児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「宮崎地裁:ビデオ原本提出命令…暴行被害者に配慮」の根拠条文

 刑訴法99条3項の提出命令と思われます。客体は「証拠物又は没収すべき物と思料するもの」です。
 コピーで立証十分だと思われますので、証拠物としての必要性は薄いと思われます。
 強姦と撮影行為は別個の行為ですので、性犯罪を記録したビデオを没収(刑法19条1項)のどの条項で没収できのかは疑問です。
 

刑訴法
第99条〔差押え・電気通信回線接続記録の複写・提出命令〕 
1 裁判所は、必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。
②差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
③裁判所は、差し押えるべき物を指定し、所有者、所持者又は保管者にその物の提出を命ずることができる。

刑法第19条(没収)
1 次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物
2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

条解刑事訴訟法
7) 提出命令の制度は,直ちに差押という直接強制によらなくても,目的を達しうることがあり,運用上,むしろその方が望ましいことから設けられたものである。
憲法35条の「押収」は差押を意味するから,提出命令については令状を要しない。
提出命令は決定であり,告知〈規制〉によって効力を生じ,告知を受けた者は,当該物件を裁判所に提出する義務を負う。しかし,提出命令に応じないときは,その物を取得するためには差押によるほかはない

http://mainichi.jp/select/news/20150905k0000m040100000c.html
 女性客らへの強姦(ごうかん)罪などに問われた宮崎市のマッサージ店経営の男(45)の弁護士が、告訴取り下げを条件に男が盗撮したビデオの処分を女性側に持ちかけた問題を巡り、宮崎地裁が被告側に、ビデオの原本4本を提出するよう命令を出したことが分かった。
 強姦罪で1件、強姦未遂罪で1件、強制わいせつ罪で3件が起訴されており、提出命令の対象は強姦未遂事件を除く4件に関するビデオ。命令は1日付。
 ビデオを巡っては、8月6日の公判で検察側が「(被告が原本を所持し続けることによる)被害者への精神的苦痛は明白。差し押さえを求める」とする異例の上申書を提出していた。弁護側は「(被告の)防御にとって最も重要な客観証拠」と主張して提出しない意向を示していた。