児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律の要点

 長野県警に代わって広報しよう。

http://www.pref.nagano.lg.jp/police/koukai/jouhou/seian/documents/tt_gazohigaiboushi.pdf
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律の要点
2 法の要点
(1) 定義(第2条関係)
ア 私事性的画像記録法において、「私事性的画像記録」とは、
? 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
? 他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
? 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもののいずれかを撮影した画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し、又は撮影したものを除く。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)その他の記録をいうとされた。
「撮影対象者において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し、又は撮影したものを除く。」とされたのは、第三者に公開することを前提として、撮影に応じたものや自ら撮影したものについては、これが第三者に提供等されたとしても、性的名誉及び性的プライバシーの侵害があったとは評価できないことから、こうしたものを除く趣旨である。
これにより、例えば、誰にも見せない約束で撮影を許可した画像、交際相手だけに見せるつもりで自ら撮影した画像、交際相手に隠し撮りされた画像、第三者による盗撮画像等であって?から?のいずれかの姿態が撮影されたものは、私事性的画像記録に該当し、法の保護対象となり得るが、アダルトビデオ、グラビア写真等、商業目的で作成された画像や第三者に見られることを認識して撮影を許可した画像、自ら撮影した画像等は、保護対象とはならないと考えられる。
なお、?から?は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項の「児童ポルノ」の定義を参考としているが、18歳未満を対象とするとの年齢要件は設けられていない。
イ 私事性的画像記録物法において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、アの?から?までのいずれかに掲げる人の姿態を撮影した画像を記録したものをいうとされた。
例えば、例示されている写真のほか、CD−ROM、USBメモリ等の電子データを記録した有体物がこれに該当すると考えられる。
また、「その他の物」とは、例示されている写真に類する様々な物をいい、例えばアナログ方式のビデオテープ等が考えられる。
(2) 罰則(第3条関係)ア 公表罪(ア)私事性的画像記録の公表罪第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することとされた。
(イ)私事性的画像記録物の公表罪(ア)の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、(ア)と同様とすることとされた。
「第三者」とは、撮影対象者、撮影者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者をいう。
また、「撮影対象者を特定することができる方法で」とは、画像自体から特定可能な場合のほか、添えられた文言、掲載した場所等の画像以外の部分から特定可能な場合を含むと考えられる。
イ 公表目的提供罪アの(ア)又は(イ)の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処することとされた。
公表目的での提供行為は、公表の前段階の行為であるが、公表させる目的で提供した場合には、提供を受けた者による公表行為が行われ、撮影対象者に重大かつ回復困難な被害が生ずる可能性が高いことなどから、処罰対象とされているものと考えられる。
親告罪ア及びイの罪は、公訴が提起された場合には改めて被害者の性的プライバシーを害するおそれがあることから、告訴がなければ公訴を提起することができないこととされた。
エ 国民の国外犯ア及びイの罪は、児童ポルノの提供等の罪及び名誉毀損罪と同様に、国民の国外犯を処罰することとした。
(3) プロバイダ責任制限法の特例(第4条関係)私事性的画像記録がインターネットを利用して提供されると、その拡散は早く、被害者が受ける損害は重大かつ回復困難であり、削除の緊急性が高いという被害の実態に鑑み、プロバイダ等が私事性的画像記録について送信防止措置を講じた場合における発信者に生じた損害についての新たな免責事由が追加された。
すなわち、本特例は、プロバイダ等が、特定電気通信による情報の流通によって自己の名誉又は私生活の平穏を侵害されたとする者から送信防止措置を講ずるよう申出を受けて、送信防止措置に同意するか否かを発信者に照会し、当該照会を受けた日から2日を経過しても、発信者から同意しない旨の申出がない場合、必要な限度において当該情報の送信防止措置を講じても、当該プロバイダ等は損害賠償責任を問われないものとされた。
また、送信防止措置の申出主体としては、撮影対象者本人に加え、撮影対象者が死亡した場合には一定範囲の遺族(その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)が申し出ることも認められている。
(4) 支援体制の整備等(第5条関係)国及び地方公共団体は、私事性的画像記録の提供等による被害者の適切かつ迅速な保護及びその負担の軽減に資するよう、被害者が当該犯罪事実の届出を行いやすくするために必要な捜査機関における体制充実、私事性的画像侵害情報送信防止措置の申出先等に係る広報活動等の充実、被害者に関する各般の問題について一元的にその相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他必要な措置を講ずるものとされた。
「一元的にその相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」とは、必ずしも、現存する複数の機関の相談窓口を一つの機関に集約するという趣旨ではなく、被害者がいずれの窓口にアクセスしたとしても、最も適切な関係機関からの援助を受けられるよう、相談を受け付けた機関が、相談者を相談内容に応じて最も適切な関係機関等に確実に引き継ぐことを期待するものと考えられる。
(5) 被害の発生を未然に防止するための教育及び啓発(第6条関係)国及び地方公共団体は、私事性的画像記録及び私事性的画像記録物(以下「私事性的画像記録等」という。
)が拡散した場合にはその被害の回復を図ることが著しく困難となることに鑑み、学校を始め、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、自己に係る私事性的画像記録等に係る姿態の撮影をさせないこと、自ら記録した自己に係る私事性的画像記録等を他人に提供しないこと、これらの撮影、提供等の要求をしないことなど、私事性的画像記録の提供等による被害の発生を未然に防止するために必要な事項に関する国民の十分な理解と関心を深めるために必要な教育活動及び啓発活動の充実を図ることとされた。
(6) 附則ア 施行期日法は、公布の日から施行することとされた。
ただし、第3条の規定は公布の日から起算して20日を経過した日(平成26年12月17日)から、第4条の規定は公布の日から起算して1月を経過した日(平成26年12月27日)から施行することとされた。
イ 被害回復及び処罰の確保に資する国際協力の在り方等に関する検討政府は、インターネットを利用した私事性的画像記録の提供等に係る被害回復及び処罰の確保に資するため、法の施行後2年以内に、外国のサーバーを経由するなどした私事性的画像記録の提供に関する行為者の把握及び証拠の保全等を迅速に行うための国際協力の在り方について検討するとともに、関係事業者における通信履歴等の保存の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされた。