傾向必要説の広島高裁岡山支部H22.12.15とか傾向不要説の東京高裁H26.2.13があって迷走中のようです。
不要説だと強要罪との区別が付かないと思います。
第2 本事例の概要
1 事案の概要
本事例は,被告人が,金品強取の目的で,被害女性宅へ侵入し,被害女性に対し,「おとなしくしろ。」などと言って,その腕や背部等にスタンガンを当てて放電した後,気絶のふりをした被害女性のズボンとパンツを引き下げて臀部を半分露出させて掌で1回たたき.更に被害者の上着の中に手を入れ.そのブラジャーのホックを外した(以下,上記下線部の行為を「本件行為」といいます。)という事案です。
2 被告人の供述内容
被告人は,外形的な事実関係は認めていましたが,本件行為を行った理由について,「お尻を触ったのは,被害女性が本当に気絶したかどうかを確かめるためだった。またズボンとパンツを下げ,ブラジャーのホックを外したのは,服を脱がせれば,被害女性が逃走できなくなると思ったからだ。」と述べて,本件行為に対する性的意図の存在を否認しました。
第3 原庁の処理等
原庁では,被告人の行為態様から,被告人に性的意図が認められると判断し被告人を住居侵入,強盗致傷.強制わいせつの包括ー罪で公判請求しました。
しかし判決は,「ズボン等を引き下げて臀部を触る.ブラジャーのホックを外すという行為自体は女性をして性的差恥心を抱かせる行為であり,被告人の性的意図を一定程度推認させるものである。」としつつも,本件行為をするに当たって,「被告人に性的意図があったと認めるには合理的な疑いが残る」として,強制わいせつ罪の成立を否定しました。
判決では,性的意図を否定した理由として.①本件行為は.強盗目的で被害女性宅に押し入った被告人に対し,もみ合うなどして激しく抵抗し. 気絶したふりをしてもいた被害者が,再度気絶した様子となったという状況下で行われたものであること,②ズボン等を引き下げた行為は,臀部を半分程度露出させたにとどまり,臀部を触った行為は.なでまわすなどしたものではなく, 1回掌でたたいたというものにとどまること.③ブラジャーのホックを外した行為についても,被害女性が気絶したふりをしていたのであるから,被告人としては,被害女性の着衣を更に脱がせたり,ブラジャーのホックを外した後に更にわいせつな行為をすることも容易だったと見られるにもかかわらず,そのような行為に出ていないこと,④本件行為態様や行為前の状況に照らすと,被告人が弁解するような目的で本件行為をすることも不自然とまではいえないことが挙げられていました。