児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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佐久間修「不作為の幇助と中立的行為」警察学論集第67巻第11号

佐久間修「不作為の幇助と中立的行為」警察学論集第67巻第11号

かようにして、因果論的見地からは、中立的行為の処罰範囲を明らかにできないため、犯人の主観面から絞り込もうとする見解がある。例えば、犯人に確定的故意がある場合に限るなど、故意の認定を厳格化するものがある)。
なるほど、後述するウイニ一事件では、主観的要素による処罰範囲の限定が問題になった。しかし、当該常助者には、犯罪に利用される旨の未必的な認識があったにもかかわらず、価値中立的技術であることをもって、正犯事実について蓋然性の認識まで要求するべきであろうか。そもそも、内心の事情だけで処罰範囲を左右するのは、主観主義に陥るおそれがある。また、中立的行為についてのみ、現行法の規定を超えた特別な故意を要求するのは疑問である。
なるほど、客観的にみてウイニーの提供が中立的行為でないというならば、最高裁決定のように、被告人の主観的態度に着目して幇助犯の成否を検討することになる。その際、例外的でない頻度で著作権侵害(正犯)に利用されている状況下では、その事実を知りつつ提供を継続した場合、当該犯人には幇助が認められるであろう37)。
他方、犯人の主観的認識に依存するのを避けて、帯助行為の客観的危険性で絞り込むとしても、控訴審判決のように、積極的に違法利用を勧めた場合に限定するのは行き過ぎである。そのほか、当該行為が結果惹起の危険を高めたとか、許されない危険の創出にあたるなどの説明は、いずれも結論を言い換えたに等しく、十分に説得力のある根拠ではない38)

37)むしろ、ウイニーのように、匿名化機能のあるファイル交換ソフトは、違法目的で利用されるのが大半であり、しかも、摘発を免れるために匿名化機能を強化したならば、もはや(価値)中立的でないという指摘がある。また、高橋則夫・刑法総論(第2版・平25)473頁は、「著作権法違反の正犯行為に適合するように、特別に自己の行為を形成したといえるから、幇助犯の成立を肯定することができ」るとされる。なお、佐久間修Winny事件における共犯論と著作権侵害」NBL979号(平24) 30頁以下参照。

38)そのほか、「職業規範の保護目的」とか「法的に否認された危険創出」などの指標も、自らが選択した結論を先取りするものにすぎない。また、「日常生活上許容される」という説明は、「何が許されるか」の同義反復に陥っている。むしろ、日常的取引として向種の行為を反覆・継続した点に着目するならば、営業犯や常習犯として加重処罰になることも考えられる。結局、中立的行為が「日常的」であることは、「通常の社会生活で許容されること」を意味するにとどまり、それ自体として、何らかの実質的根拠を提供するわけではない。