式会社から映画撮影の依頼を受けたビデオ映画監督であるGの指揮命命令のもとに同会社のために同女をアダルトビデオ映画の女優として稼働させ
 第三 共謀の上、同月二八日ころ、アダル訃ビデオ映画の製作等を業とする有限会社甲田商店に対し、同会社がアダルトビデオ映画を製作するに際し、出演女優をして男優を相手に性交及び口淫等の性戯をさせることを知りながら、被告人会社が雇用した労働者であるH子(昭和四八年五月一日生)をアダルトビデオ映画の女優として派遣し、山梨県《番地略》貸スタジオ乙野等において、右有限会社甲田商店から映画撮影の依頼を受けたビデオ映画監督であるIの指揮命令のもとに同会社のために同女をアダルトビデオ映画の女優として稼働させ
 もって、それぞれ、公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をしたものである。(証拠の標目)《略》(弁護人の主張について)
一 弁護人の主たる主張は、(1)アダルトビデオへの出演行為は「公衆道徳上有害な業務」に該当しない、(2)アダルトビデオ製作のために労働者を派遣する行為を処罰の対象とすることは、憲法二一条に違反する、(3)被告人A及び同Bは、「公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」を有していなかった、というものであり、弁護人は、これらのことを理由として、被告人らは無罪である旨主張するので、当裁判所の判断を示す。
二 弁護人は、先ず、派遣労働者らが出演したアダルトビデオは、日本ビデオ倫理協会の審査を経た上、満一八歳未満の者への映示・貸出・販売を禁止するとの制限を付けて、一般の書店においても販売等されるものであり、作品内容においても、鑑賞者が嫌悪感・不快感を抱くものが除外され、また、販売方法等においても、青少年の健全な育成への影響も考慮されているのであるから、このようなアダルトビデオへの出演行為は一公衆道徳上有害な業務」に該当しないと主張する。
1 労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等を図ることにより、派遣労働者の雇用の安定その他の福祉の増進に資することを目的とするもので(同法一条)、労働者保護立法としての色彩も有するものである。労働者派遣法五六条の規定は、労働者派遣が労働者供給の一形態であることにかんがみ、職業安定法六三条二号が処罰の対象としている行為のうち、道号所定の有害業務に就かせる目的で労働者派遣をする行為については、労働者派遣法において、同様に禁止し、処罰することとしたものと解される。すなわち、労働者派遣法五八条の規定は、同条所定の有害業務に就かせる目的で労働者派遣をすることを禁止することにより、その業務の存立を困難ならしめるとともに、派遣労働者一般の保護を図ることを目的としたものと解される。労働者派遣法五八条の趣旨・目的が右のとおりであるから、同条にいう「公衆道徳上有害な業務」に該当するかどうかは、派遣労働者の従事する業務内容自体から判断すべきであって、派遣労働者の従事する業務から作り出された結果(本件においては、製作発表されたビデオ映画)によって判断すべきではないことは、いうまでもない。このことは、例えば、女子労働者の深夜労働禁止の規定に違反して女子労働者を使用した場合に、それにより社会的に何ら問題のない有用な製品が作られたとしても、そのことによって使用者について女子労働者深夜労働禁止違反の罪の成立が阻却されるものでないことを考えれば、明らかである。
 したがって、製作発表されたビデオテープ自体から公衆道徳上の有害性があるか否かを判断すべきであるとの弁護人の主張は、到底採用することができない。
2そこで、次に、本件における派遣労働者の従事する業務内容についてみると、派遣労働者である女優は、アダルトビデオ映画の出演女優として、あてがわれた男優を相手に、被写体として性交あるいは口淫等の性戯の場面を露骨に演じ、その場面が撮影されるのを業務内容とするものである。右のような業務は、社会共同生活において守られるべき性道徳を著しく害するものというべきであり、ひいては、派遣労働者一般の福祉を害することになるから、右業務が、「公衆道徳上有害な業務」にあたることに疑いの余地はない。そして、労働者派遣法五八条の規定は、前述のように、労働者一般を保護することを目的とするものであるから、右業務に就くことについて個々の派遣労働者の希望ないし承諾があったとしても、犯罪の成否に何ら影響がないというべきである。
 弁護人は、性交ないし性戯自体は人間の根源的な欲求に根ざすものであるから「有害」でないと主張するけれども、性交あるいは口淫等の性戯を、派遣労働者がその業務の内容として、男優相手に被写体として 、行う場合と、愛し合う者同士が人目のないところで行う場合とを同一に論じることができないことは、明らかであり、この点の弁護人の主張もまた採用することができない。
三 さらに、弁護人は、アダルトビデオ製作のために労働者を派遣する行為を処罰の対象とすることは、憲法二一条に違反する旨主張する。
 被告人人は、当公判廷において、アダルトビデオ映画に女優を派遣することによりアダルトビデオ映画という表現活動に参加するという意識はなかった旨供述しているところであり、憲法二一条違反の主張邊なし得る主張適格があるかどうか自体が疑問であるが、労働者派遣法五八条の規定は、前記のとおり、有害業務への労働者派遣を禁止することにより、その業務の存立を困難ならしめ、派遣労働者一般の保護を図ることを目的としたものであって、派遣労働者一般を保護するために必要な、合理的、且つやむを得ない規制であると認められるから、このことによって、表現活動に制約が加わったとしても、それはまさしく公共の福祉による制約であって、憲法二一条に違反するものではない。
 弁護人のこの点に関する主張も理由がない。
 四 弁護人は、被告人人及び同Bは、派遣労働者がアダルトビデオに出演し、性交あるいは性交類似行為を行うことは認識していたが、右業務が有害であるとの認識はなく、また「公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」も欠いていた旨を主張する。しかしながら、関係各証拠によれば、被告人A及び同Bは、各労働者を派遣するに当たり、判示のとおり、派遣を受けた会社がアダルトビデオ映画を製作するに際し、派遣労働者である女優をして男優を相手に性交ないし口淫等の性戯をさせることを知りながら、その演技をさせるために労働者を派遣していたと認められるから、被告人A及び同Bに公衆道徳上有害な業務に就かせる目的があったと認めるに十分である。弁護人の主張は、結局被告人A及び同Bは法律上の意味を理解していなかったというにすぎず、この点に関する弁護人の主張も理由がない。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160616/dms1606161550007-n1.htm
女性は2009年、当時社長だった容疑者と面接し、「グラビアモデルとして契約してもらう」と説明され、契約書にサインした。
 契約書には「成人向けの作品も出演する」と書かれており、AVの撮影現場に連れて行かれた女性が拒否すると契約書を盾に「違約金を払え」などと脅されて撮影を強行されたという。

 被害女性はその後、5年間で100本以上の作品に出演した。告発に踏み切ったきっかけは何だったのか。

 「AV出演の経緯を交際相手が知り、メーカーとプロダクションにクレームを入れた。さらに被害女性側は海外の動画サイトに配信された無修正動画を削除するよう求めていたが、プロダクション側はこれを拒否した。悪質な対応を繰り返していたことが警察への訴えにつながったようだ」(捜査関係者)
若い女性に芸能界デビューをちらつかせてAV業界に引きずり込むのは、「一部、悪徳スカウト業者の常套手段」(業界関係者)といい、半ば強制的に出演させられるケースは少なくない。

 事件によって業界の暗部が浮き彫りになった格好だが、あるプロダクション関係者は「出演作が100本を超える女性の訴えで警察が動いたのは過去に前例がない。この事件で、出演経験のある女性からの訴えが続出する可能性がある」と語る。

 AV出演強要の被害防止や被害者救済の活動を行う人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」(事務局長・伊藤和子弁護士)には、「70人以上の女性が相談に訪れ、その多くが警察に訴える構えをみせている」(捜査関係者)という。

 プロダクション関係者は「70人以上が一気に被害届を出せば、多くのメーカーやプロダクションに捜査のメスが入る。そうなると、AV業界全体が壊滅的な打撃を受ける」とも話す。

 ここ数年、業界の取り巻く環境は厳しく、現役AV監督の1人は「無料動画や海外の無修正動画に押されて業界の売り上げは年々落ち込み、女優が得られる報酬もどんどん下がっている」と明かす。

 業界関係者は「女優の報酬は、ピーク時の10分の1程度にまで下落しているが、それでも年間2000本程度が作られ、500人の女優が毎年デビューしている」。その中には望まない形でAV出演を了承した女性も含まれているとみられ、根は想像以上に深い。