児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

確定判決を受けた事件より前に犯した事件の起訴(奈良地裁葛城支部H27.6.11)

 一回で処理すればいいのにと思いますね。
 確定判決は
  h26.1.6〜1.14 公然陳列(児童a)
  h26.4.18 青少年淫行罪(児童a)
  h26.4.23〜4.27 公然陳列罪(児童b)
で、h26.11.12判決(自然確定)

 今回の起訴は
  h25.7.30 青少年淫行+3項製造罪(児童c)
なので、45条後段の併合罪になって、50条で
  h25.7.30 青少年淫行+3項製造罪(児童c)
  h26.1.6~1.14 公然陳列(児童a)
  h26.4.18 青少年淫行罪(児童a)
  h26.4.23〜4.27 公然陳列罪(児童b)
が全部併合審理された場合の量刑を念頭に刑期を決めることになります。全部併合審理しても懲役2年6月〜3年で執行猶予だと思われますので、
  h25.7.30 青少年淫行+3項製造罪(児童c)
についても、有罪になる場合、懲役6月〜1年程度で執行猶予3〜4年の判決になると予想します。
 執行猶予判決の刑期は水増ししてあるので、余罪を無視して2年6月にしてしまうと、余罪に言い渡す刑がなくなることもありますね。そういう主張もあるかな。
 児童ポルノ罪の社会的法益を主張して、一事不再理が及んでいるとかいうのも面白いと思います。葛城支部だし。
 なお、奈良県青少年条例はh25に改正があったので要注意。

第45条(併合罪) 
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
第50条(余罪の処理)
併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する

条解刑法
p200
1 ) 本条の趣旨
本条は,併合罪中のいわゆる余罪(45条後段に定める禁銅以上の刑に処する確定裁判の確定前に犯した罪で,まだ確定裁判を経ていないもの)につき,執行の調整について定める次条とともに,その取扱いを定めるものである。
本条は,余罪について更に処断する場合における処断の基準については定めていない。この点,実務上,余罪については,それのみを裁判する場合と同じように量刑するのではなく,同時に全部の罪を裁判した場合における量刑を念頭に置いて刑を定めているのが通例である。

p56
10)余罪と執行猶予
執行を猶予された罪の余罪の場合本条1項l号の要件を文字どおりに解釈すると,ある罪について執行猶予を言い渡す有罪判決が
確定した後にその確定前に犯した罪について刑を言い渡すべき場合でも執行猶予を言い渡すことはできないように思われる。しかし判例は,もしこれらが同時に審判されていたら一括して本条I項により刑の執行を猶予することができたのであるから,それとの権衡上,本条1項l号の欠格事由がないものとして更にその刑の執行を猶予することができるとする(最大判昭28・6・10集76~1404)。判例はこの考え方を更に進め,同時審判を受ける可能性がなかった余罪,すなわち,前の裁判の言渡し後確定前に犯した罪も同様に解している(最大判昭32・2・6集112 503)。したがって,ここでいう余罪とは,前の裁判確定時を基準としてそれ以前に犯した罪をいい,この場合の執行猶予は本条2項ではなく1項によって言い渡すべきことになる(最大判昭31・5・30集105 760)。この場合に前の刑と余罪の刑とが合算して3年以下であることを要するかという問題があるが,消極に解すべきであろう(大阪高判昭42・10・6高集20-56230 なお,本条注15参照)。

葛城市議の県青少年健全育成条例違反:前市議「起訴相当」 児童ポルノ製造で−−検察審査会 /奈良
2015.01.24 毎日新聞
 女子高生とのみだらな行為を撮影した動画をインターネットに投稿したなどとして、児童買春・ポルノ禁止法違反などの罪に問われた懲役2年6月、執行猶予4年の判決が確定=について、葛城検察審査会は別の少女への同法違反事件を不起訴とした奈良地検葛城支部の処分に対し、「起訴相当」と議決した。昨年12月18日付。
 議決書によると、容疑は2013年7月30日、少女が18歳未満と知りながら、神戸市内のホテルでみだらな行為を撮影するなどし、児童ポルノを製造したとされる。県警が昨年7月に追送検したが、同支部が不起訴処分を決定。少女側が不服として審査を申し立てていた。
 検審は動画について「少女の承諾のうえ撮影しているとはいえない」と指摘。また「撮影目的が自己使用と断定できる十分な証拠がない」として、起訴相当と結論づけた。
 地検の坂本順彦次席は「上級庁と協議し、適正に再捜査のうえ処理したい」と述べた。

葛城市議の県青少年健全育成条例違反:吉武元市議、地検支部が起訴 児童ポルノ製造な
ど /奈良2015.04.11 毎日新聞
 奈良地検葛城支部は10日、=懲役2年6月、執行猶予
 4年の判決が確定=を児童買春・ポルノ禁止法違反で在宅起訴した。同支部は認否を明らかにしていない。
 起訴状によると、吉武被告は神戸市内のホテルで13年7月、18歳未満と知りながら少女とのみだらな行為を撮影するなどし、児童ポルノを製造したとされる。事件を巡っては、同支部の不起訴処分を不服として少女側が審査を申し立て、昨年12月に葛城検察審査会が「起訴相当」と議決していた。

奈良地方裁判所葛城支部
平成26年11月12日判決
被告人を懲役2年6か月に処する。
この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
犯罪事実
平成26年1月6日から同月14日までの間,前後2回にわたり,奈良県C市(省略)において,同所に設置されたパーソナルコンピュータから,児童であるDを相手方とする性交又は同人による性交類似行為に係る同人の姿態等を視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録であり,かつ,男女の性器又は性交場面等を露骨に撮影したわいせつな電磁的記録である(省略)と題する各動画データを,「a,Inc.」がアメリカ合衆国カリフォルニア州内に設置して管理運営するaコンテンツマーケットのサーバコンピュータにそれぞれ送信して記憶・蔵置させ,不特定多数のインターネット利用者に対し,前記動画データ2点の閲覧が可能な各状況を設定し,もって児童ポルノであるわいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列した
第2 前記Dが18歳に満たない青少年であることを知りながら,同年4月18日午後0時頃から同日午後4時30分頃までの間,奈良県E市の当時の被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的でDと性
交し,もって青少年に対してみだらな性行為をした
(以上,平成26年7月9日付け起訴状記載の各公訴事実に対応)
第3 同年4月23日から同月27日までの間,前後2回にわたり,奈良県C市(省略)において,同所に設置されたパーソナルコンピュータから,児童であるFを相手方とする性交に係る同人の姿態等を視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録であり,かつ,男女の性器又は性交場面等を露骨に撮影したわいせつな電磁的記録である(省略)と題する各動画データを,「a,Inc.」がアメリカ合衆国カリフォルニア州内に設置して管理運営するaコンテンツマーケットのサーバコンピュータにそれぞれ送信して記憶・蔵置させ,不特定多数のインターネット利用者に対し,前記動画データ2点の閲覧が可能な各状況を設定し,もって児童ポルノであるわいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列した

追記
 懲役6月執行猶予4年でした。

http://www.sankei.com/west/news/150612/wst1506120024-n1.html
 少女が18歳未満と知りながらホテルでわいせつな行為をして動画撮影するなどしたとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反罪に問われた被告(28)=懲役2年6月、執行猶予4年の判決が確定=の判決公判が11日、奈良地裁葛城支部であった。五十嵐常之裁判官は「悪質な犯行で、刑事責任は相当重い」として、懲役6月、執行猶予4年(求刑懲役6月)を言い渡した。
 五十嵐裁判官は判決理由で「学習塾の開業や高級車などで多額の負債を抱え、わいせつな動画の公開で利益を得ていた」と指摘。一方、一連の事件では有罪判決が確定し、母親が監督を誓約していることなどから、刑の執行を猶予した。
 判決によると被告は平成25年7月30日、神戸市内のホテルで18歳未満の少女とわいせつな行為をしたうえスマートフォンで動画撮影し、データをパソコンで複製して児童ポルノを製造したとしている。

 この事件をめぐっては奈良地検葛城支部が不起訴処分としたが、葛城検察審査会が昨年12月に「起訴相当」と議決し、4月に在宅起訴されていた。

奈良地方裁判所葛城支部
平成27年6月11日判決

       判   決


 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官P出席の上審理し,次のとおり判決する。


       主   文

被告人を懲役6月に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。


       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,Cが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成25年7月30日午後3時頃から同月31日午後0時頃までの間,兵庫県D市(省略)において,上記児童が被告人の陰茎を口淫している場面及び同児童と性交している場面を所携のスマートフォンで動画撮影し、その動画データを同スマートフォン本体に内蔵の記憶装置又は同本体に挿入された記録媒体であるSDカードに記録して保存した上,同年8月1日頃,奈良県E市(省略)において,上記動画データを上記スマートフォンを介してパーソナルコンピュータに内蔵のハードディスクに複製して記録して保存し,もって児童による性交類似行為及び児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法で電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)
 省略
(確定裁判)
 被告人は,平成26年11月12日,奈良地方裁判所葛城支部で児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列,奈良県青少年の健全育成に関する条例違反(昭和51年奈良県条例第13号)の各罪により懲役2年6月に処せられ,4年間その刑の執行を猶予され,この判決は同月27日確定したものであり,以上の事実は,(証拠略)によって認める。 
(法令の適用)
罰条 平成26年法律第79号附則2条により同法による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,1項前段,2条3項1号
刑種の選択 懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条後段,50条(確定裁判を経ていない判示の罪について更に処断)
刑の執行猶予 同法25条1項
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 被告人は,判示のとおり,18歳に満たない被害児童の浅慮や自らへの好意に乗じて,被害児童による性交類似行為及び被害児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を動画撮影するなどして児童ポルノを製造したものであり,児童を性欲の対象とする乱れた性風俗を助長し,被害児童の心身に有害な影響を及ぼしたものであって,本件は,強い非難が妥当する悪質な態様の犯行といえる。
 被害児童は,本件犯行によって,その性的羞恥心を著しく害されたのであり,その受けた精神的苦痛は極めて大きいものがある上,被害児童の今後の心身両面における成育や将来の社会生活に及ぼす悪影響も強く懸念されるところである。
 被告人は,自ら経営する学習塾の開業資金や高級車を保有していたことなどから多額の負債をかかえ,女性との性交場面等の動画データをインターネット上で公開して経済的利益を得るという生活を送る中で,自己の性欲を満足させる目的等から本件犯行に及んだものであって,このような経緯や動機に酌量の余地はない。
 さらに,本件犯行はその性質上模倣性が高いことなどに照らすと,この種事案に対しては,一般予防の見地からも厳しく臨む必要がある。また,被告人の当時の社会的地位等に照らして本件犯行等の行状を考えると,特別予防の観点も軽視することはできない。
 以上からすれば,本件犯行の悪質性は強く,被告人の刑事責任は相当に重い。
 他方において,被告人が本件犯行と一連の犯行である前記確定裁判に係る罪についてすでに前記の刑に処せられていること,被告人が,本件犯行を認めて反省の態度を示していること,母親が情状証人として出廷し,被告人の監督を誓約していることなど,被告人のために酌むべき事情が存在する。
 当裁判所は,以上を総合して,被告人に対しては,懲役刑を選択の上,確定裁判を経ていない判示の罪について更に処断することとし,主文のとおり量刑の上,その刑の執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えることとする。
 よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役6月)
平成27年6月11日
奈良地方裁判所葛城支部
裁判官 五十嵐常之